天動説の世界

Evidence-based medicineなんて,何を今更と,良識ある人々は思うだろう.しかし,”現代医学”で,診断や治療がすべて客観的な証拠に基づいていると思ったら大間違いである.一般に当たり前だと思われている治療や診断ほど,何の根拠もない.例を挙げればきりがない.

うがいと手洗いが風邪の予防になる(日本古来の信仰,あるいは迷信)

エックス線写真による結核検診(これは世界中で広く信じられているが迷信である.嘘じゃない.ランセットにそう書いてある.)

BCG接種は結核予防に有効である(乳児期早期の重症TB感染症に対するBCGの効果は確立しているが,それ以外の場合は,国によって信仰の程度が極端に違う.ちなみにインドでの15年間のfollow up studyではBCGは無効と出た.15-year follow-up shows BCG vaccine is not effective in India. Lancet 1999;354:1617).成人におけるBCG接種の効果は確認されていないばかりか,BCG接種効果の過信を招いている.現在では、小・中学生でのBCG再接種でさえ、存続廃止について議論が始まっている.→”最近の結核問題とその背景”

塩分制限が高血圧治療になる(英国では信仰の対象ではない)

いずれも信奉者にとっては金科玉条であり,Evidence以前の,信仰である.当たり前だから根拠なんぞ一切不要だと思い込んでいるのだ.しかし異教徒にとってはとんでもない邪宗,迷信である.そう,医学は未だに天動説の世界,十字軍以前の世界なのだ.

Evidence-based medicineが宗教改革,三十年戦争の引き金になるかどうか,見物だが,”うがい”が本当に風邪の予防になるかどうか,日本の研究チームがN Engl J Medに論文を載せるようにならない限り,宗教改革とは言えないだろう.

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