The 25th Annual Meeting of Japan Hormonal Steroid Society


ご挨拶

 この度、第25回日本ステロイドホルモン学会学術集会を担当させていただくことになりました。1985年のステロイドホルモン受容体遺伝子のcDNAクローニングを契機にステロイドホルモンの作用機構の理解は大きく進展しました。しかし、その一方で、グルココルチコイドの副作用など未解決の課題も多く、がん、生活習慣病や再生医学領域におけるステロイドホルモンの重要性が明らかになるなど、今もなおステロイドホルモン研究の進歩が望まれております。まさに、領域横断的なサイエンス −分子生物学のみならずビッグデータ処理などの先端科学技術を駆使して生体システムをその相互連関から統合的に理解すること− が必要とされているように感じます。
 今回、特別講演として、私の恩師である東京医科大学特任教授、東京工業大学名誉教授 半田宏先生をお招きし、独自の研究手法によって半世紀の間謎であったサリドマイドの催奇形性の責任分子としてセレブロンを同定し、膨大な研究によって催奇形性と多発性骨髄腫などに対する薬理作用の分離を可能としたプロセスをご講演いただきます。ランチョンセミナーとして、東邦大学 川合先生による「炎症・疼痛のマネジメントとステロイド」、近畿大学 宗圓先生による「ステロイド性骨粗鬆症の病態と治療」の2題を企画しました。教育講演では、慶應義塾大学 税所先生に「ステロイドと糖尿病:最新の知見をふまえて」、そして、東邦大学 亀田先生に「免疫疾患における生物学的製剤とステロイドの位置づけ」、に関してお話いただきます。いずれも日々の臨床に直結したお話しです。また、ステロイドホルモン研究の最新の展開を知るとともに領域横断的な発展を期待し、8題の会長企画State-of-Art Lectureを企画しました。千葉大学 植松先生「腸管における粘膜免疫と腸内微生物叢の解析」、慶應義塾大学 金井先生「炎症性腸疾患に関する最近の話題 − ステロイド療法は生き残るか」、慶應義塾大学 長谷川先生「小児科領域における最近のステロイドホルモン研究のトピックス」、熊本大学 中尾先生「ステロイドホルモンとエピゲノム記憶」、千葉大学 生水先生「胎盤とステロイドホルモン —解っていないこと」、慶應義塾大学 佐野先生「心不全の病態別にみた核内受容体グルココルチコイド受容体 (Glucocorticoid Receptor: GR), 肝臓X受容体 (Liver X Receptor: LXR)の重要性」、愛媛大学 今井先生「性ステロイドホルモンによる骨代謝制御」、そして東京都健康長寿医療センター 井上先生「前立腺癌とアンドロゲン:がん増殖と悪性化におけるシグナルネットワーク」と、いずれも会員諸氏のサイエンスあるいはクリニカルマインドを大いに刺激するお話しかと思います。今回も一般演題の中から数題を優秀演題候補セッションでご発表いただき、優れた演題には優秀演題賞を授与します。若手研究者の積極的なチャレンジを期待しています。
 学会は11月18日の1日ではございますが、専門領域の垣根を超えたステロイドホルモン研究の拡がりと進歩を楽しんでいただけるのではないかと思います。多くの方々のご参加をお待ちしております。


第25回日本ステロイドホルモン
学会学術集会 会長
田中 廣壽
(東京大学医科学研究所附属病院
  抗体・ワクチンセンター 免疫病治療学分野
  アレルギー免疫科)