通算第258回 定例会記録
3.核医学画像のパーソナルコンピュータでの利用

東京慈恵会医科大学附属柏病院放射線科  梅沢 千章氏

はじめに
現在、核医学画像データのパソコンへの転送は、途中に、フィルムなどが介在し、せっかくデジタルで収集されたデータをアナログ(フィルム等)に変換した後、再びスキャナーなどを使ってデジタルに戻すという余分な行程をへて、パソコンに入力されている、このことは、無駄な作業が増えるだけでなく、画像の奥行きデータを減らす原因となる。
近年、核医学のデーター処理装置は、各社独自のコンピューターを使わず、一般に流通しているWS(ワークステーション)などを使用するようになってきている。このことにより、WSに標準で装備されているコンピューター間データ通信用のハードウェアを利用できるようになり、簡便にしかも安く、他のパソコン等に画像データをアナログに変換することなく、デジタルのまま転送することが可能となった。
我々は、今回、日立製核医学データ処理装置RW3000(IBM製 WS RS/6000 機種 7012 型式 320H )とパソコン(Apple製 Macintosh PoweBook Duo270C+DuoDock )間のEther net接続による画像データ転送とパソコン上での転送画像データの表示方法を検討したので報告する。 さらに、今回の接続・転送については、ソフト・ハードともに個人レベルで実現が可能かどうかの経済性やパソコン間で電話回線を利用しての画像転送の実用性についても検討した。


計測値
画像データは、RW/6000内に蓄えらた画像を直接Macintoshに転送するのではなく、RW/6000内でDICOM3.0(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)の画像フォーマットに変換された後にMacintoshに転送されます。なお、マッキントッシュ内に転送されたデータは、奥行きの情報を16bitで保持しており、表示のさいにに256階調に変換されます。
今回の転送スピードについては、UNIXのマルチジョブ下で行われた物でありますが転送のため以外のジョブは、稼働しておらず、実際の業務下で行う場合は、若干の転送スピード低下が起こる可能性があります。
画像の転送スピードは以下の表の通りである

解像度(ピクセル) 容量(KB) 転送時間(sec)
256×256 136 6
512×512 519 12
1024×1024 2000 30
128×128×64 2000 60
電話回線による
MAC間画像転送 800 480

256×256や512×512はスポット撮影画像、1024×1024は全身シンチの画像、128×128×64はSPECTの3D表示です一番下のデータはMacintosh に標準でついているARA(Apple Remoto Acsess)による電話回線を利用したファイル転送にかかった時間です、このときのモデムの速度は、9600bpsです。


使用機器及びソフト
WSとパソコン間をEther netで接続するには、以下のようなソフトウェアやハードウェアが必要である。なお、( )内のものは、今回我々が使用したものである。

1.RW3000オプションソフト (File Conversion)
2.FTPツール/通信用ソフト(UNIX OS内のftp)
3.通信用ドライバー(MacTCP)
4.FTPツール/通信用ソフト(NCSA telnet・Fetch)
5.Ether netトランシーバー(10BASE-2)
6.ケーブル(BNCケーブル)
7.画像表示用ソフト(NIH Image 1.57)


説 明
1 はRW3000の画像フォーマットをACR-NEMA V3.0 - Digital Imaging and Communications in Medicin (DICOM)のフォーマットに変換するソフトでオプションとして日立メディコから供給される。
2 はWSに標準で装備されているUNIX OSに含まれ、TCP/IPネットワークでファイルの転送をコントロールするソフト、今回の場合RS6000に附属のUNIX OSに含まれるftp(前出のFTPは通信プロトコールの名称でありftpはソフトウェアの名称です)を利用した、このソフトの使用には、WSでUNIX OSのコマンドを操作する必要があり、実際に使用する場合は、日立メディコのサービス等に連絡された方がよいでしょう。
3 と4 は、ソフトウェアでありいずれもインターネットにパソコンを接続するのに使用するソフトの一部である。MacTCP(fig6)については、apple社が有償で配布しているが、近年インターネットのインフラ整備にともなって多くの雑誌に付録として添付されている。今回、通信ソフトは、2種類使用してみた。NCSA telnet と Fetch (fig7)は、どちらも米国の大学で開発され、パソコン通信等を利用して入手することができるPDSである。NCSA telnet はイリノイ大学で開発され、日本語版もありフリーウェア(無償)として、配布されている。Fetchは、ダートマス大学で開発され、シェアウェア(有償 $25)として配布されている。使用感は、ファイル転送のみでしか利用しなければFetch の方がかなり使いやすい。
5 と 6 については、ハードウェアとしてペアで販売されており 5,000円以下で入手が可能である。
7 はMac上に転送された、DICOMフォーマットの画像を表示するのに必要なソフトである。NIH Image 1.57は米国NIHで開発されフリーウェア(無償)として配布されている。上記のNCSA telenetやFetch 同様パソコン通信等で入手できる。

文章にすると難しいように思えるが、1 の File Conversionオプションソフトを購入済みであればその他のソフトやハードは、パソコン通信を利用したり、Mac専門店に行ければ1万円以内でそろってしまう物ばかりである、また、画像転送の操作もFetch等でやれば、最初に一回設定してしまえば以後は、Mac上で2、3回マウスをクリックするだけで画像を転送できる、ただし、7 の画像表示ソフトについては若干の学習が必要である。

まとめ
1.画像データを奥行16ビットのデジタルデータのままパソコンに転送し表示することが可能であった。
2.画像データの転送時間も十分に実用に耐える時間で可能である。
3.インターネット等のネットワークを利用すれば、遠隔地等へも迅速な画像データーの転送が可能である。
4.スタンドアローン同士のケーブル接続ならば十分安価に画像転送及び、利用が可能である。
5.また、社会的なインフラが十分整えば、遠隔地間の画像転送も、現在より安価で可能となる、ただし、この際には、セキュリティー等の問題も同時に考える必要があろう

参考文献
1)水越賢治:Macintosh Network STEP UP.株式会社アプライドナレッジ,1993
2)インターネットマガジン.株式会社インプレス,No1,1994.10
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