免許とか学歴とか関係なく,生活者が生活から得られた戦略は,わかりやすさ=説得力=影響力の点で,学術機関や職業集団から生まれた戦略など,足元にも及ばない.みのもんたの人気の秘密はそこにある.日常生活動作障害に基づく神経疾患の問診・診断戦略は,やはり生活者への訴求力を意図している.
みのもんたを熱心に見る患者が私の外来に来て,自分の日常生活動作の障害を次々と言い当てられて驚く.そんな患者の姿を知った医者は,みのもんたには反感は持っていたとしても,そんな反感とは別に,私の真似をして生活者戦略を採用する.そして,それが当たるのを体験して,私を尊敬の眼差しで見てくれるようになり,私の話を熱心に聴いてくれる.そこまで実現できれば,私も,私の話を熱心に聴いてくれる人も,みのもんたに勝っていることになる.
自分には,誰にも真似できない特別な知識,特殊な技能を持っているとひけらかしているうちは,嫉妬と反感を買うことはできても,尊敬の念は得られないし,影響力を行使することも決してできない.世界征服の基本戦略は,"あなたにもできます.お金は要りません.ただで教えてあげます" だ.
実際にこのやり方で,神経内科教育では5年もたたないうちに全国制覇が完成したことは,何よりの証拠である.実際には,2003年に"大盤解説"のコンセプトで始めた時点で,全国制覇は見えていた,あとは単に時間の問題だけで,それも2005年にはほぼ完成していた。