シルガード9は何のため?
-またもや「やらず・ぶったくり」のHPVワクチン-
大学同級から問い合わせをもらった。
> さて、今春4月から定期接種に使われる9価シルガード9は、従来の2価のサーバリックスや4価ガーダシルと比較して、副反応はどんなもんでしょうか?結構、派手に腫れるもので、本人はもちろん、親まで心配して、よく聞かれるんですけど。 ご存知でしたら、教えて下さい。
その回答を同級のメーリングリストに投稿した
上記のお問い合わせをいただきましたので、私自身が勉強した結果を共有するために皆さんにもお送りします。問題は非常に複雑なことがわかりましたので、まず要点だけを列挙しておきます。お忙しい方は下記の要約だけどうぞ
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●2価のサーバリックスは子宮頸がんの原因となる高リスク型HPV、中でも多数を占める16 、18型をカバー、4価ガーダシルは16、18型に加え、尖圭コンジローマの原因となる低リスク型HPVである6 、11 型をカバー。
●シルガード9がカバーする、6、11,16,18以外の5型の中には、子宮頸がんの原因となる31型等も含まれている。
●シルガード9がガーダシルを有意に上回る予防効果を示すのは、子宮頸部上皮内癌のみであり、浸潤性の子宮頸がんについては有意差はない。(わかりやすい日本語の図)
●一方でHPVワクチンは子宮頸がんリスクをゼロにするものではないので、ワクチンを受けてもワクチンを受けていない人と同様に子宮頸がん検診は必要とされている。
●副作用:MSDが出しているデータでも、ガーダシルに比べてシルガード9の方が注射部位の副作用・疼痛の頻度がより高くなっている。
●以上より敢えてシルガード9を接種する意義が私には全く見えてこない。子宮頸がんのことを心配するのだったらサーバリックスで十分と個人的には考える。
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以下、時間のある方向け:
実は私自身は(たまたまワクチン接種を行わない職、職場に居続けているため)HPVワクチンを希望者に接種した経験がありません。私が知る限り、HPVワ
クチンの実情を一番的確に説明しているのが、敬愛する谷口 恭先生の記事です。この記事はシルガード9が世の中に出る前に書かれたものですが、問題の核心
部分は変わっていません。
HPVワクチン、僕が現状の定期接種を勧めない事情(日経メディカル 2021/2/24)
この谷口先生の記事を踏まえて、まず有効性について:子宮頸がんのことだけ考えれば、16型と18型をカバーする2価のサーバリックスで十分と私は考えます。その理由は以下の通りです。
1.子宮頸がんの原因となる高リスク型HPVは16 、18型が圧倒的に多い。子宮頸がんのことだけ考えればサーバリックスはガーダシル(16 、18型に加え、尖圭コンジローマの原因となる低リスク型HPVである6 、11型をカバー)と同等。
2.シルガード9とガーダシルの有効性を比較した研究によれば、シルガード9がガーダシルに比べて有意に予防効果を示すのは子宮頸部上皮内癌のみであり、浸潤性の子宮頸がんについては有意差はない。(わかりやすい日本語の図)(原論文の図)
Didier
R, et al. Potential Impact of a Nonavalent HPV Vaccine on the
Occurrence of HPV-related Diseases in France. BMC Public Health
2015;15: 453.
【海外9価HPVワクチン特集論文(2)】フランスにおける9価HPVワクチンによる潜在的な疾患発生抑制効果 ←上記論文の日本語解説
●上皮内癌では示された9価の優位性が浸潤性の子宮頸がんについては示されなかった理由として、個人的には下記の因子の組み合わせを考えました。
-9価でのみカバーされる型のものは上皮内癌止まりで浸潤性にはなりにくい
-9価でのみカバーされる型のものは16 、18型に比べてそもそもマイナーな存在だから差が出にくい
-検診の影響:上皮内癌が検診で見つかれば以後は治療されて浸潤癌にはならないからその影響が反映される
●「HPVワクチンを受けても検診は必要」→HPVワクチンの限界を市民に丸投げしているだけ
感染症専門家の先生方はコロナワクチンを打ってもマスク・手洗いは必要とおっしゃっています。それと全く同様に、HPVワクチンを受けても受けていない人と同様に子宮頸がん検診は必要とおっしゃっています。
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WHOは、検診とワクチンを組み合わせることにより、それぞれの欠点を相互に補填しあうことで、より効果的な子宮頸がんの予防を目指しています。90%の
女子へのHPVワクチン接種、70%の女性が適切に生涯で少なくとも2回の検診を受け得ること、90%の子宮頸部の病気になった女性が適切なケアを受ける
ことで、今世紀中に子宮頸がんは排除が可能であるとのシミュレーションがなされています。(『子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識と正しい理解
のために』日本産科婦人科学会)
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この文章からようやくワクチンの限界が読み取れるのですが、明確な数字で示されていません。本来ならば検診がきちんと行われている我が国の社会環境の中で
医療技術評価(HTA; Health technology assessment
)を行い正々堂々とその必要性を説くべきでしょう。エストニアでできて日本でできないはずがありません。(Cost-effectiveness
of HPV vaccination in the context of high cervical cancer incidence and
low screening coverage. Vaccine 2017;35:6329-6335)
なのに「ワクチンを受ければ受けない場合に比べて検診の回数を少なくできます/間隔を長くできます」ぐらいエビデンスで示すこともしない。それすらもサボタージュして、「ワクチンを受けろ。受けても検診の回数は減らないけど、それでも打て!!」。「やらず・ぶったくり」そのものです。ワクチンを受けるメリットを実感できなければ誰も進んでワクチンを受けようとはしないでしょう。わかりきった話です。→子宮癌検診間隔は5年でいい
●同じワクチンで3回の接種を完了すること:下記は産婦人科学会のHPから
既にHPVワクチン(2価もしくは4価)接種後に9価HPVワクチンの追
加接種をすることについては、重篤な副反応の報告はないものの、WHOや米国予防接種諮問委員会(ACIP)及び米国疾病予防管理センター(CDC)で
は、2価もしくは4価でHPVワクチン接種が終了している場合の追加接種については、すでに一番頻度の多いHPV16型と18型に対する免疫は獲得されて
おり、5つのタイプが追加になることの効果は限定的であることと、異なる種類のワクチンを接種した場合の有効性と安全性のデータは限られていることから推
奨はされていません。しかしながら2価もしくは4価ワクチン接種が完了していない場合については、なるべく同一薬で接種を完了することが望ましいものの、
9価に切り替えて完了することも可能とも追記されています。また日本の9価HPVワクチンの添付文章でも、異なる種類のワクチンを交互接種した場合の有効
性、安全性については十分なデータがないため、原則は同じワクチンで3回の接種を完了することとされています。
●副作用について::MSDが出しているデータでも、ガーダシルに比べてシルガード9の方が注射部位の副作用・疼痛の頻度がより高くなっています。
●ワクチン真理教団の教義:ISRRという、まやかし&責任逃れ。
予防接種ストレス関連反応(Immunization Stress-Related Response: ISRR)
●HPVワクチン接種後自己免疫性脳炎という真実
→子宮癌検診間隔は5年でいい
→新コロバブルの物語
→表紙へ