目次
神経梅毒がヘルペス脳炎にそっくりな画像を呈した例
またもやロシアンルーレット
抗リンパ球抗体による多発性硬化症の治療でGraves病に
マルファン症候群の診断にDural ectasiaが有用
成人の麻疹感染による神経障害と腎不全
急速に進行する痴呆を呈した68才女性
65才男性,結腸癌治療後の高次機能障害と歩行障害
パニック発作と複視を呈したチーズ好きの女性
笑気と脊髄障害
僧帽弁逸脱:思ったほどではない
抗てんかん薬と重症の中毒性皮膚症状
ドパミンアゴニストによる睡眠発作
鏡を使った片麻痺のリハ
失読に小脳が関与している
マグネシウム欠乏によるWernicke脳症
やはりL-dopaは早期から投与すべし
脳梗塞に対するtPA:1年後の追跡では有効
精巣癌とparaneoplastic encephalitis
Broca失語はない
脳梗塞に対するtPA;ECASS IIでは無効と出た
帯状ヘルペス後の神経痛予防にamitriptylineとacyclovirの併用が有効
パーキンソン病患者で黒質への高周波刺激でうつ病が起こった
バルプロ酸で肝性昏睡を起こし,死亡したOTC欠損症
パーキンソン病における神経組織移植の現況
プリオンと封入体筋炎
Dementia pugilistica
悪性リンパ腫と脊髄病変
パーキンソン病の治療による精神症状にclozapineが有効
アルコール離断による痙攣発作にロラゼパムが有効
未破裂の脳動脈瘤:手術に疑問符
眼底鏡一本勝負
未熟な果実による致死性脳症
secondary progressive MSとIFN-beta
いびきと痴呆
バビンスキ徴候
筋炎に類似した糖尿病性の筋梗塞
原因不明の劇症型のウイルス性脳炎
未破裂の動脈瘤をどうするか
MELASの最近の知識
髄内病変の鑑別
てんかん重積状態に対するロラゼパム
進行期のパーキンソン病における視床下核の電気刺激
LovastatinによるAdrenoleukodystrophyの治療
急性の眩暈発作
多発性脳神経麻痺:Wegener肉芽腫
パーキンソン病の総説
CT, MRIでRing Enhancementを伴う病変の鑑別診断
痙攣発作の総説
奇妙な筋膜炎がフランスで増えている
ジメチル水銀暴露事故で遅発性の小脳障害を呈して化学者が死亡
グロボイド細胞性白質ジストロフィーには造血幹細胞移植が有効
慢性肝疾患での脳浮腫
脳の画像の総説
脊髄病変の鑑別診断
多発性硬化症における軸索の障害
パーキンソン症候群を伴う痴呆の症例の診断に困ったら
アルツハイマー病の診断におけるアポリポ蛋白E遺伝子の有用性
溶かせばいいってもんじゃない
神経内科医の下す診断の社会性
馬尾症候群を呈した67才女性
プリオン病の総説
痴呆の診断;あなたにも責任があります
多発性硬化症の治療の総説
うまい話あります:側頭動脈炎
脳梗塞急性期治療におけるTissue Plasminogen Activatorの位置づけ
肺水腫と著明な脳浮腫で全経過9日で死亡した49才女性
進行期のパーキンソン病の寡動と固縮に対する後腹側内側淡蒼球切除術
合衆国における髄膜炎の変遷
悪性腫瘍に伴う神経障害の鑑別診断
糖尿病性の筋壊死
成人のリステリア髄膜炎
錐体外路症状を伴う痴呆
Hepatic Encephalopathy
Cerebral Venous Thrombosis
paraneoplastic cerebellar degeneration
Refsum病の欠損酵素
東部ウマ脳炎のCT, MRI
Roger Denays and others. A 51-year-old woman with disorientation and amnesia. Lancet 1999; 354: 1786
脳血管造影の際の塞栓:四人に一人は起こっているっていうんだ.無症候性の塞栓だけどね.Silent embolismをどうやって評価するかって?この著者らは血管造影の前後でdiffusion-weighted MRIを使った.91人の患者で,100回血管造影を行い,23人の患者に合計42個の塞栓と思われる病巣を見いだした.実際に神経学的異常を示した患者はいなかった.
また一つロシアンルーレットというわけだ.血管造影の説明書,承諾書にを書き直さなくちゃ.”血管造影で四人に一人は脳梗塞は起きますけど,症状は出ません”てか?やれやれ気が重い.
Martin Bendszus and others. Silent embolism in diagnostic cerebral angiography and neurointerventional procedures: a prospective study. Lancet 1999; 354: 1594-97
→GO TOP
抗リンパ球抗体による多発性硬化症の治療でGraves病に
anti-CD52 monoclonal antiboty (Campath-1H)でリンパ球を叩き,MSがよくなったはいいのだが,なんと1/3の患者に抗thyrotropin 受容体抗体と甲状腺機能亢進症がおこったという論文.これでGraves病の病態解明が進歩するか?
Alasdair J Coles and others. Pulsed monoclonal antibody treatment and autoimmune thyroid disease in multiple sclerosisLancet 1995; 354: 1691-95
→GO TOP
マルファン症候群の診断にDural ectasiaが有用
80例のマルファン症候群のうち,76例に腰仙髄レベルでMRI上でdural ectasiaが見られたが,対照の100例では一例もなかったとのこと.もし本当だとすれば,診断が容易になる.
