平成9年10月28日 通算第288回定例会
「脳血流シンチの実際」
日大板橋病院 小沼 浩
東邦大橋病院 浜崎 千裕
虎ノ門病院 斉藤 京子
東大病院 長澤 伸行
精神神経センター 谷崎 洋
都立駒込病院 福田 祐二
RVR法を用いた局所脳血流量測定 日大板橋病院 小沼 浩
1. 収集プロトコール
Patlak Plot収集
15分後、SPECTデータ収集(第1回目) : 安静時脳血流量定量画像
データ収集終了10分前、ダイアモックス投与
データ収集終了後、ECD追加投与
15分後、SPECTデータ収集(第2回目)
2. 手技
・静注血管 : 右側尺側皮静脈 次に肘正中静脈 を選択する
パトラック処理を行うため、大動脈弓のカウントが重要になる。そのため、末梢
の静脈よりECDを投与した場合は、結果があまり良くない。
・収集開始 : ECDシリンジにRVR用プランジャーロッドを装着し、注入開始と同時に収集開
始する。
・ダイアモックス投与 : 第1回目のデータ収集終了10分前
・ECD追加投与 : 第1回目のデータ収集終了後直ちに
3.収集条件
Patlak Plot SPECT
コリメータ : LEHR LEHR−FAN
拡大率 : 1倍 1.33倍
マトリクス : 128×128 64×64
サンプリング : 1秒/f×90f 5度毎、25秒/f×72f
4. 画像再構成
データ処理装置 : ODYSSEY VP
再構成フィルタ : Ramp
低域通過フィルタ : Butterworth (Order 8.0、 Cutoff 0.25)
吸収補正 : Chang(補正係数μ=0.09)
表示スライス厚 : 1pixel
5.処理方法
・第1回目、2回目のSPECTデータの処理を同じ条件で行う。
・第2回目のSPECT結果に時間補正を行い、第2回目−第1回目のサブトラクションを行う。
・Patlak Plot処理を行い、第1回目のSPECT画像より、安静時mCBFを求める。
・第1回目、2回目SPECTのAxial画像より平均カウントを求め、Lassenの式に代入し、負荷
時mCBFを求める。
・それぞれのmCBF値より安静時、負荷時の定量画像を作成する。
・それぞれ定量画像にROIを作成し、rCBF値を求める。
脳血流シンチの実際(ECDを用いたPatlak Plot法)
東邦大橋病院 浜崎千裕
1. 局所脳血流量算出用フローチャート
RIアンギオグラフィ SPECT収集
EPI算出 平均SPECTカウント算出
mCBFへ換算 => Lassenの補正
rCBF算出
2.収集
・ RIアンギオグラフィの収集は、シーメンス製の装置であるため被検者を斜めに位置決めして行っている。
・ パトラック処理は、画像を真っ直ぐに直して行っている。
3.収集条件
Patlak Plot SPECT
コリメータ :LEHR LEHR−FAN
拡大率 :1倍 1.45倍
マトリクス :128×128 128×128(1pixel=2.45mm)
サンプリング:1秒/f×120f 4度毎、40秒/f×90f
4. 画像再構成
データ処理装置 : Macintosh ICON
再構成フィルタ : Butterworth (Order 5.0、 Cutoff 0.4)
吸収補正 : Chang
表示スライス厚 : 2pixel
5.画像表示
・定性画像:X線フィルムに断面変換した画像を表示。
・ 定量画像:カラーハードコピーに断面変換した画像とPatlak Plot処理の結果を表示。
・ MRI画像と定量画像の重ね合わせ(処理に時間を要するため、要望のある場合のみ)。
脳血流測定の実際
虎ノ門病院 斉藤京子
1.使用放射性医薬品
123I−IMP、99mTc−ECD、99mTc−HM-PAOを使用
2.医薬品の使い分け
・IMP(定性画像) : 脳神経外科・神経内科
神経学的異常が認められた場合
(脳血管障害における虚血領域、中枢神経疾患における脳機能の評価)
・IMP ARG定量法 : 頚動脈内膜剥離術・浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術
