患者申出療養
ここにもまたビジネスチャンスが

混合診療禁止っていうのは、日本人独自の知恵というより、厚労省の役人の英知の結晶だった。それは規制でも何でもなかった。それを患者を診たことのない、頭の中に銭勘定しかない、規制改革会議とやらの連中が、「国民の皆様のため」と称して潰した。海の物とも山の物ともわからない、高い広告料をかけて全国紙の一面の下の方によく出てくるような、いかがわしい代物が病院内に飛び交うのだ。有効性が認められないだけならまだいい。そんな「医薬品」に大枚をはたく患者様はそれを承知なのだから。(でも、それだけお金を持っていれば、お医者さんの負担を気遣って、115万円よりも3万円だけ高い自由診療の方を選ぶと思うよ)。
下記の記事の中では、「誰が得をする制度なのか」と疑問が投げかけられている。確かに一見誰も得をしない制度のように見えるが、実は患者も医者も役所も企業も全て食い物にして収益を上げる連中がいる。
承認された医薬品でさえ「何か」は必ず起こる。もちろん、患者申出療養で使われる「医薬品」(「医療機器」)のリスクは、はるかに高い。では患者申出療養で死亡事故が起こったら、誰が得をするのだろうかと考えたら、責任追及の専門家達であることは、今や誰の目にも明らかだ。
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「財界人の意見で政策決定は危険」患者申出療養制度、患者会が討論
M3.com レポート 2015年9月18日 (金)配信成相通子(m3.com編集部)
http://www.m3.com/news/iryoishin/359017

 来年4月に施行される患者申出療養制度について、日本難病・疾病団体協議会(JPA)と全国がん患者団体連合会(全がん連)が9月18日に、東京・永田町の国会議員会館内で討論会を開いた。団体の代表者のほか、ジャーナリストの堤未果氏らが出席し、制度の課題について話し合った。
堤未果氏は「厚労省よりも、財界で占められた有識者会議の人選制度にメスが必要」と話した。
 堤未果氏は、アメリカで医療費高騰に苦しむ患者や医療現場の問題を描いた『沈みゆく大国 アメリカ』の著者。患者申出療養制度が規制改革会議の提案だったことに触れ、「財界人をメーンに構成された有識者会議の提案が政策になるのは危険だ」と指摘。このままの方向で規制改革が進めば、「国民皆保険制度が形骸化し、アメリカのようになってしまう」と強い危機感を示した。
 出席したのは、堤氏のほか、JPA副代表理事の高本久氏、同理事会参与の伊藤たてお氏、全がん連理事長の天野慎介氏、同関係団体代表の眞島喜幸氏、厚生労働省保険局医療課企画官の佐々木健氏、国立がん研究センター企画戦略局長・先進医療評価室長の藤原康弘氏(順不同)。
 患者団体は、9月9日の中央社会保険医療協議会総会で報告した意見書の内容について説明し(『患者申出療養、「患者は望んでいない」』を参照)、懸念や課題を指摘。患者が望むのは有効性や安全性が確認された医療が保険適用されることだと強調し、保険外併用療養制度である患者申出療養制度が導入されても、先進医療のように何年も結論が出ないまま放置せず、速やかに薬事承認、保険収載につながるように求めた。また、高額な患者負担のフォローや有害事象発生時の対策の徹底も重要だと改めて指摘した。

誰が高額費用を負担?
 患者申出療養を実施する臨床研究中核病院に認定されている、国立がん研究センターの藤原氏は、制度の課題として、使用される高額な薬剤を患者が負担できない場合の対応や、臨床研究にまつわる膨大なコストの負担者が不明確な点を挙げた。
 患者申出療養制度では、日本で未承認・適用外の医薬品や治療方法について、当該の薬代などは患者が自己負担するが、それ以外の診断・治療費などに保険が適用できる。患者は、臨床研究中核病院の意見書を添付した申請書を厚生労働大臣に申し出て、専門機関が判断する。
 「臨床研究中核病院が窓口になるというが、その経費も時間もない」と藤原氏。藤原氏によると、現行のまま患者申出療養制度で患者が相談に来ても、診療報酬上の基本診療料(例えば、200床未満の再診料は72点)のみ。1時間診ても2時間診ても安価な点数しか算定できないことから、「休みなく働いていて時間もない中、患者のためにやろうと思ったら、私は死んじゃうのかなと思う」と話した。
 臨床研究中核病院は研究計画の作成などを担うが、その負担も考慮されていないことも藤原氏は指摘。研究計画の作成は数カ月以上かかり、国立がん研究センターでは来年春に向けて今から申請がありそうな薬の計画作りをしているという。企業主導の治験は企業が患者1人当たり150万~200万円を負担し、それを人件費や患者のフォローなどに使っていると紹介し、「医療機関にやりなさいといっても経費がない。やり損になる」として診療報酬上の加算が必要だと訴えた。
 天野氏は、「ランニングコストも大きいということだが、これも患者が負担するとなると想像もできない」とコメント。藤原氏は、患者申出療養制度とそれを利用しない自由診療で、ある未承認の抗がん剤を使った時の試算を紹介。前者は115万円、後者は118万円とほとんど差がないことを紹介し、早期の薬事承認と保険適用の重要性を強調した。