Rossella Fattori, Christoph A Nienaber, Benedetta Descovich, et al. Importance of dural ectasia in phenotypic assessment of Marfan's syndrome. Lancet 1999;354:910
→GO TOP
成人の麻疹感染による神経障害と腎不全
基礎疾患のない成人に発疹を伴わず,間質性腎炎とギランバレー症候群に類似した神経症状が起きた.
N S Wairagkar, B V Gandhi, S M Katrak, et al. Acute renal failure with neurological involvement in adults associated with measles virus isolation. Lancet1999;354:992
→GO TOP
急速に進行する痴呆を呈した68才女性
L. A. Shinobu and M. P. FroschWeekly Clinicopathological Exercises:
Case 28-1999: A 68-Year-Old Woman with Rapidly Progressive Dementia and
a Gait Disorder.NEJM 1999;341:901-908.これもおなじみMGHの症例検討シリーズ.MRIの画像に注目.
→GO TOP
65才男性,結腸癌治療後の高次機能障害と歩行障害
おなじみMGHの症例検討シリーズ.病変は大脳皮質下白質に多発し,T1で高信号を呈する病変.さて何を考えますか?
L. D. Recht and J. M. Primavera. CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL. Weekly Clinicopathological Exercises: Case 24-1999: Neurologic Disorder in a 65-Year-Old Man after Treatment of Colon Cancer. N Engl J Med 1999;341:512-519
→GO TOP
パニック発作と複視を呈したチーズ好きの女性
Thomas Vogt, Paul Hasler. Case report - A woman with panic attacks
and double vision who liked cheese. Lancet 1999;3354:300
ブルセラ症のケースレポートだが,この病気は他のいろいろな病気と区別がつけにくいことがわかる.脳血管炎,SLE,神経ベーチェット,多発性硬化症といった自己免疫疾患にともなう神経症状のようにも見えるし,ライム病,糞線虫症(繰り返す細菌性髄膜炎)といった特異な病原体の感染症にも見える.テトラサイクリンやリファンピシンといった抗生剤が奏功するので,是非とも覚えておきたい疾患だ.
→GO TOP
笑気による神経障害
笑気麻酔のあと,痙性対麻痺になった症例.笑気は,ビタミンB12の活性化型であるコバラミンを不可逆性に不活性化してしまう.コバラミンはmethionine-synthaseの重要な補酵素で,methionine-synthaseの活性がなくなる結果,脱髄が起こり,亜急性連合性脊髄変性症や脳症が起こる.
Lee P and others. Spastic parapresis after anaesthesia. Lancet 1999;353:554
→GO TOP
僧帽弁逸脱:思ったほどではない
D. Gilon and Others.Lack of Evidence of an Association between Mitral-Valve
Prolapse and Stroke in Young Patients. N Engl J Med 1999;341:8-13.
僧帽弁逸脱の診断基準は変化していて,現行の断層心エコーによる三次元分析に基づいた診断基準ではその頻度はこれまで考えられていたよりもずっと低くなり,診断の特異性が高まっている.現行の診断基準のもとでは,僧帽弁逸脱は脳梗塞の危険因子にはならないと考えられる.
→GO TOP
抗てんかん薬と重症の中毒性皮膚症状
Rzany B and others. Risk of Steven-Johnson syndrome and toxic epidermal
necrolysis during first weeks of antiepileptic therapy: a case-control
study. Lancet 1999;2190-92194.
フェニトイン,フェノバルビタール,カルバマゼピン及びlamotrigineについては,使用開始から8週間はSteven-Johnson syndrome やtoxic epidermal necrolysisといった重症の中毒性皮膚症状に注意をしなくてはならない.逆に言えば,使用から8週間以上たてば,抗てんかん薬による中毒性皮膚症状の危険性は非常に少なくなる.バルプロ酸は他の抗てんかん薬に比較して中毒性皮膚症状の危険性は少ない.
→GO TOP
ドパミンアゴニストによる睡眠発作
Senior K. Waking up to a new side effect of dopamine agonists. Lancet 1999:353:2043.
Neurology 1999;52:1908-10の論文が紹介されている.運転中の睡眠発作で交通事故を起こしたパーキンソン患者9人中8人がpramipexoleを服用していた.
→GO TOP
鏡を使った片麻痺のリハ
患者の両手の間に,健側の手が写るように大きな鏡を置き,患者はその鏡に映った自分の健側の手の動きを見ながら患側の手を動かすように訓練を行うと,鏡の代わりにただのプラスチックシートを使った場合(対照)に比べて有意に機能が改善する.
Altschuler EL and others. Rehabilitaion of hemiparesis after stroke with a mirror. Lancet 1999;353:2035-6.
→GO TOP
失読に小脳が関与している
Nicolson RI and others. Association of abnormal cerebellar activation with motor learning difficulties in dyslexic adults. Lancet 1999;353:1662-1667.
→GO TOP
マグネシウム欠乏によるWernicke脳症
J McLean and S Manchip. Wernicke's encephalopathy induced by magnesium deplesion. Lancet 1999;353:1768.