術後の血流改善の把握、術前における術後の改善度の把握
・ECD-Diamox負荷 : 循環器-CABG、動脈瘤等の術前スクリーニング
異常のあった場合は、約2日後にECD-Baseline検査を行う。
・ ECD・PAO-Diamox負荷
脳ドックにて主幹動脈狭窄が認められ、神経学的異常が認められない場合(外来患者)。
・ECD・PAO-Baseline : 緊急検査、外来患者スクリーニング。
3.123I−IMPによる局所脳血流測定プロトコール
安静閉眼 −5分
IMP222MBq静注 0分
スキャン開始 5分
(収集時間24分 4分間反復収集 26分間測定時間 )
スキャン終了 31分
*使用装置 東芝製GCA9300A/UI (コリメータ:UHR)
4.IMP−ARGによる定量測定プロトコール
安静閉眼 −5分
IMP222MBq定速静注 0分
動脈採血 10分
スキャン開始 17分
(スキャン中心時間 30分)
(収集時間24分 4分間反復収集 26分間測定時間)
スキャン終了 43分
*使用装置 東芝製GCA9300A/UI (コリメータ:UHR)
5.ECD、PAO-Diamoxによる脳血流測定プロトコール
Diamox1g −10分
ECD800MBqPAO740MBq静注 0分
スキャン開始 5分
(収集時間18分 3分間反復収集 20分間測定時間)
スキャン終了 25分
*使用装置 東芝製GCA9300A/UI (コリメータ:UHR)
6.ECD、PAOによる脳血流測定プロトコール
安静閉眼 −5分
ECD800MBq PAO740MBq静注 0分
スキャン開始 5分
(収集時間18分 3分間反復収集 20分間測定時間)
スキャン終了 25分
*使用装置 東芝製GCA9300A/UI (コリメータ:UHR)
東大病院における脳血流シンチの実際
東大病院 長澤伸行
1.検査種類
・ SPECT : 123I−IMP SPECTのみ
〃 ARG法
99mTc−HMPAO SPECTのみ
〃 Patlak+SPECT
99mTc−ECD SPECTのみ
・PET
2.臨床的な使い分け(適応)
・ HMPAO : 薬剤標識が簡単なので、脳梗塞やてんかんの発作時など緊急性を必要とする時に使用。
(Balloon oculusion testや外傷(急性)神経変性疾患など)
・ ECD : 脳梗塞急性期・亜急性期、脳炎、ミトコンドリア脳筋症など(HMPAOと併用)
・IMP : 上記の適応以外のもの、痴呆症、慢性脳血管障害、メラノーマなど
3.検査プロトコール
・ IMP、ECD、HMPAO SPECTのみの場合
前処置 : 排尿後、検査台上で安静20分、アイマスク、部屋を暗く、静かにし、血管を確保。
投与量 : IMP 222MBq、HMPAO・ECD 740〜1110MBq 静注。
撮影開始 : IMP 静注後25分、HMPAO・ECD 静注後15分。
撮影条件 : 東芝製 GCA9300A/HG
1/30rpm(3検出器) 約30分間収集
コリメータ UHR
体動対策 : レーザーポインターを常時使用し、動きのあった場合に補正する。
・ ARG法
前処置 : 排尿後、検査台上で安静20分、アイマスク、部屋を暗く、静かにし、動脈と静脈を確保
投与量 : IMP 222MBq(全量を1分間4mlの定速静注)
採血 : 静注10分後に動脈血2.5mlを採血
血中RI濃度測定 : 0.5mlづつ4本に分け、ウェル型シンチレーションカウンタにて測定
血中ガス濃度測定 : 1、3、5分後に動脈採血し、ラジオメータで測定
撮影開始 : IMP 静注後23分(中心時間が40分になるように)
撮影条件 : 東芝製 GCA9300A/HG、TEW法
1/30rpm(3検出器) 約30分間収集
コリメータ UHR
・HMPAO Patlak+SPECT
前処置 : 排尿後、検査台上で安静20分、アイマスク、部屋を暗く、静かにし、血管を確保
投与量 : HMPAO 740MBq静注、静注10分後に370MBq追加静注
