スコットランドに関する本

ここでは紹介するのは日本の本だけです.スコットランドに関する資料で英語の本やCD-ROMに興味がある人は,John Smith & Sonsamazon.co.ukを覗いてみて下さい.

石井 理恵子/杉本 優著 スコットランド ミステリー&ファンタジーツアー 新紀元社(1600円税別)
スコットランドという国の特質を思えば,本当は,こういう本はもっと以前に出ているべきだった.それが,ようやく出てきてくれたか,というのが,本書を手にした最初の感想である.そう思いながら,少し読み進めただけで,次に感じたのは,こういう本が出てくれないかと思いつつ,長い間じらされた甲斐があったという,安堵感と充実感だった.

なによりも取材が非常にしっかりしている.ミステリーやファンタジーの類は,地域に根付いた話だから,現地取材が命である.机上で作り上げたやっつけ仕事は,読者にすぐ見破られる.しかし,かつて,ハイランドの真っ只中で,そぼ降る雨に打たれ,霧に包囲されながら,ようやくたどり着いた湖畔の廃城で,2時間前とは打って変わった陽光に出会った経験を繰り返してきた身には,本書のどのページにも,この土地を愛する著者が,こまめに歩いて拾った話だけが描かれていることがよくわかる.

だから,私と同様の中年のおじさん方も,ミステリー,ファンタジーという言葉から,女子供の本と,いかにもおじさん風の軽率な判断をするなかれ.スコットランドが,年齢,性別を問わず,多くの人を魅了すると同様に,おじさん方にとっても,この本は大いなる魅力である.

石井 理恵子著 ”インヴァネスのB&Bからスコットランドふらふら紀行” 新紀元社(1,300円税別)
本格的なスコットランド紹介なのにとても楽しい本(というより写真集に近いかな)です.とにかく, 写真を眺めるだけでも楽しい.というのは,その写真が,通り一遍の観光写真ではなく,映し出す内容が優れているからです.スコットランド人の楽しみを非常にうまく捉えています.こんな楽しい場所なら行ってみたいという気にさせます.風景や建物の写真に終始せず,実際に楽しんでいる人々の写真が数多く掲載されていることは,著者が,ただの観光旅行ではなく,楽しい人々と親密に交流した証拠でありましょう.スコットランドでの楽しみは何か,そう聞かれたら,まず,この本を薦めます.
村川荘兵衛写真事務所(この本の写真の多くに貢献)

富田理恵著 「スコットランド 世界歴史の旅」 山川出版社 (2,300円税別)
内容が本格的なのに,気軽に読める体裁です.スコットランド旅行者は必携でしょう.旅先へ持っていくには絶好の大きさ,厚さ.たくさんの写真が入っている点は旅行書としても有用なことを示しています.かといって,内容が通り一遍ということは決してなく,むしろ逆に,日本語のスコットランド史の本としては最高水準でしょう.単なる観光旅行を,充実したフィールドワークに変えてくれる本です.

スコットランド史ーその意義と可能性ーロザリンド・ミチスン編.富田理恵、家入葉子訳 未来社 1998年.日本にはまともなスコットランド史の本がこれまでなかったので,朗報です.安っぽいナショナリズムの偏向のない,冷静な目でのスコットランド史です.

ただ単に出来事だけをずらずら書き並べただけでは歴史とは言えません.その事実の背景にあるものを考察し,仮説を立て,解明しなければ,歴史とは呼べません.そういった意味で私はこの本で初めてスコットランド史に出会いました.これからも私はいろいろな形でスコットランドに関わっていくつもりですが,この本のおかげでその関わり方が一層充実したものになるでしょう.訳者はスコットランドに対する日本人の理解を深めるために大変素晴らしい仕事をしたのです.

スコットランド物語 (The Story of Scotland).ナイジェル・トランター (Nigel Tranter)著,杉本 優訳.大修館書店.2600円.何て大胆な題名の本だろう.でもそれだけの内容があることは読めばわかる.ただ,一つだけ不思議なことがある.著者はグラスゴー生まれのばりばりのスコットランド人らしいが,Nigelというのは純イングランド風名前なのだ.

とびきり哀しいスコットランド史(Scotland Bloody Scotland).フランクレンウィック著(Frank Renwick).小林章夫訳.筑摩書房:とぼけた挿し絵からふざけた本と考えてはならない.スコットランド史の主要人物を中心によく書けている.スコットランドの歴史の本特有のナショナリズムもうまく隠してある.

