会長挨拶

第42回日本胆道閉鎖症研究会開催にあたって

第42回日本胆道閉鎖症研究会会長
岩中 督(埼玉県立小児医療センター 病院長)

この度、第42回日本胆道閉鎖症研究会を開催させていただくことになりました。伝統ある本研究会を主催させていただく栄誉をいただき、関係各位に心より御礼申し上げます。前任地の東京大学小児外科在職中に本研究会の次期会長を拝命し、教室員と本研究会の準備を進めて参りましたが、準備途上で諸般の事情により埼玉県立小児医療センターに異動しましたため、連携不足でいろいろなご迷惑をおかけしていることと思います。お詫び申し上げます。

今回の研究会の主題は、『胆道閉鎖症:診断と治療の標準化を目指して』といたしました。厚生労働科学研究(主任研究者:仁尾正記東北大学教授)の一環として、現在精力的に準備が進んでいる胆道閉鎖症の診療ガイドラインの概要が固まってきましたので、本研究会の特別企画としてこのガイドラインを採り上げました。

一方、診療の現場においては、標準的な診断法や治療法では対応できない症例も少なくありません。これらの稀な症例をガイドラインと対比して議論していただくため、要望演題として『標準的な対応が困難な症例』として症例報告をしていただきたい、と思っています。

また、私自身、ライフワークとして、小児内視鏡外科の発展と普及に努めて参りました。15年ほど前には、食道閉鎖症や横隔膜ヘルニアはそのうち内視鏡手術に移行するだろう、と思っていましたが、欧米で始まった腹腔鏡下葛西手術の成績から、同手術は腹腔鏡では不可能、乳児用の支援ロボットが開発されるまで待つしかない、と考えていました。ところが本邦の一部の施設で、腹腔鏡下葛西手術の良好な短期成績が発表され、あらためての検証が必要な時期が来ています。今回の研究会では、もう一つの要望演題として、『腹腔鏡下葛西手術の現状と課題』を採り上げるとともに、開腹葛西手術と腹腔鏡下葛西手術のスポンサードディベートを企画いたしました。大いに楽しんでいただきたいと思います。

本研究会は歴史を重ねてきましたが、毎年新たな知見が報告されます。その貴重な経験や知識を共有するためにも、疫学、病態、診断や治療、合併症や肝移植などの一般演題も大いにお届けください。

例年、10月、11月には多くの学会・研究会が開催され、のんびりできない週末が続きますが、銀杏が金色に輝く東京大学構内の散策で、つかの間の安らぎを楽しんでいただければと存じます。晩秋の東京で皆様のお越しをお待ちしています。