症例は85才女性.経口摂取不良と慢性心不全のたまに服用していたfurosemideによりマグネシウム欠乏となった.マグネシウムはthiamineを活性化型である二りん酸あるいは三りん酸化する酵素の補酵素であり,マグネシウム欠乏は活性化型のthiamine欠乏を起こす可能性がある.このような場合にはthiamineとともにマグネシウムも補給しなければ,Wernicke脳症はよくならない.
マグネシウム欠乏を引き起こす原因は様々で,吸収不良症候群,利尿剤,アミノ配糖体を中心とする腎排泄性の抗生物質,アルコール,甲状腺疾患,アルドステロン症,妊娠後期,糖尿病性昏睡の際のインスリン治療,急性膵炎などがあげられる.マグネシウムはルーチンの血液生化学では項目に入っていないが,意識障害の際には必ず測定しておくべきだろう.
→GO TOP
やはりL-dopaは早期から投与すべし
Gwinn-Hardy K and others. L-dopa slows the progeression of familial parkinsonism. Lancet 1999;353:1850-51.
→GO TOP
脳梗塞に対するtPA:NIDSでの1年後の追跡では有効
T. G. Kwiatkowski and Others. Effects of Tissue Plasminogen Activator for Acute Ischemic Stroke at One Year. N Engl J Med 1999;340:1781-7.
あっちでは効いた,こっちでは効かないと,評価が一定しないtPAだが,NIDSでの一年後のフォローアップでは,1年後の転帰でもtPA使用群の方が有意に良好だったとのこと.
→GO TOP
精巣癌とparaneoplastic encephalitis
Paraneoplastic Limbic and Brain-Stem Encephalitisというと,肺小細胞癌,抗Hu抗体を思い出すのだが,精巣癌に伴うParaneoplastic
Limbic and Brain-Stem Encephalitisでは,神経抗体はMa2蛋白と呼ばれ,正常の脳組織と患者の精巣腫瘍組織で発現されていた.
R. Voltz and Others. A Serologic Marker of Paraneoplastic Limbic and Brain-Stem Encephalitis in Patients with Testicular Cancer. N Engl J Med 1999;340:1788-95.
→GO TOP
Broca失語はない
Pierre Marieの時代から,Brocaの領域は運動性失語と関係がないと言われてきたが,やはりそのようだ.Wiseらは病変ではなく,functional
MRIから,左前部島回,外側運動前回,及び基底核が重要なことを示した.これから教科書が書き換えられていくのだろうか.
Wise RJS. and others. Brain regions involved in articulation. Lancet. 353(9158):1057-1061.
The formulation of an articulatory plan is a function of the left anterior insula and lateral premotor cortex and not of Broca's area. The left basal ganglia seem to be dominant for speech, although the axial muscles involved receive their motor output from both cerebral hemispheres.
→GO TOP
脳梗塞に対するtPA:ECASS IIでは無効と出た
FDAが発症後6時間以内の脳梗塞には使用を認めたtPAだが,ヨーロッパでの大規模試験ではplaceboと有意差がなかった.
Hacke W and others. Randomised double-blind placebo-controlled trial of thrombolytic therapy with intravenous alteplase in acute ischaemic stroke. Lancet 1998;352:1245-51.
→GO TOP
帯状ヘルペス後の神経痛予防にamitriptylineとacyclovirの併用が有効
RH Dworkin Prevention of postherpetic neuralgia. Lancet 1999;353:1636-37
この治療の過程で,左黒質への高周波刺激で典型的な抑うつ症状が起こり,再現性もあった症例報告である.症状は刺激後90秒以内で消失した.その症状が起こっている最中のPETでは,左のorbitofrontal cortexからamygadalaにかけて,左淡蒼球から視床前部,そして右の頭頂葉の活動が示された.
この報告はうつ病の原因の一端を明らかにできるのだろうか?神経内科医はあんまり興味がないだろうけど.
B.-P. Bejjani and Others. Transient Acute Depression Induced by High-Frequency Deep-Brain Stimulation. N Engl J Med 1999;340:1476-1480.
→GO TOP
バルプロ酸で肝性昏睡を起こし,死亡したOTC欠損症
37歳男性で小脳萎縮があり,神経生検の後の痛みにバルプロ酸を投与されて9日後に肝性昏睡に陥り死亡した.死後の検索でOTC遺伝子のエクソン6のコドン208にGCA→ACAの変異が見つかった.
Clumsiness, confusion, coma and valproate. Lancet 1999;353:1408.
→GO TOP
パーキンソン病における神経組織移植の現況
移植片の種類と調整法/保存法,術式,移植場所など,様々な変数があり,確立した方法はないが,現在合衆国で二つのprospective,
randomised, surgical placebo-controlled trialが進行中であり,一つは1999年半ばには結論が出るだろうとのことである.また,早晩適切なcell-lineが大きな障害であるdonar不足を解決するだろうとのこと.
Neural transplantation for neurodegenerative disorders. Lancet 1999;353 (suppl 1):29-30.
→GO TOP
プリオンと封入体筋炎
CJDの患者で筋肉にプリオンが発現しているとの報告がある.その関連での研究.
Methionine homozygosity at prion gene codon 129 may predispose to sporadic inclusion-boty myositis. Lancet 1999;353:465-6.
