わが国における犬の狂犬病の流行と防疫の歴史 3 |
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ヨーロッパにおける流行と狂犬病学の進歩 |
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日本における江戸期から明治期にかけての狂犬病の発生と対比して、
海外における本病の動きに目を転じて見ると、 17世紀から19世紀にわたって世界各地で猛威を振っており、
その一部がわが国に侵入したものと推測される。 20世紀に入ってからもヨーロッパ大陸では続発しており、
ドイツ・フランス・ロシアを中心に大量の発生が記録され、 野生動物間での伝播が連鎖的に拡大する温床となったといえよう。
1804年に Zinke は、 病毒が狂犬の唾液により感染することを確認した (18) 。
1826年デュバウーは病毒は中枢神経系に保有され、 咬傷を受けた個所から神経系に依り誘導されると説明している。
(18) |
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1884年に Pasteur は、 狂犬病ワクチンの動物試験に成功した。 翌1885年には9歳の子供Joseph
Meister が狂犬病の犬に噛まれ、 人類史上初めて狂犬病ワクチンの接種を受けたこと(4)
は有名な話である。 |
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1903年に Negri が狂犬病動物の神経細胞内に狂犬病罹患体に特異的に出現するネグリ小体を発見し、
診断技術の確定に寄与した (4) 。 |
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表2 江戸時代における狂犬病発生に関する海外と日本の年代比較 |
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年 号 |
海 外 |
日 本 |
1604(慶長9年) |
パリ(4 18) |
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1708 |
イタリア(4) |
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1719〜1724 |
フランス・ドイツ(4 18) |
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1721〜1728 |
ハンガリー(4) |
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1732 |
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長崎・中国地方(3 6) |
1734 |
イギリス(4) |
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1736 |
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江戸(7)・「狂犬咬傷治方刊行」(8) |
1741 |
西インド諸島(4) |
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1742 |
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山形酒田(11) |
1756 |
ロンドン(4) |
「狂犬咬傷治方再刊」(8) |
1761 |
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下北半島(14) |
1765 |
英国全土(4) |
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1770〜1771 |
アメリカ合衆国(4) |
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1783 |
西インド諸島(4 18) |
「●狗傷考発刊」(16) |
1785〜1789 |
ヨーロッパ全土(4) |
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1797 |
北アメリカ(18) |
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〜1870(明治3年) |
ヨーロッパ全土 野狐に蔓延(4 18) |
東京府下(4 18) |
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