JTTA2006学術大会の報告を以下に掲載しました。

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 JTTA2006 in TAKASAKI 日本遠隔医療学会学術大会 (大会長 酒巻哲夫)

 2006年9月22日(金)-23日(土)群馬県高崎市 で開催されます。

  特別企画 市民公開講座・市民シンポジウム

  『宇宙からみた地球の健康』 講師:向井千秋氏(JAXA宇宙飛行士)

  『笑いと健康』講師:桂前治師匠(中島英雄中央群馬脳神経外科理事長)

 

賛助会員(受付順に掲載)

遠隔医療支援システムのViewSend株式会社
医用画像取得と素早い画像表示が可能なDICOM3.0準拠の高機能画像ビューワと通信機能やレポート作成機能を実装することで、リアルタイムカンファレ ンスによる読影診断が可能な「遠隔医療支援システム」を提供します。

ディーリンクジャパン株式会社
ディーリンクジャパン(株)は、D-LINKとして世界中で得た高い評価、実績をもとにネットワーク製品の販売を行っております。医療の現場では、IPカ メラや無線LANそしてEHRのインフラ基幹としてご利用いただけます。

立体HD遠隔医療支援システム(株式会社フローベル)
離れたところの診断や手術の状況を、映像で見て助言や診断を行う「遠隔医療」では、高解像度とステレオ立体化により、眼科や脳外科など、情報をより多く必 要とする、分野のニーズに応えます。

ファイバーテック株式会社
当社は極細径内視鏡を通して、人に優しい医療の実現に邁進してきました。医療機器分野で培った知識と経験を元に、遠隔医療分野におきましても皆様のお役に 立てるデバイスとシステムをこれからご提供してまいります。

 


JTTA in Takasaki2006印象記

2006年11月13日 日本遠隔医 療学会 広報委員会

 JTTA in Takasaki2006(Japanese Telemedicine and Telecare Association;日本遠隔医療学会学術大会)が9月22日と23日の両日、群馬県高崎市の高崎健康福祉大学で行われた。今回の大会で、香川県高松 市で昨年生まれたJTTAが着実な発展を示し、遠隔医療研究に新しいコンセプトが根付いてきたことを強く感じた。いうなれば『テクノロジー・フォーカスか らコミュニケーション・フォーカス、マネジメント・フォーカスへ』である。村瀬澄夫遠隔医療学会会長(信州大学医学部教授)は『これまでの遠隔医療研究 は、テクノロジー中心であったが、これからはサービス創造やビジネスモデルも重要視していく』という。学会の活動として、遠隔医療というシステムを真に社 会に資するものにするには、技術系・人間系・制度系を含めどのようにつくっていくべきかの議論が重要であり、規制緩和や制度づくりも含め学会として発言し ていくということである。

 このような認識から遠隔医療学会が行った事業にテレメンタリング研修会がある。すでに生活習慣病指導のためのテレメ ンタリング研修会も3回開催され、いずれも盛況であった。これまでの日本の医療のパターナリズムから脱却し、患者の自己決定権が発揮できるためのノウハウ を海外からも学び、日本の社会状況に合わせて改良し、これを伝えていく事業として注目されている。実際に生活習慣病予防のテレケアへの期待はこれまでにな く高まっており、厚生労働省の矢島鉄也生活習慣病対策室長も特別講演でこのことに触れ、一般演題も数多くあった。さらに本大会での重要な動きと一つして学 会から遠隔医療の定義、『通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為』が発表されたことがある。これまで遠隔医療というと離島や無医村などにお ける医療行為など、日常の医療の現場から、かけ離れた環境で利用されるものとの印象が強かった。しかし今回の定義は、郵便を使うような遠隔診断から、最新 のIT技術を活用した技術に至るまで幅広いものを含むものとなった。今後、医療のIT化が進んだ暁には、日常の生活の場と医療の現場とが遠隔医療によって 結ばれ、もっと医療が身近なものになるかもしれない。

 一般演題に目を向けると、昭和大学の田中絵里子氏の『商業ベースの遠隔画像診断の読影レポート』は遠隔医療サービス 改善の効果についての発表であった。このように遠隔医療サービスそのもの改善という現場サイドの地道な努力が、その社会的な評価を上げると考えられる。コ ミュニケーションにフォーカスした演題としては、早稲田大学国際情通信研究センターの大島眞理子氏の『高齢者の在宅介護負担を軽減したUケアノート』があ り、介護現場で孤独になりがちな介護人も含めて、介護にかかわるすべての職種が情報システムでつながれる効果についての発表があった。また、最近の深刻な 社会問題である産科、離島診療および病理の医師不足を補う試みとしては、香川大学の原量宏氏の『周産期電子カルテネットワーク連携プロジェクト』や琉球大 学の久木田一朗氏による『トライアスロン大会で用いた遠隔医療』、市民公開シンポジウムでの群馬大学の神谷誠氏による『がん診断の実態と遠隔病理』などが タイムリーな話題といえる。

