aとtheの使い分け:私の場合

たまたまある会合で話題になったので,私自身はどうしているかをお話しました.下記がそのまとめです.

aとtheの使い分けとは,文脈の中でその名詞をどのように位置づけるか?特定のものではなく一般論なのか,それとも前後の文脈で特定のものを意味するのか?といった判断を,常に意識することであり,その書き手の意識を読者にわかりやすく,簡単に提示するツールが冠詞なのだと思います.

原則1.自分の意味するものが読み手と共有するという目的意識を持つ.例えば小説の書き方を解説する文章を書いている場合を考える.
●a phrase in a chapter of a book:「本」も「章」も「文」も一般論
●the phrase in the chapter of the book:「我が輩は猫である.名前はまだない」のように,特定の本の特定の章の特定の文
● a phrase in the chapter of the book:(状況は想像しにくいが,敢えて言えば)その本の特定の章にある文章一般について論じる場合.通常は,phrases in the chapter of the bookとなるところだが,名詞単数形に不定冠詞をつけて,集合名詞的な意味に用いることもある.

こうして考えていくと,the phrase in a chapterとか,the chapter of a bookとかいう表現は,とてもおかしなことがわかります.theかaか迷った時は,上記の例示を思い出して,未来の読者に対して,自分は何を伝えたいのかを明確に意識すると,ほとんどの場合,どちらかは自然に決まってきます.

原則2.日本人にはaとtheの使い分けが難しい,というのは正確な表現ではありません.知らず知らずのうちに,無頓着になっているのです.ではどうして無頓着になっているかというと,日本語には冠詞がないためにaとtheの使い分けが意識できないというのはもちろんですが,名詞に単数形と複数形の区別がないということも,実は大きな原因になっています.ここを逆手に取ります.
●自分の今使った名詞は,単数か複数か?
●日本語に翻訳した時,その名詞に連体詞(この,あの,その)を使うか?
を常に問いかけるようにすることで,私の場合,迷うことが非常に少なくなりました.

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