医者と畳は新しいほど良い
そりゃそうだろう.歳を食った医者ほどそう思うはずだ.記銘力障害さえなければ,当たるべからざる勢いだったあの頃を思い出せるはずだ.今の自分とあの頃の自分を比べたら,今の自分の方がずっと惨めに見えるに違いない.
『最新の知識』の習得だと?ふん,馬鹿馬鹿しい.そんなものは無関係だ.なぜなら,トップジャーナルには誇大広告しか載っていないからだ.NEJMやランセットにこまめに目を通すような暇人にろくな奴はいない.病棟の間を飛び回っていた時,「トップジャーナル」とやらを読んでいる暇なんかなかったはずだ.それよりもひたすら患者さんのところに足繁く通ったはずだ.
トップジャーナルに論文を載せる偉い先生は自分の受け持ち患者がどうなるかなんて,知りゃしない.自分の受け持ち患者の具合が悪くなって責任を取ってくれるわけでもない.患者の訴えを聞き,脈を取り,看護師の報告に敏感で,指導医と対等に議論し,カンファレンスで要領を得たプレゼンができる.そんな自分こそが患者を助け,そして自分を助ける.そう信じて疑わなかった自分を忘れていなければ,この論文の意味は自明である.
Physician age and outcomes in elderly patients in hospital in the US: observational study. BMJ 2017;357:j1797
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若手医師の方が、ベテラン医師より患者の死亡率低く…米大分析 読売新聞 2017年5月30日
肺炎や心不全などで緊急入院した高齢患者の死亡率は、若手の内科医が診たほうが低い、とする分析結果を米ハーバード大学の津川友介研究員(医療政策)らが発表した。
若手が、教育や研修で得た最新の知識や考え方を診療に用いているためと研究チームはみている。成果は英医学誌に掲載された。
研究チームは、全米の病院に2011~14年に入院した65歳以上の延べ約74万人の診療記録を分析。研修医を除く内科医約1万9000人について、年齢で治療成績に差があるかを調べた。患者の年齢、重症度などの要素を調整し、比較できるようにした。
その結果、入院後30日以内の死亡率は、39歳以下の医師の患者では10・8%だったが、40歳代では11・1%、50歳代では11・3%と上がり、60歳以上では12・1%と高くなった。一方、多くの患者を診る医師に絞ると年齢による差はなく、全体の死亡率(11・1%)より低かった。
ベテランの医師の治療を希望する患者は少なくない。今回の成果が他の診療科や日本に当てはまるかどうかは検証が必要だが、津川研究員は「若手の内科医をもっと信頼していいと考えられる。高齢の医師を受診する際は治療実績の情報を集めるとよいだろう」と話す。
医療制度に詳しい慶応大学の後藤 励れい 准教授(医療経済学)の話「ベテランは経験を積むことで技能はあるが、『最新の知識』の習得という側面では遅れているのではないかという視点を踏まえて検討した画期的な成果。国内でも検証を行う価値はある」
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