このたび、学会長として第6回日本臨床高気圧酸素・潜水医学会学術総会を担当することになりました。本学術総会は、平成21年6月19日(金)、20日(土)の両日、国際文化会館(東京、六本木)にて開催する運びとなり、現在鋭意準備を進めているところであります。今回はメインテーマを「探る!(Research & Investigation)」とし、高気圧酸素・潜水領域における基礎的メカニズムの解析、潜水の安全性や適応に関する問題、高気圧酸素治療の問題点と臨床適応、本領域における臨床工学技士の役割などを徹底的に探ることを趣旨とした学術集会にしたいと考えております。
本学会は、救急災害医学や日常の臨床の場において、高気圧酸素治療を取り入れて診療に当たっておられる医師、臨床工学技士、看護師の方々をはじめ、技術発展や機器開発に関係しておられる多くの方々の情報交換・議論の場であります。また、潜水医学の諸問題について、専門家の方々とともに問題解決をしてゆく場でもあります。広い分野の方々からご意見を頂戴し、情報発信の場として活気ある学術集会にしたいと考えております。
本学会の企画と致しまして、2つのワークショップと2つのパネルディスカッションを予定しています。ワークショップでは、「臨床工学技士の役割」(仮題)について多角的な見地から問題提示を行い、臨床における問題点を如何に解決してゆけるかを討論します。また、「潜水の適応について」(仮題)と題して、近年レクリエーショナルダイビングで複雑さが指摘されているテクニカルダイビングの問題や特殊潜水としての飽和潜水などシステム潜水を紹介し、それらに対する生体の適応・傷害予防、治療の観点から議論を進めてゆきます。一方、パネルディスカッションでは、「潜水・高圧領域の基礎研究」(仮題)として、潜水が生体に及ぼす影響や高気圧酸素の生理学的作用、再生医学への高気圧酸素利用などについて議論したいと考えています。また、「臨床における問題点と適応」(仮題)については、古くて新しい議論として高気圧酸素治療の適応疾患の選別や治療開始・終了の時期判定、効果判定について多くの意見を頂きたいと考えています。
特別講演は福井大学医学部小児科・塚原宏一先生に、「窒素(N)と酸素(O)の化学・生物学」(仮題)と題して、NO吸入療法、硫化水素中毒の解毒策としてのNO吸入の生化学、NO、O2が血管機能の維持、傷害に作用すること、生体マーカーとしての酸化ストレスマーカー、ニトロ化ストレスマーカーの現況と展開についてお話いただく予定です。また、ランチョンセミナーとして、防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門・齋藤大蔵先生に、「自衛隊と災害・救急医療」(仮題)と題して、災害・救急医療に関するup-to-dateな情報や自衛隊の役割などをご紹介いただく予定です。
本学会は、学術活動を通して高気圧酸素治療の安全で適切な方向性を確立してゆこうとしています。また、潜水医学に関する数少ない専門家集団として、多様性に富む潜水の諸問題の解決に当たってゆこうとしています。さらには、学術団体として基礎的研究の促進、研究者の育成、高気圧酸素の新たな適応の場を探る責務も負っているものと考えています。本学術会議の成否のみならず、今後の本学会の発展は、参加される皆様方の、学問への興味、飽くなき探究心、そして何よりも熱意にかかっていることは言うまでもありません。ここに、あらためて皆様方のご支援並びにご協力をお願いする次第です。
終わりになりましたが、学会員のみならず本領域に興味をお持ちの多数の方々の参加をお待ちしております。
第6回日本臨床高気圧酸素・潜水医学会 学術総会会長
四ノ宮成祥
防衛医科大学校 分子生体制御学講座 教授