ハンマー寅さん

ニュース・天気予報以外は滅多にテレビを見ないのだが,たまたま,NHK BSの2004年1月17日の「地球に好奇心」で、「放浪職人“ヴァルツ”が行く ードイツ・若者たちの大工修行ー」という番組に釘付けになった.ドイツに800年前から伝わる大工のマイスター制度のしきたりについて紹介していた。職人になることを志した若者が3年間、自分の腕を試す旅に出て,旅先で,面識のない親方に自分を売り込み、運良く仕事が見つかれば,何日か,何ヶ月か,住み込みで働けるが,仕事がなければ野宿をする,厳しい放浪がまるで巡礼を思わせた。大工でさえ,このような厳しい環境での技術の習得を目指す.まして況や,命のやりとりの職人においておや.

2004年4月2日に亡くなったリヤカー寅さん(享年78)は,移動駄菓子屋として,全国を行脚していた旅の空の途中,交通事故に遭っての客死だった.こういう死に方に憧れる人は少なくないだろう.お話キャラバン、旅回りのサーカス 旅芸人・・・臨床を求めて,あるいは臨床から逃避して,転々としてきた自分の姿に相応しいのは,こういう死に方ではないかと思った.車寅次郎のように、鞄一つの中身はハンマー、ペンライト、眼底鏡と爪楊枝。神経学の楽しさを伝道するための旅の空での思いがけない死とは,何と甘美な響きだろうか.

まあ,別に無理に死ぬ必要はない.渥美 清の享年齢ぐらいまでは,全国行脚をしたいものだ.2004年はすでに1月と4月に名古屋,9月に岡山と,巡業の予定は順調に入っている.少なくとも回数は寅さんシリーズを凌げればと思っている.

マドンナ?患者さんだね.→2004年1月名古屋巡業の写真:はるばる広島,岡山,松本から来てくれた学生さんと地元名古屋の学生さん,亀井内科呼吸器科のスタッフと,患者さんとその奥様(参考:虎の穴から

神経疾患の出前授業

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