物騒な国
医者にとっては,ここは,昔から物騒な国だった.なにせ脈の取り方一つ知らない警察官,科学捜査員,検察官,裁判官が寄ってたかって医者の人生を滅茶苦茶にしてしまうのだから.しかし,患者にとっては安全な国だった.何しろブラジルのようにサリドマイドが野放しになるようなことは決してなかったのだから.
それに比べて海の向こうは昔から物騒だった.何せ世界一羽振りのいい規制当局が自分の国で使えなくなった非加熱製剤を日本に輸出するぐらいなんだから.そして今や大統領が自ら適応外薬を「承認済みのゲームチェンジャー」だと偽ってセールスマン役を買って出た結果,国内だけでなく,国外でも副作用の犠牲者が出た.
そしてこの国も今や患者にとって大層物騒な国になった.なにせ,脈の取り方を知らないのはもちろんだが,添付文書一つ読めない人物が(*),なんと治験の結果が出る前に第二のサリドマイドの承認を決定してしまうのだから.
*添付文書を読んでさえいれば(=さえ読めれば),利益相反を露わにしながら承認の「指示」に向かって暴走することもなかった.
もうこうなったら患者は自分の命は自分で守るしかない.しかしそれは決して難しいことではない.これまで一度も使ったことのなかった第二のサリドマイドをホイホイ使うような破廉恥な医者を避ければいいだけだ.第二のサリドマイドを気軽に使えることは,取りも直さず,患者のことを全く考えていないことを意味する.もちろん,私は老親に申し渡してある.「もしもコロナにかかっても,アビガンだけは止めておきなさい.もちろん,自分から希望するようなことは絶対にしないように.そんなことをしたら,可愛い息子が二度と世間様に顔向けできなくなるから」と.
承認されたってへいちゃらさ.だってアビガンを使うような破廉恥なお医者様はお断りすればいいんだから
自分の命は自分で守ろう!!
→アビガン:その終わりの始まりにあたって
→臨床研究無法地帯:イレッサの悪夢再び
→レムデシビルを第二のイレッサにしないために
→薬害輸出の罠を仕掛けたのは?
→アビガン事件の構図
→第二のサリドマイド
→コロナのデマに飽きた人へ
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