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第1回デジタル医用画像の「色」シンポジウム

パネルディスカッション 第2部:医療の最前線におけるデジタル画像の活用とその色処理

看護・介護の現場から 〜今後の看護情報提供のあり方〜

宇都 由美子
鹿児島大学医学部附属病院医療情報部

The 1st Symposium of the 'Color' of Digital Imaging in Medicine

Panel Discussion Part 2 :
Digital Imaging and Its Color Management in the Medical Forefront

From the Practical Aspects of Nursing
- How to Provide Useful Nursing Information -

Yumiko UTO
Medical Imformatics, Kagoshima University Hospital

Summary
In response to a decision of the Japanese government that reimbursement of nursing fee should reflect each patient's requirement of the nursing service, the quality and the effectiveness of nursing records which will give reliable records of the services must be greatly improved.
Today's highly progressed medicine is supported by various medical professions, and health services are provided not only at clinics and hospitals, but also at local communities and homes. For maintaining close cooperation among them, they must have a means to share all information necessary to give excellent services using the best of advanced technologies, and the concept of the critical path gives standardized care plans to be carried out by them.
Under expanding needs for nursing services provided at home which consumes a lot of manpower, easily understood nursing information including visual ones should be supplied to patients and their families to maintain the quality and the effectiveness of the service.
In nursing information, color of visual data is one of the most important factors for all contexts mentioned above, and nursing professionals should have opportunities to actively join in the discussion on clinical applications of digital imaging, especially accurate reproduction of color.

 はじめに
 患者の満足が得られる看護や医療の提供が強く求められ,評価される時代が訪れてきた。一方,長引く医療経済の疲弊化に加え高齢社会の到来で,医療費の構造的な改革が急展開で進められようとしている。第三者介入による病院評価の実施や,診療報酬体系の見直しの一環として,看護必要度を加味した看護料という新しい加算方式がすでに公にされた。
 限られた資源を最大限に有効活用しながら,患者にとって良質な看護を提供していくために,われわれ看護職者が解決していかなければならない課題は少なくない。本稿では,今後の看護サービスの重要な役割を占めると思われる情報提供のあり方について考えてみたい。また,その中でも看護情報としての画像情報の活用という点から,色について考察してみたい。

 1.看護を取り巻く最近の情勢
 1)看護必要度の看護料への加算
 1999年4月16日に,医療保険福祉審議会制度企画部会から診療報酬体系の見直しに関する意見書がまとめられ,厚生大臣に提出された。意見書のポイントとして,高齢者や慢性疾患に対する治療に包括払いを導入するということなどとともに,急性期の入院医療における看護サービスに関して,患者の看護の必要量に応じた価格決定を行なうという提言がなされた。これは,病態が不安定な急性期患者の入院医療において重要な役割を果たす看護サービスに関して,個々の患者に行なわれるべき看護の必要量に応じた価格決定を行なうということである。すなわち,重症患者を受け入れ質の高いサービスを提供している医療機関が適正に評価されるよう求めているのである【1】。
 このような急激な変革は,医療費の構造的な改革を急ぎ実現しなければならないというわが国の医療経済の疲弊化に端を発しており,潤沢な医療費の追加配分ということではない。すなわち,厚生省は医療保険制度の抜本的改革を目指して診療報酬体系の見直しに着手し,その一環として,看護必要度を看護料に加味するという新しい評価の枠組みを導入することにしたのである。このことは,看護必要度の評価導入が限られた医療資源の適正な再配分という厳しい側面を持つことを意味している。したがって,看護サービスを提供しながら,サービスそのものの評価を定量的に行っていかなければならず,限られた人的資源の有効活用がますます求められるようになっていくであろう。現在,わが国の看護現場では,記録時間が長い,記録が後で役に立たないということが問題視され,最も解決を急がれている課題である。時間を割いて記録しても,正確で客観的な情報が乏しいということである。このような問題の解決にあたっては,チェックリスト方式の採用や記録フォーマットの検討とともに,画像情報の活用および文字情報とのリンケージなど,今後看護情報に関する認識を大幅に改めていかなければならない。

