パネルディスカッション 第1部:パワーユーザーと色処理専門家の連携で拓く新世界 皮膚色の測定―積分球付き非接触分光測色計について 内田 彰子 筑波大学医学専門学群臨床医学系形成外科 The 1st Symposium of the 'Color' of Digital Imaging in Medicine Panel Discussion Part 1 : Cooperation of Power Users in Medicine and Specialists of Color Technologies for Pioneering a New Frontier A New Instrument for Measuring the Human Skin Color - Non contact type spectral light meter with a globe for light integration - Akiko UCHIDA Department of Plastic Surgery, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba Summary Standard instruments used for measuring skin color have some problems: 1) they are affected by pores and wrinkles in the skin, 2) they are affected by various illuminant conditions, 3) the edge loss error caused by the semitransparency of skin. (Fig. 1, Fig. 2, Fig. 3, Fig. 4, Fig. 5, Fig. 6) We have developed a new measuring system for the color of skin based on a non contact type color spectrometer equipped with a globe for light integration (Fig. 7, Fig. 8, Fig. 9), and succeeded to improve these problems remarkably (Fig. 10, Fig. 11, Fig. 12). |
図3 CM-2022で測色 測定したい部分に径4mmの開口部がぴたりと垂直にあたっているかの判断は困難。圧迫もできないし離してもだめ。測色中の手のふるえも問題。
|
図6 CMS-35FSで測色 片手で測定プロ−ブを皮膚面に接した状態で保持できる。反復再現性はよいが,照明条件とエッジロスエラ−が問題となる。
|
1.方法と結果 分光放射輝度計(CS-1000,ミノルタ)の開口部に,8インチの積分球を付け,150ワットのキセノン・ファイバー光源を入れた。積分球の先端は被検体−皮膚面に直径約5cmに開口し,中心部の被測定範囲(直径4mm)には透明板などの接触物がないようにした(図9)。これを用いて,さまざまな表面状態の皮膚を測り,再現性を評価した。また接触型測色計(CM-2022,ミノルタ・CMS-35FS, 村上色彩技術)の測定値との比較も行なった。 図9 筑波大学で実用化した非接触型・積分球分光測色システム 装置が大きくなるが,測定部を確認でき,測定部位の状態を選ばない。今回,積分球を付加したことにより,完全拡散光の照明条件が得られた。さらに照明面積/測定面積比が大きいためエッジロスエラーがなく,半透明の皮膚色を測定するのに適している。
|
<結 果>(図10,11,12)接触型2種に比べ,非接触積分球型の反射率曲線はカ−ブが鋭敏であった。測色反復再現性は接触型CMS-35FS > 非接触積分球型 > 接触型CM-2022の順で高かった。 日焼け数日後の発赤した皮膚を測色した場合,非接触積分球型のみで,とくに長波長領域の反射率が有意に高く測定された。 図10,11,12 各種皮膚測定における色彩計3種の反射率曲線の比較 図10(上):CM-2022の反射率曲線 図11(中):CMS-35FSの反射率曲線 図12(下):非接触積分球型の反射率曲線 黒:A 前腕伸側,オレンジ:A 前腕屈側,青:B 母斑,ピンク:B 前腕屈側,緑:A 肩日焼け
|
2.考 察 半透明の皮膚などをはかる場合,従来の接触型測色計では皮膚内部の反射光が一部欠けるため測定周縁部で測定値の明度や彩度が低下する傾向にある(エッジロスエラー)。 非接触積分球型は,測定面積径4mmに対して十分な照明面積径50mmを持っているためエッジロスエラーがない。この為より自然な,目視に近い皮膚の色を再現していると考える。また 積分球により照明光が完全拡散光となり,その反射光を測定するため,測定距離が短い場合でも45度照明やリング照明より目視観察条件に近く,安定性が高い。 CMS-35FS の場合,保持しやすいペン型ハンドピースのため測定面を一定に保ちやすい。測定時間も3秒と短い。 他の2機種は,測定機側や被験者側の微動により測定面の傾きや,測定部のズレが生じやすいといえる。 「日焼けした数日後」の皮膚色には,真皮毛細血管拡張のみでなく,表皮内のsun burn cell 出現やメラニン顆粒の分泌増加,表皮細胞分裂活性化,角質の剥離など,より表層の光 学的因子が皮膚測色に影響すると考えられる。 非接触型測色計による日焼け皮膚測色値が,他の測色計と著しく異なるのは,前述の皮膚表層のスペクトル光をも受光できる構造によると推察される。次回,深さ方向分解実験予定。 まとめ この測定システムにより,従来の接触型測色計では問題があったシワや毛穴など皮膚表面の状態による測定値のバラツキが改善された。非接触型測色計は測定環境に影響をされやすい欠点があったが,これは積分球を用いた拡散照明条件が得られ,また光源強度も可変,と大きく改良された。また測定部圧迫による皮膚毛細血管の退色などの問題や半透明の物体色を測る際問題になるエッジロスエラ−がない,という優れた点を有する。 今後さらに,積分球の大きさ・受光角度・照射光強度の検討,反復再現性改善など,JISにマッチした光学条件をめざし根拠のあるデ−タを得るべく検討をすすめる。 |