撮影開始 : Patlak 1秒/f×180f (3分間)、 マトリクス 128×128
使用装置 ADAC VERTEX
SPECT 東芝製 GCA9300A/HG
1/30rpm(3検出器) 約30分間収集
コリメータ UHR
99mTc−ECDを用いた局所脳血流の測定手順(Patlak Plot法について)
国立精神神経センター武蔵病院 谷崎 洋
1. 使用機種 : シーメンス社製マルチスペクト3
・RIアンギオ LEHRコリメータ
・SPECT ファンビームコリメータ
2.患者のセッティング
・ 安静、仰臥位、閉眼状態で顎を十分に引かせ、頭部を固定する。
・ カメラの有効視野が狭いため、患者をカメラに対して専用台にて斜めに寝かせ、視野内に大
動脈弓部と大脳半球を収める。
・ カメラ面と身体面を平行かつ最短距離にする。
3.放射性医薬品の準備
・ フラッシュ用の生理食塩水10ml以上を三方活栓に接続し、一方に放射性医薬品を、一方に21G翼状針を装着する。場合によっては、延長チューブも使用する。
4.注射部位
・ 基本的には右腕の尺側皮静脈とする。血管確保が困難な場合は、肘正中皮静脈橈側皮静脈の順に選択する。それが困難な場合はさらに末梢血管を選択する。
・ 左腕からの投与は、鎖骨下静脈と大動脈弓部が重なり、過少評価となることがある。
5. 検査手順
放射性医薬品投与(RIアンギオ)
コリメータ : LEHR
マトリクス : 128×128
収集時間 : 1秒/f×100f
*Patlak Plot法は投与時のボーラスの安定が再現性に影響するので、医薬品を勢い良く投し、生食10ml以上を最低限秒間3mlでフラッシュする。
投与量 : 全体 740MBq
RIアンギオには370〜550MBqを使用する2分割法を基本としている
10分 : コリメータ交換
SPECT収集
ファンビームコリメータ
50秒/f×24f×3カメラ
97keV付近を中心に10%幅のエネルギーサブトラクションを行っている
6. 解析
・ Patlak Plot解析
大動脈弓部が良く写っている画像を加算し、ROIを設定する。
大脳半球が良く写っている画像を加算し、ROIを設定する。
BPIを算出し、大脳半球血流量へ変換する。
・ Lassenの補正
大脳半球血流量をLassenの補正式へ入力し、補正を行う。
・ 画像表示
患者間の比較等が視覚的に評価できるように、一定の血流値カラースケールで表示している。
7. LIMS法での検査の流れ
・ 123I−IMPにて動脈採血なしの局所脳血流定量法
FU法の変法による値にCBFファクターを乗ずることにより、1点脳血流量を算出し、rCBFを求める。
・ 投与前のシリンジカウントを測定後、患者を安静、仰臥位、閉眼状態で寝かせ、肺野が全てカメラ内に収まるように設定する。
・ フラッシュ用の生食にてECDの時と同様に投与し、胸部全体のRIアンギオを行う。
1秒/f×180f
・ RIアンギオ後、5分中心、15分中心の頭部プランナー像を1分間収集する。
・ SPECT収集
コリメータ : LEHRまたはファンビーム
60秒/f×24f×3カメラ
・ SPECT終了後、頭部プランナー像を1分間収集する。
・ RIアンギオ像より、右心系が良く写っている画像を加算し、ROIを設定する。
左房と右室のROI設定後、胸部全体のROIを設定する(心陰影は除く)。
これにより、胸部洗出率とCOを求める。
・ シリンジカウントと頭部像および式より、CBFファクターを求める。
・ CBFファクターをSPECTデータに乗ずることより、rCBFを求める。
99mTc−ECDを用いた局所脳血流の測定手順(Patlak Plot法について)
東京都立駒込病院 福田祐二
1.使用機器
・ RIアンギオ:東芝製GCA−90B−W1(有効視野35×50cm)
・ SPECT・画像処理:東芝製GCA−9300A/HG
2.検査手順
・ GCA−90B−W1 :RIアンギオ
・ GCA−9300A/HG:SPECT収集・画像再構成、Patlak Plot処理