→GO TOP
Dementia pugilistica
痴呆の鑑別診断の総説としても役に立つし,Dementia pugilisticaの総説としても役に立つ.
D. A. Drachman and K. L. Newell. Weekly Clinicopathological Exercises: Case 12-1999: A 67-Year-Old Man with Three Years of Dementia. N Engl J Med 1999;340:1269-1277.
→GO TOP
悪性リンパ腫と脊髄病変
悪性リンパ腫における脊髄病変のことを知りたかったらこちらの記事を参照のこと.いつもながらNEJMのこの欄は非常にすぐれた総説である.
A. S. Freedman and G. P. Nielsen. Weekly Clinicopathological Exercises: Case 11-1999: A 60-Year-Old Woman with Epidural and Paraspinal Masses. N Engl J Med 1999;340:1188-96.
→GO TOP
パーキンソン病の治療による精神症状にclozapineが有効
クロザピン一日50ミリグラム以下ならばパーキンソン病を悪化させることなくパーキンソン病治療薬による精神症状を改善させる.
Friedman J and others. Low-dose clozapine for the treatment of drug-induced psychosis in Parkinson's disease. New England Journal of Medicine. 340(10):757-763, 1999 Mar 11.
同様の報告が三ヶ月後のランセットにも出た.
The French Clozapine Parkinson Study Group. Clozapine in drug-induced psychosis in Parkinson's disease. Lancet 353:2041-2
ただし,クロザピン,および類似品のOlanzapineには好中球減少,無顆粒球症という致命的な副作用がまれに起こるので要注意!!
→GO TOP
アルコール離断による痙攣発作にロラゼパムが有効
成年初発の痙攣発作の原因で忘れてはならないのがアルコール離断である.(CTに異常がないからといってすぐ原因不明にするなよ!!それに酒飲みの病歴の信頼度は銀行の自己査定よりも低い).それに対してロラゼパムが有効だという.てんかん重積状態の記事でもそうだったが,こういう時はジアゼパムでもなく,ヒダントールでもなく,ロラゼパムなんだよね.日本では商品名ワイパックス.もっとてんかんに使っていいんじゃないかな.
Gail D'Onofrio, Niels K. Rathlev, Andrew S. Ulrich, Susan S. Fish, Eric S. Freedland. Lorazepam for the Prevention of Recurrent Seizures Related to Alcohol. N Engl J Med 1999;340:915-9.
→GO TOP
未破裂の脳動脈瘤:手術に疑問符
偶然に見つかった未破裂の脳動脈瘤に関するNEJMの論文を受けて,その手術に対して批判的な記事がLancetにも載っています.
Time to consider treatment of options for intracranial aneurysms. Lancet 1999;353:942-943.
→GO TOP
眼底鏡一本勝負
発熱と頭痛,意識障害のある50才男性が救急外来にやってきた.しかしそこにはCTがない.CTのある病院に転送するには1時間以上かかる.あなたならどうするか.もし化膿性髄膜炎だったら,1時間治療が遅れれば,死ぬ.訴えられたら負けだ.
正解は,眼底を見て鬱血乳頭がないことを確認したらCTなしでも腰椎穿刺を行う (1).
我々は腰椎穿刺の前に頭蓋内圧亢進がないかどうか,CTでチェックしろと教育される.しかし,CTは実はコストに見合っただけの効果がない (2-4).その上,CTの所見は頭蓋内圧の評価にあまり役立たず,脳ヘルニアを起こすかどうかはCTからは予見できないという (3, 5).
頭蓋内圧亢進の評価のためには,CTよりも,鬱血乳頭,神経学的所見の方が有用であるという結論だ (1, 2, 5-7).さあ,眼底鏡一つでCTを省略する度胸はできたかな?
自分のいるところはCTがあるから関係ないって?さあ,どうかな?たとえCTがある施設でも,放射線技師が来るまで1時間待っていたらやっぱり負けだぞ.
機械が自分を守ってくれると思ったら,その時点であんたは医者をやめた方がいい.機械は道具に過ぎない.道具が人間の代わりになるなら,人間がお払い箱になるのは当然だ.
1. Saha S, Saint S, Tierney LM. A balancing act. N Engl J Med 1999;340:374-378.
2. Archer BD. Computed tomography before lumbar puncture in acute meningitis: a review of the risks and benefits . CMAJ 1993;148:961-5.
3. Baker ND, Kharazi H, Laurent L, et al. The efficacy of routine head computed tomography (CT scan) prior to lumbar puncture in the emergency department [see comments]. J Emerg Med 1994;12:597-601.
4. Mellor DH. The place of computed tomography and lumbar puncture in suspected bacterial meningitis. Arch Dis Child 1992;67:1417-9.
5 Rennick G, Shann F, de CJ. Cerebral herniation during bacterial meningitis in children . BMJ 1993;306:953-5.
6. Durand ML, Calderwood SB, Weber DJ, et al. Acute bacterial meningitis in adults. A review of 493 episodes [see comments]. N Engl J Med 1993;328:21-8.
