最も目立ったのはCollingeらの報告(3)だった.それは非定型的CJDとBSEの結びつきを強く疑わせるものだった.それは1996年3月20日の英国政府の発表よりも,もっと深刻なニュースだったのだが,英国国民はそれを冷静に受けとめた(1).確かに,英国政府の取った対策は遅きには失したが,対策の内容そのものは適切なものだったことをようやく理解したからだろう.その証拠にBSEは激減している.一方,これまできわめて難しかった非定型的CJDの生前診断が可能になりつつあるので(1),非定型的CJDの数の,より正確な数が早く把握できるようになるかもしれない.
狂牛病は人間にうつるのかという問いに対して,一年前は”否定しきれない”という程度のコメントしかできなかった.この一年の経過観察と研究の結果から判断すると,どうやら,非常にまれにだが,うつる可能性があると考えるべきだろう.ただしその確率が,宝くじに当たる可能性なのか,道を歩いている時に車にはねとばされる可能性なのか,まだ誰にもわからない.
しかし,もしBSEが人にうつるとしても,原因となった食物は1989年の規制以前のものだろう.現在食用に供されている牛由来の食品の安全性ははるかに高くなっていると考えられる.今後,BSE感染が疑われる非定型的なCJDの数が増えるかどうか,さらに注意深く観察する必要がある.
1. Hill AF, Zeidler M, Ironside J, Collinge J. Diagnosis of new variant Creutzfeldt-Jakob disease by tonsil biopsy. Lancet 1997;349:99-100.
2. Dickson D. A sane response to mad cow link. Nature Medicine1996;2:1284
3. Collinge J, Sidle KC, Meads J, Ironside J, Hill AF. Molecular analysis of prion strain variation and the aetiology of 'new variant' CJD. Nature 1996;383:685-90.
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