3.RIアンギオ
・収集条件 : マトリクス 128×128 (1pixel=4mm)
コリメータ LEHR
収集時間 1秒/f×90f
・ポジショニング:患者をカメラ長尺方向に、頭頂部が欠けないように垂直に寝かせる。
副鼻腔の影響を少なくするために、枕を高くする。
早めに検査台に寝かせ、目隠しをし、カメラをできるだけ近づけ、安静を保つ。
・ 投与:アンギオ用セットを用意し、注射と同時に収集開始。
4.SPECT収集
・ 収集開始時間:RIアンギオを午前の最初に行っているため、SPECTの開始時間は、RIアンギオの10〜30分後になる。
・ ポジショニング:OM Lineを合わせる
・ 頭部の固定:通常は固定ベルトのみを使用。安静を保てない場合は、ヘッドドームを利用して血圧測定用マンシェットで固定する。
・収集条件: マトリクス 128×128 (1pixel=1.7mm)
4度毎 90方向 (1カメラ 30方向)
連続反復収集 1分/回転×10回転
均一性補正
LESHRファンビームコリメータ
TEW/lower 140keV 3%
main 140keV ±12%
5.SPECT画像再構成
・ 画像再構成条件:TEW法 PreFilter Butterworth(東芝推奨)
Fan−Para変換 PreFilter Butterworth(東芝推奨)
変換後の角度 6度
再構成 2pixel厚
PreFilterなし
再構成Filter Ramp
吸収補正 Sorenson(μ=0.13/cm、実験値)
Threshold 5−15%
6.Patlak Plot解析
・ Brain Perfusion Index(BPI)を求める。
大動脈弓が明瞭な画像10フレーム
大脳が明瞭な画像50フレームを加算する。
大動脈弓部と大脳半球にROIを設定し、TACを作成し、時間のずれを補正する。
・ 平均脳血流に変換する。
・ Lassenの補正を行う。
基準部位の画像は、視床を含む厚さ2cm分。
・ 局所脳血流(rCBF)を求める。
視床付近の1スライス
小脳の1スライス
7.画像提出
・ 定性画像 : 3方向の写真とカラーハードコピー
・ 定量画像
Patlak Plot結果、Lassenの補正、rCBFの写真
画像 : スケールを上限 75/下限 5 として、カラーハードコピー
質疑応答
1.Diamox負荷時の放射性医薬品投与時間は、10分でよいのか。
(虎ノ門 斉藤)10分が通説?となっているようである。
2.三検出器型にてPatlak Plot法を行う場合に、検査台は斜めに設定できるのか。
(Ans.)シーメンス社製には、専用台がある。
3.ファンビームコリメータ使用の場合、頚部が短い人や太っている人だと、小脳が欠ける恐れが
あるため、パラレルに変えているか。
(東邦大橋 浜崎)できるだけ肩を下げたり、拡大率を変えて収集する。
(東大病院 飯田)コリメータを変えると、他の患者との比較に使用できないのではないか。
(慶応病院 三宮)東芝製では、小脳が欠けたことがない。
4.Patlak Plot法を行うにあたり、前面と後面で行っている施設はあるのか。
(DRL)わからないので、調べて返答します。
(精神神経センター 谷崎)当院の松田先生も考えている。
5. ECDのRVR法を行っており、サブトラクションを行うと画像が粗く画質が悪くなるが、良い方法があるか。
(日大板橋 小沼)何例か画質が悪いことがあった。患者の体動が原因かも知れない。
6. 体動補正のプログラムはサブトラクションにどのような影響を与えるのか。
(精神神経センター)体動補正プログラムがない時のサブトラクションはかなり悪かったが、プログラムを使用してからは、限界はあるが良くなっている。
7. TEW法のエネルギーウインド幅のメーカー推奨値は今後どうなるのか。
(東芝)実験を重ねた結果とシミュレーションの結果とで、各パラメータの値を推奨している。
(文責:目崎 高志)
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