7 Quagliarello VJ, Scheld WM. Treatment of bacterial meningitis . N Engl J Med 1997;336:708-16.
→GO TOP
未熟な果実による致死性脳症
話は石原慎太郎の小説のように優雅なものではない.西アフリカで,ackee
(Blighia sapida)という名の果物を熟さないうちに食べた29人の子供に致死性の脳症が起こった.食べてから2ー48時間以内に死亡するという激烈な症状だった.毒性物質はhypolycin
Aと呼ばれる有機酸の一種で,脂肪酸のβ酸化を障害してひどい低血糖をおこす.
この論文を読んで思い出すのは青い梅を食べてはいけないという戒めである.シアン化カリウムが含まれているという俗説があるが,あれは嘘ではないか?毒があるとしたら,上記のackeeと同じ様な機序ではないか?どなたか青梅が本当に毒なのかどうか,毒があるとしたら,その本体は何なのかご存知だろうか?
Meda HA and others. Epidemic of fatal encephalopathy in preschool children in Burkina Faso and consumption of unripe ackee (Blighia sapida) fruit. Lancet 1999;353:536-40.
→GO TOP
secondary progressive MSとIFN-beta
寛解再発を繰り返しながらだんだん悪くなっていくタイプのMSにもinterferon betaは有効である.
European Study Group on interferon beta-1b in scondary progressive MS. Placebo-controlled multicentre randomised trial of interferon beta-1b in treatment of secondary progressive multiple sclerosis. Lancet 1998;352:1491-97.
→GO TOP
いびきと痴呆
Dementia and snoring. Lancet 1999;353:204.
慢性閉塞性肺疾患と睡眠時無呼吸を持った65才の男性が痴呆との診断で来院.nasal
CPAPにより痴呆がなくなった.
→GO TOP
バビンスキ徴候
チョーカワイイ!!ここに写真が載せられないのが本当に残念.神経内科医は必見.
IMAGES IN CLINICAL MEDICINE:The Babinski Sign. N Engl J Med
1999;340:196
→GO TOP
筋炎に類似した糖尿病性の筋梗塞
A man with diabetes and a swallne leg. Lancet 1999;353:116.
Diabetic muscle infarctionでは,普通は徐々に増大する非外傷性の下肢の腫脹という形で現れ,発熱などの全身症状を伴わないのだが,このケースでは局所の疼痛,発赤ばかりでなく,発熱,白血球増多を伴い,あたかも感染性の筋炎あるいはfocal myositisを思わせる症状だった.
→GO TOP
原因不明の劇症型のウイルス性脳炎
Weekly Clinicopathological Exercises: Case 1-1999: A 53-Year-Old Man
with Fever and Rapid Neurologic Deterioration. N Engl J Med 1999;340:127-135.
あなたも神経内科医のはしくれなら,何の基礎疾患もない健康人に突然劇症型の脳炎が起こるのを何例か経験しているだろう.もちろん細菌性の髄膜炎ではない.悪いことに日本脳炎も単純ヘルペス脳炎も証拠がつかまらないし,アシクロビルも効かない.あっという間に進行して挿管,呼吸管理になる.そういった悪夢を見たことがなければ一人前の神経内科医とは言えない.そのような悪夢の診断は急性出血性白質脳炎(Hurst脳炎)である.
Hurst脳炎の診断のポイントは
1.先行感染後の劇症のウイルス性脳炎で,ヘルペス脳炎の証拠がつかまらない.
2.ヘルペス脳炎と違って両側性である(ただししばしば非対称)
3.CTでは白質の病変が中心(病理学的には髄鞘の崩壊,血管周囲を中心とする炎症細胞浸潤)
4.先行感染としてしばしばMycoplasma pneumoniae.
急性散在性脳脊髄炎ADEMとの鑑別はしばしば困難だが,ADEMでは髄液の白血球がリンパ球優位なのに対して,Hurst脳炎では好中球が優位なこと,Hurst脳炎では脳浮腫がひどくてより重症であることが鑑別点になる.
→GO TOP
未破裂の動脈瘤をどうするか
Unruptured Intracranial Aneurysms -- Risk of Rupture and Risks of Surgical
Intervention. N Engl J Med 1998;339:1725-33.
Time to consider treatment of options for intracranial aneurysms. Lancet 1999;353:942-943.
直径10ミリ以上のものは破裂リスクが高いので手術すべきだというのが一番わかりやすい結論ですが,裏を返すと直径10ミリ以下のものは手術をしちゃだめということですね.
もちろん患者の年齢,合併症の有無,動脈瘤の部位,医者の腕によって話は全然違ってきますが,1年間の術後の死亡率と重篤な合併症の頻度が平均15%前後というのは一体どういうことなんでしょうね.
脳ドック大流行の日本での方が切実な問題だと思うのですが,こういう肝心な仕事は全部鬼畜米英に負けてしまいますね.参加したのは米国,カナダ,ヨーロッパです.こういう仕事で,どうして日本にお呼びがかからないんですかね.MCAのバイパスの国際研究の時には参加したはずなんですが,その時に何かまずいことでもやらかしてしまったんでしょうか?日本の臨床医にとっては毎日がポツダム宣言の日々です.