「誰が得する制度なのか」
 堤氏は、米国では製薬会社や保険会社が政治的に大きな力を持ち、薬剤費や民間の保険料が高く、個人破産の約6割が医療費によるものだと紹介。医療を受けられず、重症化してからERに駆けこむために、医療費が増大し財政赤字を押し上げていることや、医療機関の持ち出しの負担も大きく、患者と企業の板挟みとなる医師の自殺率が高いことを説明した。
 堤氏によると、米国の製薬企業や保険会社はさらに国外にも市場を拡大しようとしており、日本もターゲットになっている。社会保険制度でコントロールされている日本約40兆円の医療費は、自由化すれば100兆円に拡大すると投資家らは見ており、国民皆保険制度が形骸化し薬剤費が高くなれば、大きな投資チャンスになるという。
 「医療が自由化の方向に進んでいるのは間違いない。そういう法改正の政策の骨子を決めているのが、経済界がメインの有識者会議。患者のためと言いながら、患者の不安は解消されず、医療格差ができ、医師の負担も考慮されていない。安全審査もどんどん短縮していく。保険収載までの整備も進んでいないのに誰が得するのかが、どの角度からみても分からない。財界主導で提案された制度で誰が得するのか、しっかり検証した上で、制度自体を見直すべき」と堤氏は強く求めた。

最新医療をアジアの国で受診? 
佐々木企画官は「患者団体の懸念や心配は我々も共有している」と述べ、より良い制度に向けた運営をすると約束した。
 佐々木企画官は、保険適用までの道筋が不明確との指摘に対し、「保険適用するかどうかをきちんと見極めるための療養だと法律の本文に書いてある」と強調し、保険適用を促進するのが制度の趣旨であり、患者が安心して使えるように運営すると述べた。
 これに対して藤原氏は疑問をぶつけた。自身も薬事承認の審査をした経験から、「現在の薬事承認の制度では、承認は簡単にはできない。先進医療の成果や患者申出療養制度の成果も審査に使えると明示されておらず、承認のハードルを変えないと患者申出療養で出てきた結果を薬事承認できない」と制度上の問題があることを指摘した。
 また、製薬会社の立場で考えると、難治性がんや希少がんは市場が小さく開発するメリットが小さいことも藤原氏は指摘。薬事承認されると市販後のフォローも必要となり、薬の売上よりも維持費用が高くなることから、「海外の企業にとっては、個人輸入で使ってもらうだけの方がいいだろう」と述べ、企業側も難治性がんや希少がんの未承認薬について薬事申請、保険適用に対して積極的ではない可能性を指摘した。
 天野氏は「患者申出療養制度の導入で、むしろ承認にブレーキとの話はショックだ」と述べ、佐々木氏の見解を求めた。佐々木氏は、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議で、医療上の必要性が高いと認められた薬は新薬創出加算という企業へのインセンティブがつくことなどから、「企業は保険診療としてやるべきものは放っておかないだろう」と期待を述べた。
 藤原氏は、これに対して自身の推測だと前置きした上で、「日本の薬事承認はグローバルでは関係ない。日本の企業は薬事承認したいと思うだろうが、外国人はそう考えない。日本の人口が減り国力が落ちる中で、ASEANへの投資が増える。いい医療を受けようと思ったらタイやシンガポールで受けるという方向性になるかもしれない」と話した。
 新薬創出加算についても、「加算だけではなくて、患者申出療養や医師主導の治験を経て薬事承認につながったものは、ニーズがあるのに開発しなかったということなので、薬価を下げて、企業にペナルティを与える仕組みにすべきではないか」(藤原氏)と提案した。
 最後に、患者団体の今後の役割として「リサーチ・アドボカシー活動」(藤原氏)、「医師や厚労省、マスコミを巻き込んで声を挙げること」(堤氏)といった声が出た。
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