通算第254回 定例会記録
教育講演
『各種心筋イメージング製剤と臨床』
虎の門病院 放射線科  丸野 広大先生
今回、ここでは虚血性心疾患と心筋症についてお話しさせていただく。
まず、血流については201TlCl、99mTc-MIBI、99mTc-Tetorofosminを、代謝についてはSPECTでは123I-BMIPP、PETからはパルミチン酸、FDG、酢酸を、また、交感神経では123I-MIBGについてお話しを進めたい。
<血流製剤>
診断する上で、心臓SPECTの解剖および冠状動脈の支配領域を把握し、かつ、冠状動脈(LAD,LCX,RCA)と心筋部位(前壁、中隔、側壁、下壁、後壁、心尖)の関係を理解することが必要である。
症例を提示します。この症例はLAD 6,9番に有意狭窄を認める例で、自転車エルゴメータ負荷試験で201TlCl投与後の画像では前壁、中隔に虚血が見られる。4時間後の画像では再分布している。この患者にCABG術を施行し、造影をしたところLAD 9番に少しの狭窄を認めた。CABG後、201TlCl負荷試験をしたところ、前壁、中隔の一部を除いて正常であったが、少しの狭窄を認めた部位は負荷後虚血を検出した。定性的評価のほかに、Bull's eye mapを用いた定量的評価もあり、Washout rateを用いることにより、虚血の検出が可能となる。
この定性的評価と定量的評価を用いることで、虚血性心疾患の診断能は向上する。たとえば、1枝病変の場合、100%の狭窄では診断率もほぼ100%になる。90%の狭窄でも90%以上の診断率が得られる。しかし、多枝病変では、たとえば95%,75%の狭窄があった場合、負荷をかけるとまず、95%狭窄で虚血が誘発されるので、75%狭窄が誘発する前に負荷を中止しなければならない。このあたりが運動負荷試験の限界ではないかと考える。
負荷法としては、運動負荷の他に薬物負荷ある。Dipyridamole, ATP, Adenosineなどが使われている。日本では、Adenosineが認められていないので、ATPが代用として使われている。特長として、Dipyridamoleは作用の有効半減期が長いので最大負荷時のタイミングがむずかしい。また、有効半減期が長いので胸痛などが誘発した場合、薬の投与を中止してもすぐには治まらない。場合によってはAminophyllineを投与しなければならない。ATPでは作用の有効半減期が短いので、副作用はDipyridamoleに比べ多いが薬の投与を中止することですぐに治まるなどの利点がある。以上、身体的に十分に運動ができない患者や虚血のSEVEREな患者は、薬物負荷の使用が有用である。
心筋の生存能力、Viabilityの評価には、201TlClの4時間像のほかに、24時間像の撮像やRe-injection法、201TlCl Rest のEarly - Delayed 法がある。非常にSevereな虚血がある場合、4時間後では十分に再分布しないことも多く、Viabilityの評価にはRe-injection法、201TlCl Rest のEarly - Delayed 法が用いられている。
次に、最近、MIBI, Tetrofosminの導入によりテクネ製剤の心筋イメージングが行われるようになった。この利点としてはキットの場合、緊急検査に用いることができるし、Intervention前にテクネ製剤をあらかじめ投与しておくことで、Intervention後に撮像することでIntervention前の情報を得ることができる。また、タリウムと異なり、大量投与できるので、First pass法により、Wall motion, EFも得ることができる。
また、エネルギーがタリウムより高いので下後壁の分布もclearであるが、反面、肝臓、胆嚢の取り込みが多いので、これらの原因によるAirtifactで下後壁が重なったり、偽性欠損を生ずることもあり、診断に注意を要する。
その他の利点として、Gated SPECTで心筋の収集ができるようになった。この方法は心筋血流と同時に心機能評価も得られる。最近では、Gated SPECTにより、%wall thickeningなどの心機能評価も可能となり、収縮能も把握できるようになったが、Pertial volume effectの影響もあり、診断に注意を要する。Pertial volume のファントム実験では心筋の壁厚は3cmまでは壁厚とカウントが直線的に上昇するが、3cm以上ではカウントは変化しない。このことから、正常な心筋の拡張、収縮は1〜2cmなのでPertial volume effectの問題が大きく関わってくる。拡張型心筋症などでは心筋壁厚があっても、Pertial volume effectの影響で血流を過少評価する可能性がある。
当院ではGated SPECTを用いて、心機能評価が行なえるPolar mapを開発した。これにより、Amplitude, ES count, ED counts, Peak ejection rate, Peak filling rate, Ejection timeなどの各種指標の機能をみることができる。
次は代謝について、ここでは、123I-BMIPPの説明をします。心筋のエネルギーは空腹時では脂肪酸のβ酸化で賄われているが、食後は主にブドウ等により行なわれている。運動中では乳酸も関わってくる。虚血時では酸素の供給がなくなるのでブドウ糖代謝に変わってくる。
労作性狭心症では123I-BMIPPではなかなか捕えることができないが、不安定狭心症はよく捕えることができる。
PTCA,CABG前で血流と123I-BMIPPが低下していて、PTCA,CABG後に血流と123I-BMIPPが徐々に回復している場合、壁運動の回復も良いが、術後の123I-BMIPPの回復がないまたは遅い場合は壁運動の回復が悪い。123I-BMIPPと壁運動の相関がなかなか良いことから、123I-BMIPPにより壁運動の予測ができる。
交感神経製剤である123I-MIBGについて説明します。
123I-MIBGは交感神経末端のノルアドレナリンと同じ挙動を示す。心内膜下梗塞では血流が正常であっても123I-MIBGでは欠損になる。すなわち、交感神経は血流よりも早く心筋異常を捕えられることができる。ただ、正常でも下後壁は欠損になる場合が多く、この領域での診断は難しい。
Non-Q MIにおいても、血流は正常であっても123I-MIBGでは欠損になる。CABG術などで術前に123I-MIBGで欠損になり、術後もなかなか回復しない場合が多い。特に術前異常の見られなかった下後壁に術後欠損が見られるパターンが多く、これは術中に何らかの手技によりこのようになったのかも知れないが原因はわからない。
術後に血流と123I-BMIPPは良くなっているが123I-MIBGだけが回復しないパターンが結構ある。
虚血の検出能からみると、血流と123I-MIBGは良いが123I-BMIPPが悪い。しかし、壁運動の評価からみると、血流と123I-MIBGに比べて123I-BMIPPの方が良い。
VTなどのフォーカスを捕えるのには123I-MIBGは有用である。その他、心筋症などは
Earlyのuptakeはあるが4時間後のWashout rateが早い。正常領域のWashout rateは10%前後であるが心筋症などでは50%ぐらいになる。糖尿病、アミロイドーシスなどもWashout rateが早いのも特徴的である。
(文責:小野口 昌久)
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