→GO TOP
MELASの最近の知識
小児の脳卒中の原因疾患の鑑別,脳血管障害に類似した病像を示す代謝性疾患の鑑別の勉強にもなります.脳血管障害に類似した病像を示す代謝性疾患というのは血管に主な病変があるのか(Fabry,
homosystinuria)あるいは神経細胞の代謝に主な原因があるのか(有機酸代謝異常,尿素サイクルとくにOTC欠損,あるいは糖蛋白の代謝異常)に大別されますが,MELASはその両方の要素があるということでしょうか.
余談ですが,Relapsing-Remittingを再発性弛張性って訳して平気な顔をしてるってのはどういう神経でしょうね.神経内科医ならずとも,なんのこっちゃと思います.監訳者の名前が入っているのだから,翻訳ソフトがバカだからってことだけでは済まされない.恥さらしだと思います.”寛解と増悪(再燃)を繰り返す”って訳すんですよ.老婆心まで.
Weekly Clinicopathological Exercises: Case 39-1998: A 13-Year-Old Girl
with a Relapsing-Remitting Neurologic Disorder. N Engl J Med 1998;339:1914-1923→GO
TOP
髄内病変の鑑別
リンパ腫,サルコイドーシス,多発性硬化症,神経ベーチェットと,いつもあなたが迷う鑑別診断の参考にしてください.
Weekly Clinicopathological Exercises: Case 35-1998: A 54-Year-Old Woman with a Progressive Gait Disturbance and Painful Leg Paresthesias. N Engl J Med 1998;339:1534-1542.
→GO TOP
てんかん重積状態に対するロラゼパム
Treiman DM and others. A Comparison of Four Treatments for Generalized
Convulsive Status Epilepticus. N Engl J Med 1998;339:792-8.
384例のGeneralized Convulsive Status Epilepticusに対して,無作為割り付け二重盲検を行い,ロラゼパム (0.1mg/kg),ジアゼパム (0.15mg/kg)+フェニトイン(18 mg/ kg),フェノバルビタール単独 (15mg/kg),フェニトイン単独 (18mg/kg) 静注の効果を比較したところ,各々の効果は64.9%,55.8%,58.2%,43.6%であり,ロラゼパムの効果はフェニトイン単独よりも統計学的に有意に高かった.
ロラゼパムは日本では商品名ワイパックスで,経口の錠剤しかない.心電図モニターをしながらおっかなびっくりやるフェニトインの静注よりも効果があるのなら,是非とも欲しい薬だ.ロラゼパムの静注はワシントンマニュアルにもごく標準的な治療として載っている.決して特殊な治療ではない.どうしてこういう治療が日本ではスタンダードにならないのか?それは医者が怠慢だからだ.医者がもっと発言しなければ厚生省も製薬会社も動かない.
→GO TOP
進行期のパーキンソン病における視床下核の電気刺激
Limousin P and others. Electrical Stimulation of the Subthalamic Nucleus
in Advanced Parkinson's Disease. N Engl J Med 1998;339:1105-11. on-off現象の改善,L-dopaの減量,ジスキネジアの改善が期待できる.
→GO TOP
LovastatinによるAdrenoleukodystrophyの治療
Singh I and others. Lovastatin for X-Linked Adrenoleukodystrophy. N
Engl J Med 1998;339:702-3.
Letterの形の短い投稿.7人の患者に半年間Lovastatinを投与したところ,血中の極長鎖脂肪酸の値が半分以下,症例によっては1/4以下に減少している.観察短いので臨床症状の改善ないし進行の阻止は明かではなかったが,試みる価値のある治療法である.
→GO TOP
急性の眩暈発作
Current Concepts: Acute Vestibular Syndrome. N Engl J Med 1998;339:680-85.
→GO TOP
パーキンソン病の総説
Lang AE, Lozano AM. Medical Progress: Parkinson's Disease. N Engl J
Med 1998;339:1044-1053.(第一部;臨床診断,神経病理,原因論)N Engl J Med
1998;339:1130-43(第二部:病態生理,治療)とくに第二部の外科治療を論じた部分は神経内科にとって勉強になるので一読すべきだろう.
ポイント:視床VL核の手術が振戦の改善を目的に行われるのに対し,後腹側内側淡蒼球あるいは視床下核に対する手術は進行期のパーキンソン病の症状全般と,薬剤誘発性ジスキネジアに対して行われるが,手術の効果が長続きしないこと,両側を手術すると高次脳機能障害と球麻痺が高率に起こることが問題だった.近年,同部位を深部電極で刺激する方法が,副作用も軽く持続的な効果が期待されている.
一方,胎児の中脳組織の移植手術の効果が期待されているが,材料取得の倫理的な問題と絶対的なドナー不足(片側の手術に3例の胎児が必要)が障害となっている.ブタ胎児の中脳を使う異種間移植の安全性と有効性が現在検討されている.
→GO TOP
CT, MRIでRing Enhancementを伴う病変の鑑別診断
Weekly Clinicopathological Exercises: Case 26-1998: A 15-Year-Old Girl
with Hemiparesis, Slurred Speech, and an Intracranial Lesion. N Engl J
Med 1998;339:542-549.
神経内科医に,脳外科医にとっては,一流の推理ショートショートとでも申しましょうか.お勧めです.面白いことは保証します.寝る前に一杯やりながら読むのもおつなもの.もちろんあなたの診療で,Ring
Enhancementを伴う病変に出会ったときの鑑別診断のお手本にもなります.GO
TOP
痙攣発作の総説
Delanty, N Vaughan CJ French JA. Medical causes of seizures. Lancet
352;1998:383-90.
