通算第258回 定例会記録
2.核医学施設におけるネットワーク
−−慈恵医大本院を例として−−

東京慈恵会医科大学附属病院放射線科  平瀬 清氏

近年、パソコンを用いてネットワークを構成し、検査や治療のデータの交換,保存を行うための試みがなされ、一部では実用化されている。
今回は、慈恵医大本院の核医学検査室における現況を中心にネットワークについて簡単に紹介をする。

1.はじめに、当施設の核医学検査室において、日常的に稼働しているパーソナルコンピュータを以下に列挙する。

マッキントッシュ: クアドラ950 3台
8100/80AV 1台
Ci改 1台
Si 1台
周 辺 機 器: 反射光型イメージスキャナ,反射透過光両用イメージスキャナ,フィルムスキャナVRX−8,35mmフィルムスキャナNikonクールスキャン,昇華型カラープリンタPHOTOMAKER,レーザページプリンタQMS860,スライドメーカLFR他
N E C: PC9801 VX,ES,ED

このうちMacクアドラ950の3台はSIEMENS社よりICONの商標において供給され、同社製の3検出器型シンチレーションカメラ等のデータ収集,処理,解析等を分担している。これは、従来ミニコンピュータあるいはワークステーションと呼ばれる高機能,高価格機種が利用され、パソコンは操作性の向上のためにごく一部分で利用されていたに過ぎない分野であった。しかし、現在ではパーソナルコンピュータと呼ばれる程度のコンピュータも、中央演算回路の高速化,大容量化によってSPECTデータ収集および再構成等といった非常に高度な作業を行うことが可能になってきている。
他のパソコンについては、それぞれが検査,薬剤,文書等の管理,検査データの取り込み,処理,検査レポート作成やスライド作成等に利用されている。これらのパソコンのうち、Apple社製の6台は全てEthernetケーブルを用いて接続されてテキストデータや画像ファイル等の共有をし、データ解析,ファイル管理や互換といった点で有機的に機能している。
核医学の分野におけるネットワークの最も重要な役割の一つに、検査によって得られた画像(データ)の管理をあげることができる。核医学の画像データのサイズは1枚あたりで64×64から256×2048マトリックス程度で、1検査あたりの画像枚数は数枚から数十枚まで多くの組み合わせがある。一般的には枚数が多い検査ではマトリックスサイズが小さいので、CTやMRI等と比べると比較的軽いデータ量ということができるであろう。


臨床核医学検査で参考にする画像のなかでは最も多用されているX線撮影フイルムは、アナログ画像でありコンピュータで保管,管理をするためにはフイルムスキャナーやビデオカメラ+ビデオキャプチャボード等を利用してデジタル化しなければならない。この方法を用いて臨床情報として必要なイメージクオリティを維持すると、画像一枚あたり5MB程度の容量が必要となり保管,転送時に大きな負荷となる。
また、CR,CT,MRI等のモダリティのデジタルデータを直接扱う際には数分の一のデータ容量で扱えるものの、コンピュータの機種ばかりでなくデータフォーマットが各々で異なり、統一性やフォーマット変換に必要なデータの公開さえも不十分であるという障壁があり、放射線科や院内のトータルネットワーク化を念頭においたダイレクトなシステムの構築は現在のところ無理な様である。
核医学部門だけに限定されたネットワークであれば、前述のようにそれほどシステムに負担がかかることはないが、それもコンピュータ同志を接続して実際にデータ通信を行う手段によっても効率が大きく変わってくる。マッキントッシュベースではLOCAL TALK,ETHERNET,APPLE REMOTE ACCESS といったものが広く使われているが、通信速度や接続可能台数に差があり、能力に応じた設備投資コストが必要にもなってくる。また、接続方法にも直列配置のバス型,ヒトデ配置のスター型や円形配置のリング型があり、各施設ごとに最も効率的な接続機器および方法を選択していく必要がある。
当施設では、汎用のパソコンベースの核医学データ処理コンピュータを導入したのでシステムの構築をメーカにあまり依存せずに行え、コストも秋葉原等での部品調達により低廉に抑えることが可能であった。
今後の検討課題としては、核医学以外の部門との接続を行った際の患者データに対するセキュリティ対策の点があげられる。
また、放射線科内のmini PACS化や院内統合PACS化が行われる際に、放射線科の内部だけでも各モダリティによるデータフォーマットがきわめて多岐にわたるので、一部だけ取り残されることのないようなシステムを構築する必要があると思われる。



文献
1)森本耕治:マッキントッシュを用いたテレラジオロジー.新医療238:127-130,1994
2)Stevens R,et al:Maximaizing the utilization and impact of medical educational software by designing for local area network(LAN) implementation.Proc-Annu-Symp-Compute-Appl-Med-Care.:781-785,1993
3)成田浩人、他:核医学検査での画像ネットワーク。MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY12:481-482,1994

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