通算第261回 定例会記録
新人のための教育セミナ−Part.II
2.核医学検査について-in vivo検査の紹介-

東京慈恵会医科大学附属病院放射線科 平瀬 清氏

1、in vivo核医学検査とは
 核医学検査とは 非密封放射性同位元素をトレーサとして利用している検査であり、機能情報を含む検査である。放射性医薬品製造規則による医療用核種またはそれを標識した化合物を人体に投与して実施する。
画像(形態)情報と機能(生理)情報の融和した検査と言える。
 投与法には静脈内投与,経口投与,吸入法,動脈内投与,等があり、集積機序には(1) 粒子分布,イオン交換, 拡散,血管内プール, 貪食作用,能動作用(2) 代謝作用,レセプター結合, 免疫作用があげられる。
 撮像,データ収集方法には(1)シンチレーションカウンタ(2)シンチスキャナ(3)シンチレーションカメラといったモダリティにコンピュータが組み合わされる。
 核医学検査の特徴として
A)長所:非侵襲的検査である,生理的条件下で検査が可能,運動負荷等の検査が容易である。種々の機能を選択的に映像化できる,定量または半定量解析が可能である。
B)短所:検査費用が高い(放射性医薬品が高価である),患者内部被ばくが避けられない,検査時間が長い,解像力が低い(空間分解能)
といった点があげられる。
2、検査法の例
1)心プール検査 心疾患における循環動態の評価,心疾患に伴う形態的変化の評価,心内短絡の診断と定量評価,心嚢液貯留の診断,心臓手術後の経過観察,心内腫瘍の検出,心拍出量,中心時間等の心機能の測定に用いられる。
データ解析 フェーズ(位相解析),左心室容積曲線,EF(駆出分割),壁運動,Factor analysisなど。核医学検査とcomputerとの結びつきの最も早かった検査の一つであり、完成度が高い。Anger型カメラとの組み合わせで充実している。また、心カテ結果とのリファレンスがしっかりしていれば虚血性心疾患等の外来フォロウが可能であり、患者の社会復帰にも有用である。
2)心筋シンチグラフィ検査の分類と使用放射性医薬品
・心筋血流シンチグラフィ:201TlCl,99mTc-MIBI,99mTc-tetrofosmin
虚血性病変(梗塞)の同定,心筋viavilityの判定,心肥大の判定,右室負荷の判定
・心筋梗塞シンチグラフィ:99mTc-PYP,111In-抗ミオシン 急性心筋梗塞病変の同定
・心筋代謝シンチグラフィ:123I-MIBG,123I-BMIPP
心筋交感神経代謝, 脂肪酸代謝活性
3)脳神経系
・脳シンチグラフィ:99mTcO4-,99mTc-DTPA(現在では殆ど行われない。)
    拡散分布による腫瘍,梗塞部位の検索
・脳血流シンチグラフィ:99mTc-ECD,123I-IMP,99mTc-HMPAO,133Xe,81mKr
通常のプレーナ像でも評価可能だが、CT,MRIとの比較も可能なSPECTが主流。局所脳血流量の評価、定量化の努力がなされている。
・脳槽シンチグラフィ
位置づけが髄液漏診断が主な役割へと変化。
4)甲状腺ヨード摂取率測定
甲状腺は血中無機ヨードイオンを選択的に捕獲
有機化してホルモン合成     131Iから123Iへ(βemitterからnon βへ)
前処置
絶対に摂取しない食品:昆布、ワカメ、海苔、ひじき、寒天等の海藻類
           キャベツ、カブ、あぶらな
出来るだけ摂取しない:ほうれん草、人参、レバー等の臓物肉、牛乳、桃、ピーナ ツ、化学調味料
薬物        :ルゴール、サイロキシン、トリヨードサイロニン、
           メルカゾール、メチオゾール、造影剤
           ステロイド剤、抗ヒスタミン剤等
検査に苦痛は無いが、日本人の食生活においては前処置の徹底が最大の苦痛(難関)である。正月明けの半月くらいは避ける配慮も必要か?
5)骨シンチグラフィ:99mTc-MDP,99mTc-HMDP
静注2〜4時間で検査すると、骨病変全般で骨代謝変化が現れる。X-P.では30−50%の脱石灰化があると所見として現れるが、骨シンチグラフィでは代謝亢進で即陽性描出=早期高率に診断可能である。生理的集積部位に注意して画像化する必要がある。(成長期骨端,頭蓋底部,胸鎖関節部,肩甲骨下縁,腎尿路系等)
バリエーションとして3phase studyがある
6) 腫瘍、炎症イメージング:67Ga-citrate
腫瘍では静注後72時間後に検査実施。炎症性疾患が検査目的の場合は24〜48時間の早期分布像を利用することもある。生理的集積部位として副鼻腔,涙腺,耳下腺,胸骨,椎体,肺門部,肝,結腸内の糞便,女性の場合は両側乳房(月経周期や授乳期には要注意),静注後早期では腎尿路系があげられる。
 その他にもサルコイドーシスの肺門型,肺野型の鑑別にも利用することがあるが、この場合にはステロイド療法の適応が決定され、治療に直結している。

その他、症例提示

3、第一選択になりうる核医学検査
1)腎不全の傾向にある患者あるいはヨードアレルギーの患者に対する腎(動態)シンチグラフィ
放射性医薬品:123I-OIH 99mTc-MAG。 99mTc-DTPA
評価対象機能:有効腎血漿流量  尿細管抽出率 糸球体濾過率
        (ERPF)   (TER)    (GFR)
特徴:腎臓に負担が無い。形態、血流および腎機能の同時評価が可能。
   腎移植後の血流,造尿機能評価も可能。graftに負荷をかけることなく術後評価や定期検査も可能。

2)出血巣シンチグラフィ
 空腸,回腸領域の出血部位の検索に有用。また、内視鏡検査で不明または実施不能の場合は緊急検査の対象となり、第一選択となりうる。
 99mTc-HSAD,99mTc-RBC,99mTc-フチン酸コロイド等を静注し、生理的集積部位以外への漏出を検索する。得られた情報は、出血部位が同定された後、TAEや手術による根治のために利用されることが多く有用である。ただし、出血が持続(下血,Hbが指標)していない時の検査は無意味な場合が多い。また、使用薬剤により標識率と生理的集積部位の関係に留意しなければならない。
3)肺血流シンチグラフィ
 肺塞栓症の診断においては他のモダリティとは比較できないほどに有意である。
静注以外の侵襲もなく、状態の悪い患者に対しても実施可能な場合が多い。発症後早期では、血栓溶解療法によって肺梗塞への移行を防ぐこともでき、救命救急診断の一端を担うこともある。肺塞栓症は本邦でも増加傾向にあり、検査に即応する配慮が必要である。注意すべき点として、慢性閉塞性肺疾患等による換気欠損が長期にわたって存在する場合には肺胞低酸素血管収縮反応による血流低下が一致した部位に観察されることがあげられる。肺塞栓症の鑑別には不活性ガスやテクネガスを用いた換気検査の同時実施が望ましい。
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