東京核技術研究会定例会記録 

          開催日平成3年6月25日
脳SPECT検査の諸問題
ラウンドテ−ブルヂスカッション
 司会 帝京大学病院 新尾 泰男 君

 前回定例会での教育講演「脳の生理」をうけて、脳検査の現状(SPECTを中心として)を検討するパネルディスカッションを行なった。

会員7名の話題提供により会員相互の意見交歓が行なわれた。

吸収補正について、必要ではあるが良好な補正が行なえるソフトがないことから各施設とも補正を行なっていないが、正しいSPECT像を得るためには吸収補正は必要であり、最良の吸収補正を研究し臨床に応用できるようにする必要がある。 また、再構成フィルタ−も収集デ−タのカウント、ノイズ量に合わせ適切なフィルタ−を選択して、正しい画像を提供出来るようにしなければならないといった意見が会員から出された。

話題提供内容



1.都立駒込病院 目崎 高志君

装置 :東芝製GCA 90 AE2(2検出器カメラ回転型SPECT装置) 
収集条件 :matorix size 64 64,角度サンプリング 4゚毎 90方向(earyでは1回転/8minのコンティニアスモ−ド
収集:IMP4往復、PAO 2往復)
コリメ−タ:パラレル(Tc:LEHR,IMP:LEGP)
再構成処理:均一補正 有り,吸収補正 なし,前処理フィルタ−3 3ノ−マルスム−ジング  
再構成フィルタ−
 IMP:Butterworth+ramp or chesre
 Tc :Shepp&Logan
 Tl :chesre

吸収補正については、chang法では頭頂部において過補正が起こるため補正なしとしている。各スライス毎に頭部サイズに応じた補正が行なえるプログラムの必要性を指摘した。その他Tl,99mTc−HSAによる脳腫瘍再発と放射線治療による脳壊死の鑑別検査についての紹介があった。



2.東京女子医科大学病院 久保 明美 君
装置 :東芝製GCA9300A(3検出器カメラ回転型SPECT装置)
収集条件 :matorix size 128 128,角度サンプリング 5゚毎 24方向 3検出器(PAO:60秒/方向(24分)IMP70秒/方向(30分))
コリメ−タ:ファンビ−ム
再構成処理:ファンビ−ム、パラレル変換:5゚stepヲ6゚step収集に変換
吸収補正 なし
前処理フィルタ−
 IMP:Butterworth(order 8、0.11sycle /pixel)
 PAO:Butterworth(order8,0.11cycle/pixe)

装置の概要の説明、特にQCプログラム(回転中心補正、均一性補正等)についての説明がおこなわれ、均一性補正については補正用ソ−スの均一性が 重要であり、この装置で使用する平板線原はプラスチックではなくガラス製でひずみが出ないものを使用しているとの紹介があった。
画像処理時間が長くかかる(フンビ−ム→パラレル変換等)のが難点である。



3.済生会中央病院 竹森 享 君
装置   :GE社製スタ−カム400ACT(シングルヘッドSPECT装置)
収集条件 :matorix sizu 64 64(1.6倍ズ−ム)
コリメ−タ:LEGP
角度サンプリング: 1view 30sec 64view
再構成処理:再構成フィルタ−Butterworth+ramp

カメラ回転型ですが肩に当たる部分をカットしてあるため回転半径を13cmと小さく出来ることが特徴である。IMPでのディレイ(4時間後)について診断上有意な情報である再分布が見られるため必要であるという意見が出された。



4.虎ノ門病院 斉藤 京子 君
装置   :島津製ヘッドト−ムセット050(リング型SPECT装置)
 装置の概略説明と脳SPECT像の供覧が行なわれた。ヘッドト−ムは回転型に比べ感度が4〜5倍高いためHRコリメ−タを使用することにより横断面ではFWHM 9.5mmと解像力が高い、しかし体軸方向では解像力が落ち回転型と同程度になってしまう。
 チルト機能がないため断層面をOMに平行に出来ない場合には、体軸方向の解像力の悪さから再構成後にOMに平行に再構成させると画質が落ちる。
 収拾方法はステップとコンティニアスモ−ドがあり、双方に有意な差がないため収集時間を短くできるコンティニアスモ−ドを使用している。
 IMPの再分布については有意な所見もあるため必要であり early 5〜30分後、delay 4時間後に撮像している。


5.日本大学板橋病院 奥野 光男君
 吸収補正、及びデェジタルフィルタ−の違いによる再構成画像の変化を紹介吸収補正については正確なRI分布を再現するために、正しい補正をする必要性を訴えた。
 フィルタ−については、いろいろなフィルタ−を使用した再構成画像を供 覧し、オリジナルの情報量を損なわず、画像を創りだすことなくRI分布を忠実に表現するものを選んで使用する必要性を説いた。
 フィルタ−は、収集カウントにより使用フィルタ−を代えることが必要であり、適性なフィルタ−を決めて臨床に使用しなければならない。
 フィルタ−決定にあたってはピクセルサイズによっても変化するので、まずピクセルサイズを決定してからフィルタ−を決定する。

 司会者からもフィルタ−の選択は重要なことであり、収集デ−タのパワ− スペクトルからフィルタ−設定する方法が良いが、大型コンピュタ−が必要になり、実用的でないため汎用のフィルタ−を使用しなければならない事が 多いため、フィルタ−の選択は慎重にしなければならないとの意見が出された。


6.中林 忍 君 自治医大大宮医療センタ−
装置   :東芝製GCA901A(シングルヘッドカメラ回転型SPECT装置)
収集方法 :matorix size 64 64 (1.5倍収集),角度サンプリング6゚、60方向、20秒/方向
前処理フィルタ−:butterworth
再構成フィルタ−:ramp
吸収補正 :なし
おもに局所脳血流量測定について述べた。
 動脈採採血はキエル法に従って行い、3時間30分後のdelay撮影時に金沢大学の松田法に従って静脈採血法を行い比較している。
 オクタノ−ル抽出は全例に施行
 動脈法、静脈法双方を施行した例では動脈法では安定した値が得られるが、静脈法では不安定であるとし、他施設での成績はどうか会場に問いかけを行なった。


7.東京大学病院 飯田 恭人君
 PETを使用して、負荷時の脳血流がどのように変化するかを検査した結果を紹介した。PET撮像時に開眼、座位、音を聴かせるといた負荷をかけたPET像を供覧し、それぞれの領域の血流が増加することを紹介した。
 このことから、脳血流検査のRI投与は閉眼、臥位、耳栓使用にて投与するのが最適であると述べた。


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