 2)情報の共有化と開示に向けて
 医療の高度化に伴い,専門分化したさまざまな職種が患者診療に従事するようになった。この傾向は今後ますます促進される傾向にある。患者を中心とするチーム医療を展開していく上で,情報の共有化というキーワードはますます重要性をおびてくる。一方,急速な高齢社会の到来や患者のQOL(quality of life)の向上という観点から,従来の病院・施設医療を中心とする考え方から地域医療,在宅医療へと医療の場が遷移し,ボーダーレスな医療が展開され始めている。このように異なった施設間,あるいは病院と在宅間で継続した診療や看護を提供していくためには,情報の共有化の意義はきわめて大きいといえる。また,今後,患者参加型,家族参加型の診療や看護を積極的に推進していく必要があり,医療従事者と患者,家族間の情報の共有化,すなわち,情報の開示のあり方は双方が目的を明確にして,とるべき方向性を確立していかなければならない。その具体的な方策の一つとして,クリティカル・パスが,わが国においても看護現場を中心に普及し始めている。この標準的なケアプランの提示は,患者,家族と医療従事者が情報を共有し,患者の自己決定を尊重したよりよい医療や看護を実現するための画期的なコミュニケーションツールといえよう。

 2.高度情報化時代に向けて
 近年の目覚しい情報通信に関する技術革新と情報環境の整備は,医療や看護におけるマルチメディア時代の到来を予見させ,明るい展望を感じさせてくれる。
 最近では高度情報ネットワーク網の整備が大規模に行なわれ,ネットワーク間の連携がきわめて日常的かつ容易に行なわれるようになった。世界的規模の通信網であるInternetの利用は,1990年代になって商用接続サービスの開始とWWW(World Wide Web)やMosaic(WWWブラウザ)の開発,普及などによって爆発的な勢いで増加するようになった。さらに93年には新社会資本整備構想が打ち出され,国をあげての情報,通信基盤の整備が開始されている。これらの動きを受けて,看護領域においてもInternet利用が積極的に行なわれつつある。Internetをはじめとするネットワークを介して施設,地域を超えた情報交換や情報提供が日常的に行なわれ,看護情報の体系化,標準化の達成がにわかに現実味を帯びてきた。今後は,看護のマルチメディア化が急速に進展するなか,看護情報としての画像の有効性が大きくクローズアップされていくであろう。たとえば褥創をはじめとする創部の状態,乳幼児の全身の皮膚色の状態など,看護の観察事項においても,その形状や色という情報はきわめて重要である。それだけに個々の看護職員の能力に応じた記述による表現法では,客観的な情報の伝達,共有化は不可能である。
 一方,わが国では今後21世紀に向かって,高齢化がさらに進行することが予想されている。高齢者にとって,質の高い生活を送るためには,なるべく自立した生活を確保し,自らの持てる力を回復,維持させるという営みが必要となる。このためには,医療サービスを受けながら日常生活を維持することが重要となってくる。患者の生活の場で医療や看護を提供する在宅ケアは,病気との共存を強いられる人々,とくに高齢者によりよいQOLをもたらすものである。しかし,在宅における医療・看護サービスの提供は膨大なマンパワーを必要とする。限られた人的資源や看護資源を効率よく運営し,高齢者の特性やニーズに添った在宅ケアを推進していかなければならない。そのためには,質の高いケアを提供するとともに,患者や家族にわかりやすい,ビジュアルな情報の提供を積極的に行っていかなければならない。

 おわりに
 新しい時代の社会的要請に対応した看護サービスを提供していく上でも,情報化はきわめて重要なキーワードである。患者の満足が得られる看護情報を提供していくためには,わわれ看護職者がいかに情報の達人になれるかということであろう。看護必要度評価の導入や情報の開示など,看護と国民の間で看護情報を共有化していこうとする動きが,急速な勢いで進展しようとしている。看護の茫漠とした要素が,看護サービスの消費者である患者の手を借りて,これからクリアカットに整理されていくことであろう。デジタル医用画像の活用や色の再現性に関する問題提起など,われわれ看護職も主体的にかかわりながら,その発展と定着に寄与していきたい。

 参考文献
【1】特集/「看護量測定」からみる看護の未来,看護展望 24(1), 18-53, 1999.