通算第261回 定例会記録
新人のための教育セミナ−Part.II
1.放射性廃棄物について
日本アイソトープ協会   松下 幹夫 氏

1、事業所登録からRI廃棄物引渡しまで
(1)RIを使用するにあたり廃棄物が発生するため、事業所の登録を日本アイソトープ協会環境整備課にて行う。
(2)廃棄物収納容器を廃棄物の種類および発生量により、容器の本数を申し込む。容器は必要に応じ、全国に発送している。
(3)発生した廃棄物は、分類別に容器に入れる。
(4)年間4月から3月まで集荷を行っており、一年で全国の事業所を一回まわる。(新潟にはじまり、夏は北海道、冬には九州に移動)しかし、他の廃棄設備がいっつぱいになれば、その都度引取りを行う。
※容器には、それぞれ固有番号がふってあり、廃棄物の種類により、とおし番号となっている。また、その内容を証明する記録票を容器一本につき一枚書く。(核種、廃棄量等)
※この記録票に基づき、運搬時に核種、放射能、線量当量のチェックを行う。
※廃棄物の料金は、放射能、線量によって割り増しもありえる。
2、集荷から処理まで
・廃棄物は大別して、(1)医療機関から発生するもの(緑色のドラム缶)(2)教育、研究機関から発生するもの(黄色のドラム缶)がある。
・集められたドラム缶は、日本アイソトープ協会の貯蔵施設で一時集積される。
(全国で8か所)
・処理は、日本原子力研究所東海研究所で行われていたが、廃棄量の増量にともない、医療RI廃棄物のみ、日本アイソトープ協会茅記念滝沢研究所で処理を行っている。そのため、緑色と黄色のドラム缶に分けている。(19核種以外は、黄色のドラム缶に入れる。)
・RI廃棄物の集荷量には、本/200Pドラム缶換算という単位を用いる。これは、高さ90cm、直径60cmくらいのガソリンスタンドで見かける普通のドラム缶に換算する。昨年一年間では、医療機関から発生したものが、約8000本、研究機関からは、約9000本である。そのうち、滝沢研究所で、約10000本の処理を行っている。このことにより、医療機関から発生する廃棄物があふれる心配はない。しかし、研究RI廃棄物は、発生9000本に対して東海研究所で、2500本しか処理できていない。このため、研究RI廃棄物については、日本アイソトープ協会新研究所を計画中である。しかし、その処分についての具体的な案はでていない。
※ニュースで話題となった六か所村の低レベル廃棄物について、すでに埋設されていると言っているが、それは原子力発電所からでる低レベル廃棄物であり、均一固化体のものだけが埋設できるのである。ゆくゆくは、RI廃棄物についても、そのような措置をとるようになると思われるが、医療廃棄物のような短半減期では、それほど厳重にする必要はないと考えられる。
3、集荷量推移と発生量予測
集荷量は、1960年から急激に加速度的に増加している。1970年度程度ならば、日本原子力研究所で出荷から処理まで十分に対応できると思われていたが医療の増大と共に1990年の2000本がピークとなり、少しずつではあるが減少してきている。しかし、2000本前後を推移することができる。
4、RI廃棄物の分類と容器の使い方
・可燃物と難燃物では料金に差がある
・可燃物…紙、布、木など(十分乾燥しておく)
・難燃物…ゴム、ポリ手袋、プラスチックなど(シリコン、テフロン、塩ビ製品、アルミ箔、鉛加工品は取り除く)
・ドラム缶にはポリ袋2〜3個を収納する
・医療用…緑色ドラム缶
・研究用…黄色ドラム缶
5、不燃物
・塩ビ手袋、ガラス製品、金属、など
・針は空缶等にまとめておく
・感染の恐れのあるものは滅菌しておく
・ガラスバイアル等の中の残液は抜く
・ドラム缶には、ポリ袋2〜3個を収納する
・医療用…緑色ドラム缶
・研究用…黄色ドラム
6、非圧縮性不燃物
不燃物には、圧縮処理を行うが、非圧縮性不燃物とはプレスにかからない物をいう。医療機関からはあまりでないが、土、砂、鉄骨、コンクリート、レンガ等である。これらは、厚手のビニールシートまたはポリ袋で包み、ドラム缶込の重量を秤量し天蓋に明記する。
7、フィルタ
フィルタには、通常型と焼却型があり、それぞれにヘパ、プレ、チャコールの3種類がある。現在は、廃棄物の減容のため焼却型フィルタの使用をお願いしている。集荷料金も安価である。
8、RI廃棄物の分類
・医療用19核種(医療機関で使用している核種)は次のとおり
32P、51Cr、57Co、59Fe、67Ga、75Se、81Rb−81mKr
85Sr、99Mo−99mTc、111In、123I、125I、131I、133Xe
197Hg、198Au、201Tl,203Hg
・医療RI廃棄物でも、医療用19核種以外は、黄色ドラム缶へ入れる
・スラッジは乾燥のうえ非圧縮性不燃物に分類
9、処理
・RI廃棄物の安定化および、減容のために焼却、圧縮などの処理をしている
・減容処理したRI廃棄物は、保管体として一時保管している
10、処理装置
・焼却炉で焼却し、排ガスはフィルタで浄化している
・圧縮機で三方向から油圧による圧縮をしている
・廃水は、蒸発濃縮と撹拌乾燥で処理している
・放射能濃度は、連続監視をしている
11、放射性廃棄物とは
放射性物質は、37Bq/K以上のものと法令で定規されている。しかし、廃棄は○○以下との数値がないため、汚染されたものすべてが廃棄物であるというのが、現在の法令上の解釈となる。(123I、99mTc等の短半減期核種も含む)気体、液体には濃度基準があり、一般に廃棄することができるが、固体に関してはすべてが放射性廃棄物となる。(管理区域から持ち出せる基準値4Bq/cmは、一般に廃棄できる基準値ではない。)
12、放射性廃棄物には
(1)核燃廃棄物
(2)原子炉廃棄物
(3)再処理廃棄物
 この中に、六か所村でさわがえている高レベル廃棄物が含まれる。一度原子炉で燃料を燃やしたあと、もう一度燃料を抽出するのが再処理である。このときの不純物が高レベル廃棄物となる。現在、この不純物に中性子等を照射することにより、短半減期核種あるいは、非放射性核種になりえないかを研究している。
(4)医療、研究RI廃棄物
 短半減期、難燃物が多い。研究用では、3H、51Cr、32P、123I等の核種が主である。
13、処分方法のイメージ
・六か所村における低レベル廃棄物均一固化体の処分方法
深さ8m、幅5mの立方体の部屋に200Pのドラム缶を約300本入れる。これを50cmのコンクリートでかため、固型化してしまう。さらに土で埋めてしまい、300年間管理をする。1段階から4段階の監視をおき、最終4段階を経たのち監視がとけ、一般の地面と同様と考える。
・RI廃棄物の処分の将来は、長半減期で線量をだす核種があるので、ほんの一部は六か所村と同様の処分となり、ほとんどは、ドラム缶に入れるか、そのまま地中に埋設する方法となるであろう。
(文責:川崎 雄一)
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