→GO TOP
奇妙な筋膜炎がフランスで増えている
ここ数年フランスで奇妙な筋膜炎が増えていることが報告された.臨床症状は多発筋炎ないしはリウマチ性多発筋痛症によく似ているのだが,生検すると,筋膜下にマクロファージの浸潤がびっしりあって,筋線維の障害はわずかなのだ.
Gherardi RK and others. Macrophagic myofascitis: an emergic entity. Lancet 1998;352:347-351.
→GO TOP
ジメチル水銀暴露事故で遅発性の小脳障害を呈して化学者が死亡
D Nierenberg and others. Delayed Cerebellar Disease and Death after
Accidental Exposure to Dimethylmercury. N Engl J Med 1998;338:1672-1676.
患者は48才の女性.歩行時のふらつきとしゃべりにくさを主訴に1997年1月20日に来院した.彼女は1996年8月14日に実験中に,ドラフトの中でゴム手袋の上からジメチル水銀を数滴こぼした.彼女はすぐにぬぐってゴム手袋を捨てた.その後著変なかったが,同年12月頃から2カ月間に6.8キロ体重が減少し,嘔気,下痢,腹部の不快感も自覚するようになった.神経学的には小脳性の運動失調と構音障害を認めた.CT,
MRIでは偶発的な所見として直径1センチの髄膜腫があった以外には異常がなかった.血中,毛髪の水銀値は以上高値を示し,他に小脳性の運動失調の原因疾患を認めなかったためキレート療法が行われたが神経症状は急速に進行し,2月6日以降は通常の刺激に反応しなくなった.以後植物状態が持続し,1997年6月8日気管支肺炎で死亡した.
剖検では大脳皮質が萎縮し,後頭葉視覚野,上側頭葉にはグリオーシスと神経細胞の消失が目立った.小脳皮質も著明に萎縮し,顆粒細胞ばかりでなく,プルキンエ細胞やバスケット細胞も消失していた.
この症例から学ぶべき事は以下のようである.
1.ジメチル水銀は微量でも致死的である.
2.中毒症状は長い潜伏期間の後に生じうる.
3.ジメチル水銀は皮膚から速やかに吸収され,ゴム製の手袋は役立たない(ジメチル水銀は15秒以内に浸透するとの報告がある)
4.キレート療法は神経学的症状が出現してから後では効果がない.
5.この論文の引用文献には,日本人の書いた論文は一つも出てこない.
→GO TOP
グロボイド細胞性白質ジストロフィーには造血幹細胞移植が有効
検査所見ばかりではなく,臨床症状もよくなっていることに注目したい.
W. Krivit and others. Hematopoietic Stem-Cell Transplantation in Globoid-Cell Leukodystrophy. N Engl J Med 1998;338:1119-1126
→GO TOP
慢性肝疾患での脳浮腫
JP Donoban and others. Cereberal oedema and increased intracaranial
pressure in chronic liver dieases. Lancet 1998;351:719-721.
急性の肝障害ではしばしば致命的な脳浮腫が起きるが,慢性の肝障害でも脳浮腫はしばしば命取りになる.
→GO TOP
脳の画像の総説
Medical Progress: Imaging the Brain (First of Two Parts). N Engl J
Med 1998;338:812-820.
→GO TOP
脊髄病変の鑑別診断
MRIが簡単にとれるようになってから,脊髄病変が見つかりやすくなり,その診断はいっそうむずかしくなったように思えます.あなたがいつも悩む脊髄病変.縦隔リンパ節腫脹と脊髄病変なんて,見ただけで悩ましくなる題名じゃないですか.MGHのスタッフも悩みました.しかしその悩み方は大分高尚のようですから,お悩みの方は是非とも参考にして下さい.MGHのCase
Recordsのシリーズは,症例検討というよりも,自分で悩んだ後で,その道に一流の人の考え方をその症例に即して学ぶことができる教科書としての意義があります.
CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL; Weekly Clinicopathological Exercises: Case 8-1998: A 41-Year-Old Man with Leg Weakness and Mediastinal Lymphadenopathy. N Engl J Med 1998;338:747-754.
→GO TOP
多発性硬化症における軸索の障害
Axonal Transection in the Lesions of Multiple Sclerosis. N Engl J Med
1998;338:278-85.
私は神経病理はまったく素人なのだが,神経病理学者というのはどうしてこういう大事なことをいままでまともに研究して来なかったのだろうか.
→GO TOP
パーキンソン症候群を伴う痴呆の症例の診断に困ったら
そういう時はこの記事を読もう.
Weekly Clinicopathological Exercises: Case 7-1998: A 74-Year-Old Man
with Dementia, Parkinsonism, and an Insular Lesion. N Engl J Med 1998;338:603-610.
→GO TOP
アルツハイマー病の診断におけるアポリポ蛋白E遺伝子の有用性
これまでApoE遺伝子の特定の対立形質はアルツハイマー病のリスクになることはわかっているが,診断上の価値ははっきりしなかった.今回の研究では臨床基準と組み合わせると感度は低下し特異性は上昇するということがわかった.
