東京核医学技術研究会定例会記録 
                 開催日平成3年11月30日                        
         平成3年納会講演記録

講演2「これからの核医学に我々はどう対処すべきか」
           慶応義塾大学医学部放射線科助教授 久保 敦司先生
               司会 帝京大学溝口病院  喜多村道夫 君
 CT.MRIなどの新しいモダリティの出現による核医学検査内容の遍歴を示し他のモダリティに対する核医学の長所(機能検査、非侵襲性)、短所(低分解能)ついて述べられた。
過去においては、その短所を改善する努力(分解能の向上)がなされてきたが、最近では長所を生かす努力(新薬の開発)が行なわれている。
今後は短所の改善はもとより、尚一層長所を生かす努力をしていくことが核医学発展のためにしなければならないことであろうと提言された。
また、これから続々と臨床の場に登場するであろう新薬について我々(放射線科医師、技師)は薬の特長を良く理解し、使用にあたっては個々の症例に合わせた正しい選択を行なう必要性について述べられた。

講演内容

新薬の紹介
1.脳
 ECD
 ECD   :脳取込率5%、取込後の分布に変化なし
 HM-PAO:脳取込率5%、取込後の分布に変化なし
  病変の検出率同一程度。
 脳梗塞発症初期に起こるラグジャリ−パ−フュ−ジョンが、HM-PAOではホットにでるが、ECDでは見られない。
 虚血部位(欠損部位)の描出はHM-PAOよりECDが大きくコントラストが高いECDはIMPと同程度の描出力があり、Tc製剤であるため緊急対応もあり、HM-PAOのような標識後の不安定さもなく調剤が容易であるため有望視されている製剤である。
 近々SPECT用のレセプタ−脳シンチ製剤の治検がおこなわれるであろう。

PETの普及について
 サイクロトロンの設置に莫大な費用がかかるため私立大学病院や一般病院への普及は無理であろう。しかしポジトロン核種が供給されるようになれば普及する可能性あり。核種としてはジェネレ−タ供給でルビジュウム−82、M−18等が考えられる。半減期が2時間であるが供給体制が整えば可能であろう。
 今後はPETが一部の研究施設だけでなく臨床の場でSPECT並に使用される可能性があるためPETについても知識を高めていく必要がある。

2.心臓
 MIBI
  Tc製剤であるため投与量を多く出来ることから画質がよく,エネルギ−が適当であるため定量性にも優れている。
 再分布はない(Tlの4時間後の再分布像についての見直しが行なわれておりTlでも安静、負荷時を別々に施行する場合もある。)
 Tlとの相関90%程度であり、疾患によてはTlより高い正診率も得られている。
 MIBIは、一回循環での取込がTlに比べて低いため負荷時には投与後もTlより長い時間負荷をかけるようにしないと正しい血流分布を示さない場 合が有るので注意が必要である。
 
 デボロキシン
  取込率が高いが、ウォッシュアウトも速い。そのため高速で撮像できる装置であれば高画質の心筋像を得ることができる。虚血部分のウォッシュアウトは正常部分に比べ低く、虚血性心疾患に優れた検出力を持つことが期待できる。

 PP101M
  心筋への取込、ウォッシュアウトはMIBIに近い。
  バックグラウンドのウォッシュアウトはMIBIより速く、コントラストの良好な画質が期待出来る。

 抗ミオシン
 脂肪酸代謝

3.腫瘍
 モノクロナル抗体
  腫瘍については、他のモダリティによってRIより優れた情報量で診断でき、核医学でなければといったものは占拠性のガンでは無くなりつつある。
 しかし、血栓等びまん性疾患ではモノクロナル抗体製剤の威力があり、この方面に力を注ぐ必要がある。

 ストロンチュ−ム、サマリュ−ム−100等
  治療に応用(特に前立腺ガン:骨転移転移部分に高集積し、β線源であるため治療に適する)

今後の核医学は形態検査は他のモダリティにまかせて、トレ−サ−物質としての利点を最大限引き出すような方向に向けて進むべきである事を提言され講演を終えた。

もどる



Indexへ戻る