とびきり愉快なイギリス史(The very bloody history of Britain)ジョン・ファーマン (John Farman)尾崎まこと訳.筑摩書房:スコットランドの歴史を考える上でイングランドの歴史は是非とも知っておかなくてはならない.読みやすく,わかりやすいイングランド史の本の決定版と言えばこれ.

スコットランド王国史話.森 護 著.大修館書店:日本人の手によるただ一つのスコットランドの歴史に関する本.ちょっと退屈.2400円.

Scotland A Concise History B.C. to 1990. James Halliday. Gordon Wright Publishing, Edinburgh. ISBN 0-903065-66-5:スコットランドのナショナリズムが少し鼻につくが,スコットランド史を手軽に勉強できる.4.95ポンド(1992年).

イギリス古事物語.加藤憲市著.大修館書店.イングランドのことばかりだが,歴史上の興味深い出来事を,泥棒,脱獄,海賊,魔女狩り,幽霊などを通して語っているので,非常に面白く読める.4120円(1994年)

生活
地球の暮らし方.地球の歩き方編集室編.ダイヤモンド社.2200円(1995年).あなたが留学や転勤を控えているのなら,是非とも必要な本.

英国を知る辞典.Adrian Room. 渡邊時夫監訳.研究社.(Dictionary of Britain. Adrian Room. Oxford University Press):英国文化に関す るもろもろの事項を確認するとき,辞書として重宝している.3600円(1988年)

ビジネストラベルガイド:イギリス.角川書店.The Economist社のBuisiness Traveller's Guides. Britainの訳本である.手元のものは1985年だが,本屋で見かけないので絶版になっているかも知れない.データはやや古くなっているが,英国の政治,経済,文化の概要がとてもよくまとまって書けているので,英国に住む人にとっては大変便利な本だ.決してビジネスマンだけの本ではない.英国の各都市の概要も,とてもわかりやすく書けている.古本でも是非手に入れたい本だ.

裸にされたイギリス人ー在英外国人が見た英国像ー.草思社.キャスリーン・ マクロン (Catherine Macklon) 著,柳本正人訳.1800円(1996年):決して偏った見方だけを紹介しているわけではないが,英国に住んだことのあるい人なら,思い当たることが沢山あって,うんうんうなずきながら読んでしまう部分も多いだろう.

ユーモア:もしあなたが英国に少しでも関心があるのなら,英国文化の最も重要な構成要素であるユーモアとは何か知らなくてはならない.
無遠慮な文化誌.フランク・ミューア著 中西秀男訳 筑摩書房(An Irrelevant Companion to Social History. Frank Muir. A P Watt. London.):芸術,教育,食べ物などに対する古今東西の名言集を集めてコメントを加えた本.サミュエル・ジョンソンからジョージ・バーナード・ショーまで,British Sense of Humour溢れる本である.秋の夜長の友としては,relevant companionだ.4800円(1992年)

世界病気博物誌.リチャード・ゴードン著.倉俣トーマス旭,小林武夫訳.時空出版(2000円)医学を題材にしているが,医学の知識がなくても十分楽しめる.これもBritish sense of humourの神髄を見せてくれる本で,爆笑また爆笑である.2000円(1991年)

小説
ひそやかな村.ダグラス・ダン著(Secret villages by Douglas Dunn).中野康司訳.白水社.私の様な単純な人間には何やら謎めいた話の多い短編集だが,中には”カヌー”のようなわかりやすい作品もある.スコットランドを何回か訪れ,彼の地になじんだ人にはそこに描かれている風景がとても懐かしく思われる.スコットランドの田舎の普通の人が何を考え,何をしているのか知るためにはとてもいい本.980円(1996年)

はるかスコットランドの丘を越えて.ローズマリー・サトクリフ著.早川敦子訳.ほるぷ出版.1800円(1994年)(原本はBonnie Dundee by Rosemary Sutcliff. Puffin Books 1985).17世紀半ばのスコットランドの勇将,ジョン・グレアム・クレイヴァアハウスの物語.スコットランドを愛する人の心をくすぐる歴史小説.ただし,スコットランド対イングランドという単純な図式では決して理解できない,複雑な時代背景の知識が必要だ.

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