Utility of the Apolipoprotein E Genotype in the Diagnosis of Alzheimer's
Disease. N Engl J Med 1998;338:506-511.
→GO TOP
溶かせばいいってもんじゃない
Wang YF and others. Tissue plasminogen activator (tPA) increases neuronal
damage after cerebral ischemia in wild-type and tPA-deficient mice. Nature
Med 4;1998:228-231.
FDAがせっかく認可したtPAだが,とんだところからいちゃもんがついた.虚血再潅流モデルを使って,野生型とtPAノックアウトマウスで虚血層の大きさを比べたら,なんとtPAノックアウトマウスの方が50%も梗塞巣が小さかった.その上,虚血を起こした野生型とtPAノックアウトマウスの両方にtPAを投与したところ,投与しない場合よりも虚血巣が拡大したのだ.何でも神経細胞に対するグルタミン酸の興奮毒性を増加させるってことなんだが.非常にはっきりしたデータなので,ネズミと人間は違うと簡単に片づけるわけにはいかないだろう.
→GO TOP
神経内科医の下す診断の社会性
Butler D. ADVANCES IN NEUROSCIENCE MAY THREATEN HUMAN RIGHTS. Nature.
391(6665):316, 1998 Jan 22.
遺伝子診断,画像診断技術が進歩すれば,神経内科医が下す診断の社会的影響はますます大きくなる.その影響は他臓器の癌などの遺伝子診断は未だ発症していない治療不能の病気の診断という新しい難問を作り出した.
→GO TOP
馬尾症候群を呈した67才女性
Weekly Clinicopathological Exercises: Case 39-1997: A 67-Year-Old Woman
with the Cauda Equina Syndrome.N Engl J Med 1997;337:1829
馬尾病変と円錐病変の鑑別点,脊髄病変の鑑別のくだりは日常臨床でも大いに参考になる.
→GO TOP
プリオン病の総説
Mechanisms of Disease: Transmissible Spongiform Encephalopathies. N
Engl J Med 1997;337:1821-1828.
→GO TOP
痴呆の診断;あなたにも責任があります
痴呆の診断が採用する基準によってかなりばらつくことは何となく予想できるが,こんなにもいい加減だとは思わなかった.
Timo Erkinjuntti, Truls Ostbye, Runa Steenhuis, Vladimir Hachinski. The Effect of Different Diagnostic Criteria on the Prevalence of Dementia. N Engl J Med 1997;337:1667-74.
65歳以上の男女1879人に,DSM-III, DSM-III-R, DSM-IV, ICD-9, ICD-10, CANDEXの6種類の基準を適用して痴呆の診断をしたところ,一番高いDSM-IIIでは30%,一番低いICD10で3%と,診断率に10倍もの開きがあるのだ.しかもこの解離は,ある診断が他の診断より厳しいという単純な理由からではない.というのは,6つの基準すべてで痴呆と診断されたのはたったの20人だったからだ.つまり一番診断率が低かったICD10で痴呆と診断された58人のうち,38人は他の基準では痴呆ではないと診断されたからだ.
日本では,一番よく使われる長谷川式がどういう位置にあるのか調べなければならない.私はやる環境にないから,誰かやってください.いい仕事になりますよ.とにかく,こういういい加減な数字から国家プロジェクトの予算が決まるというのは大問題だ.神経内科医の社会的責任の問題になる.
ところでラストオーサーを見てもらいたい.そう,あのHachinskiである.自分の作ったアルツハイマー/脳血管痴呆の鑑別診断表の見直しはどうするんだろうかと,他人事ながら気になるところだ.
→GO TOP
多発性硬化症の治療の総説:
Rudick RA and others. Drug Therapy: Management of Multiple Sclerosis.
N Engl J Med 1997;337:1604-11.
よくまとまっています.
→GO TOP
うまい話あります
側頭動脈炎では一刻も早く治療を始めたいので,診断は早くつけたい.しかし診断のための側頭動脈生検はfalse
negativeの率が高いので有名だ.苦労してやっても陽性所見が得られずに頭皮の壊死が起こったりしたらみじめだ.その問題点がカラードプラーで解決できるとしたら,こんなうまい話はない.繰り返して検査できるし,治療経過も追えるといった,生検にはない利点もある.そういううまい話がどうやらありそうなのだ.側頭動脈炎の患者30人中22人にはカラードプラーで側頭動脈の周囲に暗い環が見られ,これは疾患特異的な可能性があるという.
WA Schmidt and others. Color Duplex Ultrasonography in the Diagnosis
of Temporal Arteritis. N Engl J Med 1997;337:1336-42.
しかし,この可能性に関しては,5年後に再検討されて,丁寧に身体所見をとった場合に比べて,それほど診断率を向上させないということがわかった.
Salvarani C and others. Is Duplex Ultrasonography Useful for the Diagnosis of Giant-Cell Arteritis? Ann Intern Med 2002;137:232-8
→GO TOP
脳梗塞急性期治療におけるTissue Plasminogen
Activatorの位置づけ
CLINICAL DEBATE Should Thrombolytic Therapy Be the First-Line Treatment
for Acute Ischemic Stroke?N Engl J Med 1997;337:1309-1312.
FDAがt-PAの使用を脳