通算第258回 定例会記録
4.パソコンを用いたスライド作成 for Mzcintosh

東京女子医科大学病院 寺田 慎一郎氏

パーソナルコンピュータによるスライド作成

最近、パーソナルコンピュータ、いわゆるパソコンを用いて作成されたスライドが、学会発表でも多く見られるようになりました。
しかし、スライド作成には興味があるけれども、具体的にどのように作成するのかわからない、という方が結構いらっしゃると思います。
そこで、今回実際に行っているスライド作成について、お話しします。

従来のスライド作成手順と問題点

従来のスライド作成は、まず発表のあらまし、いわゆるシナリオを作ります。
文字スライドの場合、それに沿った手書きの図形やレタリング及びワープロの印字を、ベースとなる台紙に貼り合わせ、それをコピー台上でフィルム撮影します。
また、フィルム等の写真スライドは、組写真を作り、それに印を入れて直接シャーカステン上で撮影します。
使用機器や機材などは、そのまま被写体を撮影します。
しかし、この方法では写真の配置や文字の大きさ等のレイアウトを変更するのは容易ではなく、組写真を作るにも切り貼りに手間がかかり、外注すると早くても2〜3日かかるのが普通です。
また、一番困るのは苦労して作成したデータを他のスライドに生かしにくいことです。

スライド作成にパソコンを用いる利点と欠点

このような問題点を解決してくれるのが、パソコンを用いるスライド作成です。
パソコンを用いることによって、一旦入力されたデータを何度も使い、効率よくスライドを作ることが可能です。
利点としては、データの再利用が可能であること、スライド内容の修正が容易なこと、スライド以外の媒体へ出力可能(モニタ,OHP,紙)なことが挙げられますが、欠点としては、ある程度の初期投資が必要なこと、コンピュータ及びソフトに対する知識が必要であること、スライド作成のはじめから終わりまでを自分で行わなければならないことです。

Macintoshとは...

私がスライド作成に使っているパソコンは、アメリカアップル社のマッキントシュです。
10年以上前からGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)と呼ばれる直感的なインターフェースを採用し、基本操作が比較的簡単で統一されており、それぞれのソフト間のデータのやりとりが、「カット&ペースト」や共通のファイル形式で簡単に行えます。

Aldus Persuasionとは...

しかし、パソコンだけではスライドを作ることはできません。
スライド作成のソフトとしては、アルダス社のPersuasionがあげられます。
このソフトは、アウトラインモード、スライドモード、ノートモードがあり、お互いに関連しています。
シナリオの作成、スライド原稿の作成及び出力、または読み原稿や配布用資料の作成を含めた使い方まで、スライド作成に関することはこの一本で済んでしまいます。

スライド作成の手順と使用ソフト

まず、発表の筋道を組み立てや全体の構成を行うシナリオ作成には、ワープロソフトやPersuasionを用いて、直接打ち込んだり、他のテキストファイルを読み込み、並べ替えや推敲など編集して行います。
次に、素材を用意するのですが、解説図やシェーマ等の作成はドローソフトのCanvas、フィルムやハードコピー出力などの医用画像を取り込みや、修正にはPhotoshopを使用します。
また、数値計算や表を作成するにはExcelを、グラフ作成にはCricket Graph IIIを使用します。
これらの図形や表、グラフなどを、Persuasionで組み合わせ、スライド原稿を作成します。
Persuasionから書き出されたデータは、スライドレコーダーでフィルムに撮影します。
また、画面を直接撮影する方法でも撮ることができますが、画質が悪くなります。
それでは、これらの項目を具体例を挙げて紹介します。

シナリオ文章作成

ワープロソフトで大体のあらすじを作る方が多いと思いますが、その場合、色々なアイディアを箇条書きにすると後でまとめやすくなります。
ワープロで作成したテキストファイルの読み込んで、Persuasionのアウトラインモードで編集を行います。
アウトラインモードは、アウトラインプロセッサに似た文書編集機能があります。
アウトラインプロセッサとは、行単位でグループ化された階層構造を持つワープロであり、思いついたアイディアを箇条書きに書き出し、その順番を色々入れ替えや肉付けしながら文章を作っていきます。
この文章の先頭に付いているアイコンを操作することで、各段落を移動することができます。
アウトラインモードの文章は、すぐに「スライド」に反映することができます。

画像の取り込み

大体シナリオができたら、それに沿って素材を集めます。
エックス線フィルムや記録紙などのハードコピー出力を取り込むのに、Photoshopという画像処理ソフトで、プラグインと呼ばれる、機能を拡張するプログラムを使ってスキャナーを操作し、画像を取り込んでいます。
まず、プレスキャンでおおまかに画像を取り込み、それに範囲を指定し、希望する解像度で取り込みを行うことができます。
通常のハードコピーや写真の他、フィルムのような透過原稿は、透過原稿ユニットを用いて取り込んでいます。
この設定条件は、原稿の濃度や目的とする解像度などによって最適に調整する必要があります。
取り込んだ画像は、Persuasionで読み込み可能な「PICT」もしくは「TIFF」ファイルの形式で保存することが大切です。

