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医局員の声Voice of members


金子 智之

東京警察病院泌尿器科
平成12年 東京大学卒業
平成12年 入局

 私は平成一二年に東京大学医学部を卒業し、同年東京大学泌尿器科学教室に入局しました。もともと基礎医学への道を考えていたのですが、自分の技術や知識で直接的に誰かの役に立てるという点で臨床医学の道を選びました。現在はこの医師という仕事を天職であると感じています。

 臨床研修が義務化される前であり、他の多くの同級生と同様に医局へは直接入局しました。泌尿器科を選択した理由は、腹部外科手術に興味があったこと、当直や緊急手術が多いと思われた一般外科は体力的に自信がなかったこと、尿路生殖器に関しては手術のみならず感染症治療など外科的治療と内科的治療の両方が行えること、人工透析や移植医療など守備範囲が広い科であること、産婦人科とは異なり両性を扱うことなどが挙げられます。あくまでも医学生時代に考えたことであり、実際に臨床の場に立ってみると、思ったとおりであった点もあればそうでない点もあります。

 入局後は大学病院で研修医として一年間勤務した以外は、関連病院で臨床に携わり現在に至ります。泌尿器科に来られる患者さんの訴えは様々であり、扱う疾患も悪性腫瘍、排尿障害、尿路結石、尿路感染症など一般病院であっても多岐にわたります。最先端の医療を切り開く大学病院などの機能は必ず必要なものですが、私自身はそのようにして蓄積されたエビデンスに基づいた標準的医療を、一般病院に来られる患者さんに対し可及的速やかに実践する医師となることを望んでいます。目下の目標は腹腔鏡手術の習得ですが、大学病院以外で腹腔鏡手術を学ぶことは現時点では困難を伴い、今後の課題となっています。

 卒後数年で大学院へ進学する医局員も多いのですが、私自身は大学院という選択肢は考えませんでした。臨床の現場に身を置くことが好きであることもありますが、家庭生活を維持しつつ臨床医としての技量を高めたいと考えた場合に研究に割く時間がないと考えたことが最大の理由です。現在私は三児の父であり、妻もフルタイムで働いていますので、日常の仕事と子供の世話でほぼ一日が終わります。朝5時に起床し、小学生の長女の弁当作りと3人の子供の世話から一日が始まり、仕事の後は保育園の迎え、子供の夕食、入浴、寝かしつけを分担して行い、宿題や持ち物のチェック、洗濯や食器片付けなどを終えると自分の時間は殆どありません。もう少し自らの技術を高めるための時間が欲しいと思うこともありますが、私にとっては家庭なくして仕事はあり得ませんので、その中で家庭と仕事の最適化を図るように考えています。そのような制約もあり、私自身は泌尿器医としてはまだまだ発展途上ですが、泌尿器科医という職業は非常にやりがいのあるものであると感じておりますし、家庭と仕事を含めた自分のおかれた現状については概ね満足しています。

 どの専門科にも共通することだとは思いますが、私自身は泌尿器科を、対象が幅広く奥が深い興味の尽きない科であると感じています。また、外科系ということで尻込みされておられる(特に女性の)方に対しては、

 その時々の生活に合わせて勤務する関連病院を選び、多様な勤務体制を選ぶことで、十分にご活躍いただけるのではないかと考えています。私自身は先に述べた理由で大学院に進学しない代りに、ここ数年はあまり勤務条件の厳しくない関連病院での勤務を希望してきました。それに伴う経験症例の少なさを補うために、虎の門病院や癌研有明病院、国立がん研究センター中央病院など医局外の病院で手術見学をさせて頂く機会を得ました。見学を快くお許しくださった小松秀樹先生、福井巌先生、藤元博行先生(見学順)にはこの場をお借りして篤く御礼申し上げます。また泌尿器科では腸管を扱う術式も多いのですが、症例数が限られるため、在籍した病院では必ず空いた時間に一般外科の手術を見学させて頂くことにしています。

 この文章を読んでおられる方の中には、進路を決めかねておられる医学生や研修医の方もおられると思います。そのような方々が、僅かなりとも有益な情報をこの文章から酌みとっていただけるのであれば望外の喜びと考えています。