行政崩壊

小松秀樹先生の名著 ”医療崩壊”は,すでに別のところで御紹介した し,何も私が紹介しなくても,お読みになった方もたくさんいらしゃるだろう.しかし,全く同じ趣旨で,”行政崩壊”が未だに著されていないのはなぜだろう か?行政の末席を汚す者として不思議でならない.

”行政崩壊”が,”医療崩壊”より,はるか以前に出版されていてしかるべき理由は山ほどある.

1.日本の中央官庁の役人は,医師と同様,いや,国会待機という名の,政治家のお守りの期間中は役所に連泊となるから,医師よりもサービス残業時間 が長いし,国家公務員は,労働基準法のアウトローだから,どんなにサービス残業をしても,労働基準法違反とはならない.さらに愚かな政治家が,小さな政府 と称して職場の人減らしを強制し,労働環境をますます悪化させる.

2.ごく一握りのお偉いさんを除いて,医師よりもはるかに収入が低い.

3.その存在が非難の対象にされることはあっても決して医師のように感謝されない.

4.国会議員は決して医師をいじめないが,人気取りのためだけに,中央官庁の役人はいじめる.

こうまでされて,なぜ,彼らがひたすら耐え忍んでいるのか,多分あなたは理解できないだろう.でも,理解する必要はない.なぜなら耐え忍んではいな いからだ.そこでは,医療崩壊と全く同じように,うつ病による脱落,立ち去り型サボタージュが,すでに起こっている.行政崩壊に国民の皆様が気づく前に, 一人,また一人と,非常口から抜け出している.

行政崩壊なんて騒ぎ立てれば,こうした非常口まで塞がれて,じわじわと降りてくる吊り天井に押し潰される運命だけが残されるとわかっているから,ひ たすら耐え忍んでいるようなふりをして、虎視眈々と脱出の機会を狙っているだけなのだ.

参考記事
心の病、官僚にもジワリ・中央省庁1.3%休養 [2007年10月28日/日本経済新聞 朝刊]
2006年度に心の病で病気休暇を取った中央省庁の職員は在職者の1.3%に当たる563人で、省庁別では社会保険庁が6.4%と最も高かったことが、人事院が実施した実態調査で分かった。年齢別では30歳代が半数近くを占めており、人事院は職員の勤務状況に日ごろから注意するよう各省庁に要請した。
 人事院が5年ごとに実施している調査によると、国家公務員の長期病休の原因は「精神・行動の障害」が1991年には4位だったが、96年には2位、2001年には1位に浮上。このため、中央省庁職員の心の病をテーマにした実態調査を実施。32の中央省庁の担当者に電子メールで調査票を送り、各省庁で06年度、心の病で病気休暇を取得した職員について調べた。休暇取得者の割合を省庁別にみると、「社会保険庁」が地方勤務を除く在職者296人中19人の6.4%で最も高く、「公正取引委員会」2.4%、「総務省」2.1%と続いた。

続行政崩壊

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