予防策

BMJ好みだと思うのだが、NEJMがこういう論文を載せるようになったというのは、やはり介入試験で魅力のある論文が少なくなったということなのだろう。パイプラインの中身がどこでも枯渇しつつある時代、介入手段を薬に拘る理由はない。

たとえば,この”予防策”ってのは具体的にどういうことをやればいいのか,アルコール販売禁止?テレビ放映・視聴制限?ワールドカップを止めてしまう?(欲求不満で余計に心血管イベントが増える?)、いろいろな介入試験のデザインを考えてみよう.そして,それを試してみれば,その仕事をNEJMに載せてもらえること請け合いである.ただし,あらゆる面で,地域差,人種差が予想されるので,国際共同試験は考えないこと.

サッカーワールドカップ開催中の心血管イベント
(南江堂の日本語サイトから
U. Wilbert-Lampen and others. Cardiovascular Events during World Cup Soccer
(N Engl J Med 2008; 358 : 475 - 83 : Original Article.)
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背 景
 2006 年 6 月 9 日ー7 月 9 日にドイツで開催された FIFA ワールドカップは,情動的ストレスと心血管イベント発生率との関連を検討する機会となった.
方 法
 ワールドカップ開催中にミュンヘン地区の患者で発生した心血管イベントについて,救急医が前向きに評価した.これらのイベントを,対照期間(2006 年の 5 月 1 日?6 月 8 日,7 月 10 日?7 月 31 日,2003 年と 2005 年の 5 月 1 日?7 月 31 日)中に発生したイベントと比較した.

結 果
 4,279 例に発生した急性心血管イベントを評価した.ドイツチームの試合日における心臓に関連した救急事象の発生率は,対照期間の 2.66 倍であり(95%信頼区間 [CI] 2.33?3.04,P<0.001),男性では対照期間の 3.26 倍(95% CI 2.78?3.84,P<0.001),女性では 1.82 倍であった(95% CI 1.44?2.31,P<0.001).ドイツチームの試合日に冠動脈イベントを発症した患者のうち,冠動脈性心疾患の既往があった患者の割合は 47.0%であったのに対し,対照期間中にイベントを発症した患者では 29.1%であった.試合日においてイベント発生率の平均値がもっとも高かったのは,各試合開始後の最初の 2 時間であった.開催期間中の重篤イベントを対照期間と比較したサブ解析によると,ST 上昇を認める心筋梗塞の発生率は 2.49 倍(95% CI 1.47?4.23),ST 上昇を認めない心筋梗塞または不安定狭心症の発生率は 2.61 倍(95% CI 2.22?3.08),主要症状の原因となる心不整脈の発生率は 3.07 倍(95% CI 2.32?4.06)に増加した(すべての比較について P<0.001).
結 論
 ストレスの大きいサッカーの試合を観戦することは,急性心血管イベントのリスクを 2 倍以上にする.このような過度のリスクを考慮し,とくに冠動脈性心疾患の既往がある男性に対しては,早急に予防策を講じる必要がある.
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