「ご専門は何ですか?と訊かれると、むかっとするんですよね」
「なぜですか?」
「なぜなら、その質問の裏には、”あんた、それ以外は藪医者なんだろう。だから逃げるんだろう”って決めつけが隠れているからです。自分はどこが悪いのか、何の病気なのか、ほとんどの患者さんはわからないでやってくる。そんな患者さんを前にして、”あなたが、もし心臓の病気でなかったら、肝臓の病気でなかったら、腎臓の病気でなかったら、私は関係ありません”って、初めから言い渡すような真似は、まともな医者だったら決してしませんから。」
「では、”ご専門は何ですか?”と訊かれたら、どう答えるのですか?」
「”頭が痛かろうと、胸が痛かろうと、お腹が痛かろうと、その理由が何であれ、もしあなたが明日私の外来に来たならば、まず私が診ます。どんな看板を掲げていようと、それが医者の誇りというものです” って答えることにしています」