ワクチンリテラシー

ことワクチンリテラシーに関しては、「欧米の市民はおりこうさんなのに、日本の国民の皆様はバカばっかり」という黒船論理は通用しない。

●ワクチンだけでなく一般の医薬品でも日本人が特別にリスク感受性が高いとは言えない[1]
●ワクチンについても、保護者が副反応を嫌って、あるいは反ワクチンキャンペーンのドグマを信じて子供にワクチンを受けさせない結果、ワクチンで 予防できる感染症が蔓延する現象は、米国でも英国でも見られる[2]。

おそらくこれは、自分の子供あるいは家族のようなプロキシ[3]に対する治療介入のリスク・ベネフィットを判断する場合、自分自身に対する判断と は異なる感情が入るためと考えられる。今後のワクチンリテラシーを考える場合に必須の視点であろう。

1. Shimazawa R, Ikeda M. Safety information in drug labeling: a comparison of the United States, the United Kingdom, and Japan. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2013;22:306-18
2. Shimazawa R, Ikeda M. The vaccine gap between Japan and the UK. Health Policy 2012;107:312-317
3. Ikeda M. Family bias by proxy. Lancet 2005;365:187
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【アメリカ】伸び悩む接種率にいらだち「HPVワクチンは禁煙やがん検診と同様に重要」 MTpro 2014/7/28
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1407/1407080.html

 米疾病対策センター(CDC)は7月24日,昨年(2013年)の若年男女のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種率が前 年から微増にとどまり「容認できない低さが続いている」と報告。11~12歳でのHPVワクチン接種率は女子で57%,男子で35%程度と見ら れ,当初の予測値を大きく下回る状態が続いている。CDCの担当官は「これまでと同じ接種率を報告しなければならないのはいらだたしい」とコメン ト。CDCは医療制度改革(Affordable Care Act)による医療費適正化,医療の質やアクセス向上に取り組んでおり,禁煙治療や高血圧,各種がんのスクリーニングなどと同様,HPVワクチン接種が重 要な予防医療として位置付けられていると説明。医師らに対象年齢の児童への接種を強く奨めることなどを呼びかけている(関連記事)。

女児の接種率,2011年以降50%台が続く
  CDCのリリースと同時に発行された死亡疾病週報7月25日号(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2014; 63:620- 624) によると,2007年の女子へのHPVワクチン導入以降,2011年にようやく13~17歳女子の1回接種率が50%を超えたが12年には53.8%,最 新の13年でも57.3%と有意ではあるが,微増。3回接種率は37.6%にとどまっている。2011年からの同年代の男子への1回接種率は 8.3%,12年には20.8%,13年には34.6%と前年に比べやや増加していた。HPVワクチンと同時期での接種が推奨されている百日咳・ ジフテリア・破傷風三種混合ワクチン(Tdap)や髄膜炎菌ワクチンの接種率は,それぞれ80%近くを達成していたのに対し,2013年頃には 80%以上を達成していると予測されていた接種率は当初の予測値を大きく下回る状態が続いている。

大統領への答申で「緊急対策が必要ながん予防策」にHPVワクチン
  2014年2月にオバマ大統領に提出されたがん予防策に関する年次報告書では,緊急対策が必要な項目としてHPVワクチン接種率の向上が取り上げられた。 この中では具体案として「医療現場でHPVワクチンの推奨漏れを減らす」「親,保護者,本人のHPVワクチンに対する理解の向上」「HPVワクチ ン接種へのアクセスを最大限向上させる」などが示されている。

「HPVワクチンを接種させなかった理由トップ5」男女で違い
  今回のMMWRでは対象年齢の男女の親への「HPVワクチンを子供に接種させなかった理由トップ5」が記載。それによると,女児の親では「知らなかった (15.5%)」がトップ,次いで「必要ない(14.7%)」「安全性・有害事象の懸念(14.2%)」「奨められなかった(13.0%)」「性 的に活発でない(11.3%)」と続いた。
 一方,男児の親では「奨められなかった(22.8%)」がトップ。次いで「必要ない(17.9%)」「知らなかった(15.5%)」そして「性 的に活発でない(7.7%)」「安全性・有害事象の懸念(6.9%)」の割合は女児の親に比べ少なかった。
 HPVワクチンの安全制への懸念についてCDCは「導入後8年のモニタリングから6,700万回以上の接種が行われている中で安全性への重大な 懸念はないと説明。
  CDCは子供のHPVワクチンを受けさせない理由の一部に「(医師から)奨められなかった」ことが含まれていることを重視。子供に接種を受けさせた親の 72~74%が医師から接種を奨められていたのに対し,受けさせなかった親では医師からの推奨があった割合は女児の場合52%,男児の場合では 26%にとどまっていたとのデータを紹介している。

「親や医療者は子供をHPV関連がんから守る重要人物」
 CDCは医師に対し「全ての対象年齢の子供にTdaPや髄膜炎菌ワクチン同様,HPVワクチンの接種を強く推奨することが望ましい」と述べた 他,健診のたびに医師や看護師がワクチンの接種状況を確認することで接種率を向上させることができるのではないかと提案している。
  この調査結果を受け,CDCは新たなリーフレットも作成(図)。「毎年2万7,000人がHPV関連がんに罹患している。これは1年で20分に1人が罹患 しているに等しい」「10歳代前半で百日咳と髄膜炎と同時に接種すればHPV感染も防げる」「11~12歳での接種がより高い抗体上昇を獲得でき る」といった文言がインフォグラフィックとともに記されている。その上で「親や医療者は子供をHPV関連がんから守る重要人物」と呼びかけてい る。
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