新人セミナーPart1
2.放射性医薬品の取扱い

創価大学 生命科学研究所 小田 正紀 氏

 病院での放射性医薬品の取扱い方法と、4月ということで職場でも教育訓練を行っていると思われるので、若干の法的および生物学的なことを講演された。
1)法的規制について
 国立の施設:
医療施設 放射性医薬品を使用 --> 医療法施行規則
人事院規則
放射性医薬品以外を使用 --> 医療法施行規則
人事院規則
障害防止法
一般施設 放射性医薬品以外を使用 --> 人事院規則
障害防止法

 公立および民間施設:
医療施設 放射性医薬品を使用 --> 医療法施行規則
電離放射線障害防止規則
放射性医薬品以外を使用 --> 医療法施行規則
電離放射線障害防止規則
障害防止法
一般施設 放射性医薬品以外を使用 --> 電離放射線障害防止規則
障害防止法

2)放射線の取扱いについて
・放射線は非常に利用価値が高いが放射線被曝というものがあり、放射線による害は無視 できるものではない。放射線の取扱いを安全に行うということは放射線被曝を少なくす ることであり、放射線をうまく防護して良い点だけを利用することである。
・放射線防護の目的(ICRP 1977年勧告 Publication 26)
 「非確率的な有害な影響を防止し、確率的影響を容認できるレベルまで制限すること、ならびに放射線被曝を伴う行為が確実に正当化されるようにする。」
 ポイント:防止、制限、正当化の3つが大きな指針である。
 ICRP1990年勧告(Publication60)の国内法令取り入れが急がれているが、そこ では非確率的影響が確定的影響となるが、根本は防止、制限、正当化の3つが大きな柱 である。
 確率的影響について:被曝した本人に生ずる身体的影響の内、潜伏期があり数年先に現 れる晩発障害と、生殖線被曝により子孫に影響を与える遺伝的影響に分けられ、発癌や 突然変異等の障害がある。
 非確率的影響について:本人に生ずる身体的影響の内、早期に現れる急性障害であり、 脱毛や皮膚の紅斑等大線量を短時間に浴びた時に生ずる障害がある。
 放射線防護の理念としては、非確率的影響を“0”にして確率的影響をできるだけ少な くすることである。
 発癌や突然変異等の確率的影響は線量に比例して発生率が上がり、皮膚紅斑や脱毛、白 内症、不妊等の非確率的影響はあるしきい値以上で発生率が上がる。確率的影響は自然 発生率があり“0”にはできないが、非確率的影響はしきい値以下であれば“0”にで きる。
・放射線防護の目的を達成するための基本方針
行為の正当化:放射線を用いた行為の利益が、被曝による損失を確実に上回る場合のみに放射線を利用する(医療行為では利益>損失とされている)。
放射線防護の最適化:経済的社会的要因を考慮して、合理的に防護を行い、できるだけ被曝を少なくする。
線量制限:法的に被曝線量を規制して、個人被曝線量を制限する。
・防護の3Cの原則
閉じ込め:放射線を限られた空間に閉じ込める
有効的に:効果的に必要最小限の量を用いる
制御  :制御できるような状態で使用する
・体内照射と体外照射
体外照射:X線検査等
RI検査時における患者からの被曝を防止するため、防護衝立て等を使用する
防護の3原則…時間、距離、遮蔽
体内照射:RI検査を行うとき、術者の体内にRIが入る場合がある
傷口、気道、経口など
放射性物質と体細胞が非常に近くなり、被曝の可能性が大きくなる
防護の5原則(体内侵入後の処置の方法等も含めて、3D2Cの原則)
希釈、分散、除去、閉じ込め、集中

3)教育訓練で行う内容と測定器について
・放射線の透過性:α線、β線、γ線、中性子線などの違いを示す。
・サーベイメータ:放射線の種類および目的により使用する測定器が異なることを示す。
・体内被曝と体外被曝の違い等を示す。
・確率的影響と非確率的影響の違い等を示す。
・非密封RIの取扱い方法を示す。
・管理区域内の遵守事項について示す。
4)放射線施設におけるRIの取扱い
・病院でのRI取扱いにおいて放射線被曝の確率が高い業務は医薬品調剤業務である。
・管理区域への入室
 スリッパへ履き替える:外の履き物と中の履き物を明確に分ける
・分注、調整作業
専用の白衣(または黄衣):RIが飛散しても衣服へ付着しないようにする
リングバッジ(指)とフィルムバッジの使用
手袋の着用
RIバイアルのシールドと注射器のシールド
自動分注装置の使用
・作業室内は汚染等に対処するためにポリエチレン濾紙を貼る。
・貯蔵庫の使用
・患者からの放射線被曝を防止するために防護衝立てを使用する。

5)取扱いに際して
・放射線は害もあれば利益もあるものであり、「おそれず」「あわてず」「あなどらず」の態度が必要である。
・初めて取扱う場合はコールドランを行って、手順を理解しておくことが大切である。

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