図形作成

次に、Persuasionには簡単な図形が描ける図形ツールがありますが、複雑な解説図やシェーマを入れたい場合には、ドローソフトで描いてそれを読み込んでいます。
ドローソフトの使用法は今回は割愛させていただきますが、この場合も「PICT」ファイルの形式で書き出すことが大切です。

初期設定

素材が揃ったら、Persuasionを使ってスライド原稿を作成しますが、まず「ファイル」メニューで「ページ設定」でスライドのサイズを選択します。
これを忘れてスライド作成後に変更すると、出力範囲が若干変化してしまい、もう一度レイアウトの修正が必要となるので注意して下さい。
次に「環境設定」では、大きなPICTファイルやバックグランドの精細表示、新しく作成される元スライドの設定などがあり、あらかじめ設定しておくと後の変更点が少なくなります。

画像及び図形の読み込み

他のソフトで作成したデータをPersuasionに読み込むには、ファイルメニューより「読み込み」を選択し、図形及び画像があるフォルダを選択します。
そして、読み込みたい図形及び画像を選択し、「OK」をクリックします。
読み込んだ図形及び画像は、自分の配置したい位置にマウスで移動できます。
この四隅の小さい四角形の「ハンドル」を操作して大きさを決めます。
この時シフトキーを押しながらドラッグすると、縦横比を保ったまま拡大縮小できます。

文字の入力

スライド上に文字を配置するには2つの方法があり、直接文字ツールで書いていく方法と、アウトラインモードの文章をスライド上で反映させる方法があります。
スライドモードでテキストツールを使用するときは、この[A]のアイコンをクリックしてから、スライド上をクリックし、カーソルが変化してから文字をキー入力します。
アウトラインモードの文章をスライド上で反映させるには、マスタースライドという基本となる元スライドに、ホルダーという枠を作成し、そのマスタースライドを編集中のスライドに割り当てると、その中に自動的に文章が流し込まれます。
どちらも、一旦入力された文章は、フォントや文字サイズの変更等が可能です。
このようにレイアウトの編集を行い、スライドが完成します。

見やすいスライド作成のために

ここでスライド作成に関して幾つかの注意点があります。
文字のサイズは、その行数にもよりますが、タイトルは30ポイント、本文は18ポイント以上になることを目標にして下さい。
フォントは、出力環境によって若干異なりますが、私の施設ではTureTypeという出力される文字がきれいなフォントを使っています。全角文字は中ゴシックBBB又はリュウミンライト-KL、英字半角はHelvetica又はTimesフォントを指定します。フォントのデザインは、1つのスライドで統一する方が読みやすいと思います。
色は、バックグラウンド及び文字について設定可能ですが、バックグラウンドは暗めの色を、文字は明るめの色を用いることが読みやすいスライドを作る上では重要です。例えば、バックグラウンドを濃い青又は赤茶色の単色又はグラデーションで、文字を白又は黄色を用いるのがコントラストがついて、文字も読みやすいと思われます。しかし、文字を赤色にすると、赤というのは鮮やかな色ですが明るさはあまりないので、強調文字にするにはそのバックの部分を明るい黄色などを使う必要があります。

スライドレコーダへの出力

Persuasionで作成されたデータをスライドレコーダに出力するために、Persuasionのファイルメニューより「書き出し」を選び、名前を付けてPICT形式で書き出します。
スライドレコーダによって、それぞれ出力が異なると思いますが、私が使っているLFRの場合は、付属のソフトがPICT形式のデータを使用するため、この形式で保存しています。
この時、バックグラウンドを含める、色を減らさないを選択する必要があります。

スライド出力

書き出されたデータをフィルムに撮影するには、LFRの場合は、付属のソフトで撮影をコントロールします。
キュー作成のプログラムを起動し、PICT形式のデータを選び、縦置き横置きの設定及び代用フォントの確認の後、キューを保存します。
その後、別の画像を再構成するソフトで撮影を開始します。
私が使っているLFRは、IIcxにホストマシンを使っており、1枚当たりの出力時間は、文字だけのスライドだと3分、写真やグラデーションのバックグラウンドを使うと5、6分程度かかります。

スライド作成のすすめ

このPersuasionの使い方はフルに使ったものであり、シナリオからでなくても、スライドのキャンバス代わりに使って作成することも、かなり多く行っています。
何事もやってみることが一番良く理解できると思います。

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