 健康増進という社会的ニーズへの遠隔医療の挑戦として、イセット株式会社 林 美佳氏の『在宅健康管理システム利用 による降圧効果』および同社の岩木博美氏の『在宅健康管理システムの有用性』がある。これまでの疫学研究では困難であった、集団健診データと在宅健康管理 システムで収集された個人のデータを組み合わせることで、在宅健康管理システムの医学的な効果を証明しようとした研究であり、集団から個へという健診の流 れの変化を予感させる研究である。また、健康セルフチェック・テクノロジー分科会では、これまで省みられなかった自覚症状を健診データと付き合わせ、これ を生活習慣改善へつなげるという野心的な試みを、国際医療福祉大学の長谷川高志氏が中心となり熱心に討議した。

 遠隔医療による日本の国際貢献をテーマにした発表としては、旭川医科大学の吉田晃敏氏による『アジア・ブロードバン ドネットワークを活用した眼科遠隔医療』や東海大学の石橋雄一氏による『テレコンサルテーションシステムの開発』などがあった。どちらも途上国の医療技術 のレベルアップを目的としている。このように国境を越える医療技術に加えて、地球を越えて宇宙空間に医療技術を応用し、これを医療技術の発展に結びつける という、宇宙航空研究開発機構の大島博氏の『宇宙飛行士の健康管理に必要な軌道上の遠隔医療』ならびに信州大学の坂田信裕氏の『宇宙飛行士のための遠隔健 康管理用機器の検討』という発表があった。今大会の目玉である、市民公開講座での向井千秋氏の講演でも『これから宇宙旅行が大衆化して、日本の遠隔医療技 術が活躍する時代になる』と述べていたことが印象的であった。

大会委員長の酒巻哲夫氏(群馬大学医学部教授)の『市民の遠隔健康教室』では、汎用技術である SKYPEを用いて市民健康サロンと中継し、双方向のコミュニケーションをデモンストレーションした。

 持続するビジネスモデルに関連する研究として、高崎健康福祉大学の菅野渉平氏から『e-Nutrition systemを用いた健康増進指導実情と課題』があり、日本の医療の中で軽視されてきた栄養学を、個人の血液データ解析することでレベルアップしようとす るものであり、このコンセプトのドライブフォースにビジネス的視点を組み入れた新しい動きであると感じられた。また兵庫県立大学の辻正次氏『在宅健康管理 システムによる高齢者医療費の節減効果』も遠隔医療の価値を社会科学的な視点から解明しようとする研究であり、遠隔医療が公的なシステムである医療保険を 使って発展するためには重要なテーマである。

 これらの運用技術的なテーマを下支えする技術的な発表も多数なされている。大阪大学の鵜飼勲氏による『高速IPハン ドオーバー技術を応用したモバイルテレメディシン実験』はメディカルコントロール下の救命士からの正確な情報の伝達方法について、移動体通信を用いた研究 の発表である。今後は汎用性の高いシステムによる低コストで利便性の高いシステム開発が必要であろう。信州大学の滝沢正臣『家庭から専門施設までの遠隔医 療システムに関する研究』はハイビジョン画像を用い、携帯電話回線を束ねた伝送実験についての報告である。ここでの課題は、使い手がシステムのパーフォー マンスを意識しないでも使える透過的技術の開発であり、同様の課題は第三世代携帯TV電話システム、高速無線ランおよび双方向画像伝送の試みについてもい えることだと感じた。また、大会委員長の酒巻哲夫氏(群馬大学医学部教授)の『市民の遠隔健康教室』では、汎用技術であるSkypeを用いたプレゼンテー ションがなされた。今後在宅医療など分野でも、このようなコストを抑えたシステムを用いて収益性の高いビジネスモデルを築きあげることが遠隔医療普及の キーだろうと考えられる。

 総括すると、遠隔医療の普及には学際的な研究や実施体制を組むことが重要であり、この学会が医学研究者だけではな く、社会学者、経営学者、心理学者などの幅の広い分野の学術関係者と保健・医療・福祉現場を支える人々の交流の場となって発展していくことが、その目的に 適うものと思われた。次回は2007年10月19日(金)-20日(土)(大会長 公文裕巳)に岡山市での大会が予定されており、多彩な職種が加わりさら なる発展をすることを期待する。


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