それはアビガンから始まった:医系技官暴走の起源がここに
大切な人のためにと思って接種して万が一命を落としても「自己責任」で片付けられる国
そして、イエスはたとえを話された。「だれも、新しい服から布切れを破り取って、古い服に継ぎを当てたりはしない。そんなことをすれば、新しい服も破れるし、新しい服から取った継ぎ切れも古いものには合わないだろう。(ルカによる福音書5章36)
未承認薬や適応外薬を投与する研究は、臨床研究の中でも厳しい管理が求められる「特定臨床研究」に該当すると、臨床研究法の法文に書いてあります。特定臨床研究を行うに当たっては、委員会による審査や書類の作成など、決められた手続きを順守しなければ刑罰も与えられます。
この点、どうなのでしょうか。厚生労働省の担当者に聞くと、「アビガンなどを患者さんにいち早く投与することが大事だ。また、そのデータが残らないと後につながらないので、まずは観察研究という枠組みを当てはめて緊急的にスタートした」とのことです。適応外薬や未承認薬は臨床研究法の対象なのではないかと聞くと、「いわゆる『55年通知』を法的根拠として、アビガンやカレトラの投与を『通常の診療行為』とみなし、その結果を調査するものだから観察研究と解釈できる」という答えでした。(記者の目 新型コロナにアビガン投与が「観察研究」のナゾ 2020/03/17 日経メディカル(抜粋))
医系技官直伝の「法の抜け穴」
民間人・組織は倫理を無視した研究・臨床試験は通常行えません。GCP違反の治験ができるのも国家ならではの離れ業です。取り締まりの元締めがやることですから、何でもかんでもやり放題。全権委任法なんて仰々しいものは一切要無用。権力者達が粛々と人権・倫理を踏みにじる。1945年8月15日より前は軍人。今は為政者・官僚・御用医師。ならば民間人・組織は倫理違反研究は一切できないのでしょうか?もちろんできます。取り締まる側の権力者達と結託さえすればいいだけです。それが上記のアビガン「観察研究」でした。
なんと厚労省医政局研究開発振興課、通称「研発」が法の抜け穴を指南してくれたおかげで、被験者保護を謳った臨床研究法の縛りから解放された無法地帯での勝手気ままな研究ができるようになった。その経緯を説明したのが上記日経メディカルの記事です。しかし研発によるこの指南は、巧妙な抜け穴どころか臨床研究法を泥靴で踏みにじるための方便にしか過ぎませんでした。
暴走した研発
表のように実は厚労省の中でも多くの技官は医系・薬系を問わず、最初からアビガンをイカサマだと見抜いて(新型コロナ「アビガンは効かないよ」問題について 2020/5/22)官邸・経産に徹底抗戦していたのですが(厚生労働省はかなり慎重 現代ビジネス 2020/5/2)、もともと経産と仲がいい研発だけはアビガンを支援していました。研発課長は医系技官です。厚労省の課長は大学で言えば教授に当たる要職です。研発と言えば新薬開発でも話題性の豊富な時期に登場する花形課です。上記記事では名前こそ出ていませんが、日経メディカルのようなメジャーな媒体へのコメント出しは下っ端には任せられないので通常は課長が対応します。
ところが、「『55年通知』を法的根拠として」という言葉を聞くと我が耳を疑います。55年通知は、承認後長年にわたり実地診療で広く使われ、実質的に有効性安全性共に確立したと考えられる適応外使用に対し保険診療として認めるということです。この世に未だ出現していない病気、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症にしか効能効果を持っていない、実質的に未承認薬であるアビガンと55年通知は何の関係もありません。55年通知がアビガン投与の『法的根拠』になるんだったら、厚労省地下にある食堂のメニューだって『法的根拠』になります。そのぐらいとんでもない『法的根拠』でした。
アビガンの教訓
この「観察研究」で患者さんに投与されたアビガンの量は凄まじいものでした。未承認効能の新型コロナに対し、承認用量の2.5倍というmega doseを用量設定試験もなしにいきなり患者に投与したのです。この無謀なプロトコールそのものが、臨床研究法以前の重大な研究倫理違反だったことを示しています。有効性が期待できずに(期待できるのならば承認用量の2.5倍などというとんでもない用量にはならなかった)、リスクのみ(用量が2.5倍なら当然リスクが高まる)を被験者に負わせるヘルシンキ宣言違反違反の人体実験、それがアビガン「観察研究」の正体でした。当然、その結果もヘルシンキ宣言違反に相応しいものでした。別途走っていたレジストリ研究との比較で、特に軽症群で観察研究における死亡率が12倍にも達したのです(「アビガンは毒薬」を立証した「観察研究」 リアルワールドエビデンスが示した「死亡率12倍」)。まさかと思われる方は私と全く独立して同様の結果を出している薬害オンブズパースン会議の意見書も御覧ください。
暴走の果てに:活かされなかったアビガンの教訓
ところがワクチンでもこの教訓は生かされませんでした。本来ならば未知の副反応を感度良く検出するために、新型インフルエンザワクチンの時と同様、因果関係の有無にかかわらず報告してもらうよう、医師達に要請すべきだったのです。ところが医系技官たちがやったことは全く逆にアナフィラキシー以外の副反応は全て否定できるように、アビガンの「55年通知」と同様、見え透いた工作を施したのです(全てはワクチン利権のために)。正に確信犯の暴走でした。もう一度表をご覧あれ。ワクチンという「武器」を手に入れて「自分達の天下」だと浮かれる前に、マスゴミ・官邸との対決も辞さなかった自分達の誇りを思い起こすべきだったのです。そうすれば役人らしく新型インフルエンザの前例をそのまま踏襲し、新型コロナウイルス感染症特別措置法の枠組みの中で、因果関係の有無にかかわらず有害事象の報告を受け、健康被害の救済も同じく特措法の枠組みの中で行えばいいだけだった。そうすればアビガンの時と同様に、最後まで官邸に屈しなかった蔭のヒーローと称えられていたはずだった。なのにあなた方はGCP違反、補償金詐欺はおろか、イエスの教えに背いてまで、ワクチン利権を守ろうとした。報いを受けるがいい。
大切な人のためにと思って接種して万が一命を落としても「自己責任」で片付けられる国
→GCP違反に基づくワクチン接種
→補償金4420万円の嘘
→新コロバブルの物語
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