在宅嫌いは国を問わず

そりゃ誰だっておしっこ臭い大部屋で,早寝早起きで強制的に寝起きさせらた上に,大しておなかも空いていない時間にまずい病院食を食わされるなんて,まっぴら御免さ.それなのに,なぜ,病院を希望するのか? 理由は簡単だ,人手がないからだ.

/////////////////////////////////////////
自宅希望は2割だけ 厚労省調査 2003.11.22
 「住み慣れた自宅で最期を迎えたい」と望む国民は約2割しかいないことが、厚生労働省が実施した「終末期医療に関する調査」で明らかになった。介護する家族の負担や経済的な負担を懸念しているためで、6割以上は一般の病院や老人ホームなどでの最期を希望していた。幸せな死を迎える理想の場所として自宅が挙げられることが多いが、今回の調査は理想と現実のギャップを浮かび上がらせた。

同調査は、望ましい終末期医療(ターミナルケア)のあり方を探るのが目的で、対象は全国の20歳以上の国民5000人と医師2000人、看護師、介護職員各3000人(回収率50.7%)。92、97年に次いで3回目の調査だが、今回初めて、「自分が最期まで療養したい場所」などについて尋ねた。

その結果、国民が望む最期の場所としては「病院」が38.2%で一番多く、次いで「老人ホーム」が24.8%。「自宅」は22.7%に過ぎなかった。「自分の家族が療養してほしい場所」でも、最も多かったのは「病院」の41.2%で、「自宅」は26.7%だった。

自宅以外を望む理由には「家族の看護などの負担が大きい」「緊急時に迷惑をかける」「経済的負担」「最期に痛みで苦しむかもしれないから」などが挙げられた。
/////////////////////////////////////////

我が大本営が推進する在宅医療は,患者家族の時間や労力の負担のもとに,見かけ上の医療費削減を図ろうとするものだ.しかし,今時,どこの家庭に介護専従の人手があるというのか?

先が見えている終末期患者でさえも,自宅で最後を迎えるという”美名”では,支えられない身体的,心理的負担が,患者本人,家族の両方にある.まして況や先が見えない痴呆患者の介護においておや.

これは住宅事情の悪さという日本の特殊条件から生じているわけではない.その証拠に,アメリカの痴呆患者の介護についても,家では看たくないという人が圧倒的に多い.在宅で看ている人のなんと7割が,患者本人が亡くなってほっとしたと感じているし,介護者の半分近くの人がうつ病になりかかっているという.(下記)

CARING FOR ALZHEIMER'S PATIENTS AT HOME TAKES HEAVY TOLL
A new study detailed the extreme psychological toll that providing at-home care for Alzheimer's patients takes on family members and caregivers in year before those patients died. More than 42% of caregivers in the study were at risk of clinical depression, and more than 70% reported feeling relieved by the death of their loved one.

東京医科歯科大学の川渕孝一先生は非常に優秀な方で,その主張にも賛同すべき点が多々あるが,日本の住宅事情を改善すれば在宅医療が進むという楽観的な見解には反対である.在宅医療が進まないのは核家族化ゆえのマンパワー不足が原因であり,住宅という箱物はほとんど関係がない.もし,住宅事情が左右するならば,住宅事情が恵まれている地域で在宅医療が進むはずだが,そのデータは著書の中に示されていない.むしろ反対に,住宅事情に恵まれている新潟県でも,在宅医療は進まず,むしろ老人保健施設の建設ラッシュが続いていたことを,新潟県勤務時代に経験している.

→二条河原へ戻る