老老医療

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【島根】在宅診療件数が減少開業医高齢化背景に打開策見いだせず 山陰中央新報2019年5月8日
浜田市で開業医の高齢化が進み、在宅診療の診療件数が減っている。住民の高齢化で需要が高まり、医師が受け持ちの患者を増やして対応しているが、医師側も高齢化が見込まれており、打開策は見つかっていない。
2018年1月に島根県が実施した調査によると、浜田医療圏(浜田、江津両市)で在宅医療を受ける人は727人。13年調査の936人と比べて200人以上減少した。背景には、在宅医療を担う医師数の減少がある。
浜田市医師会によると、会員の平均年齢は66・02歳で、14年の63・24歳と比べて高齢化が進んでいる。医師会の斎藤寛治会長(69)は「医師も体力が衰えて診療範囲を狭めざるを得ない。地域の人口減少も進み、新たに開業しようという機運にもなりにくい」と説明する。
在宅診療を受ける患者は要介護認定が低く、特別養護老人ホームに入所できない高齢夫婦の世帯が多いという。約90人の在宅診療を受け持つ浜田市治和町の開業医、都仁哉医師(57)は「自宅で最期を迎えたいという需要はとても高い」と強調。一方で、これ以上、受け持つ人数を増やすのは厳しいと明かし「10年後に今のペースが維持できるとは思えない」と将来を懸念する。
長年、県や浜田市と連携し、高齢者の療養環境づくりに尽力する島田康夫医師(79)=浜田市殿町=は「特定の医師を疲弊させないよう、負担を補い合う環境を模索したい」と話すが、医師会、行政ともに抜本策は見いだせていない。
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【香川】県医師会:婚活支援 開業医、後継ぎ不足で 昨年度は廃業24件 2月の「お見合い」40人参加 毎日新聞 2019年5月8日
 開業医の「後継ぎ」を確保して閉院を回避し、地域の医療拠点を守ろうと、県医師会(久米川啓会長)が医師やその家族を対象にした結婚支援事業「県医師会がステキな出会い応援します!」に取り組んでいる。県医師会は「開業医の子が医師でなくても、結婚相手が医師であれば後を継いでくれる可能性がある」としており、「後継ぎ不在」に悩む開業医の「処方箋」となるか注目されている。
 県医師会会員1906人(4月1日現在)のうち、病院や診療所を営む開業医は717人(同)と約4割にあたる。厚生労働省の統計によると、県内診療所の開設者または代表者の平均年齢(2016年調査)は61・8歳で、全体の4割弱が65歳以上だ。
 県医師会によると、国民皆保険制度が確立された後の1960年代後半から70年代後半にかけて開業医が増加し、地域医療を支える「かかりつけ医」として活躍してきた。ところが、この頃に開業した医師の高齢化が進み、後継ぎがいないといった理由で閉院する事態が徐々に増加。県医務国保課によると、廃業した県内の病院や診療所はここ数年間は年15件前後だったが、2018年度は24件に達した。
 一方で、2004年に導入された新研修医制度により、自由に臨床研修の場を選べるようになったことから、患者や症例数の多さで総合病院のある都心部に出る若い研修医が増加。これにより人材が県外に流出し、県医師会は結果的に、地方では「適齢期」にあたる独身医師の絶対数が減ったと危機感を募らせている。
 そこで県医師会が積極的に仲介して出会いの場を作ろうと、久米川会長が支援事業を提案。会員の未婚の子やきょうだい、県外の独身医師も対象にし、後継ぎがいない開業医の子と県内の地域医療に携わることを希望する医師との出会いの場にもなればと、事業を始めた。
 今年2月に初の“お見合いパーティー”を高松市内で開催したところ、男女合わせて40人が集まり、男女が連絡先を和やかに交換するといった場面もあったという。医師会はその後のカップル成立を追跡調査していないものの、手応えは感じているといい、今後も年に1、2回ほどのペースで開く予定だ。
 久米川会長は「多忙で出会いの場が限られる医師は男女ともに多い。婚活支援という形で、地域医療を支える人を増やしたい」と話している。
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「後継者がいないから閉める」というわけにはいかない.かといって,売れば売ったで「なぜあんなところに売ったのか」と言われる.
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日医総研ワーキングペーパーNo. 422 医業承継の現状と課題 堤 信之、坂口 一樹

医療機関にも後継者問題 高齢化で第三者譲渡増加 地域診療の維持に懸念 共同通信 2019.5.4
https://www.47news.jp/medical/shinseiki/3522920.html

 中小企業で悩みの種になっている経営者の高齢化と後継者不足が、医療機関でも起こっていることが、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の調査研究で明らかになった。特に小さな診療所が深刻で、地域医療の維持に黄信号がともる事態。研究チームは「早急に実態の解明と、スムーズな継承のための対策が求められる」としている。

▽有床診療所は半減
 調査した日医総研の堤信之、坂口一樹両主任研究員によると、20床以上の「病院」は1990年ごろをピークに減り続け、19床以下の「有床診療所」は2000年以降で半減。入院ベッドがない「無床診療所」は増えたが、11~14年には廃止・休止が急増し、危うい兆候があるという。
 民間の信用調査会社に日医総研が発注した調査では、後継者が決まっていないのは診療所で86%、病院で68%。全業種を合計した67%に比べ、特に診療所で後継者不足が歴然となった。後継者未定の割合は地域差が大きく、北海道・東北、関東甲信越、近畿で高く、中四国、九州は低かった。
 原因の一つは、医療機関では「開設者」「法人代表者」と呼ばれる経営者の高齢化だ。18年の帝国データバンク調べでは、04年から16年の間に平均年齢は病院で62歳から64歳に、診療所でも59歳から61歳になった。
 医療機関の経営者は原則として医師であることが求められるが、若手や中堅の医師は他業種と同様、開業するリスクを避けようとし、勤務医志向が強い。親族や子どもへの継承はまだまだ多いものの、第三者へのM&A(合併・買収)が明らかに増えているという。

▽苦労させられない
 病院の継承を数多く手掛ける税理士法人山田&パートナーズ(東京)医療事業部の税理士、上田峰久さんは、第三者譲渡が増える要因として、経営者の高齢化とともに病院建物の老朽化もあるとみる。相続で継承することを選べば、将来の建て替えに伴う多額の負債を後継者に背負わせることになる。「経営者が地域医療の維持を重視すれば、資金や人材が豊富な医療法人などへの売却を考えるのは自然なことだ」という。
 上田さんによると、譲渡の課題は医師や看護師らに残ってもらうこと。代替わりを機にスタッフが去るリスクがあり、新しい経営者には経営理念を丁寧に説明してもらっているという。
 診療所のM&Aを支援している東京の税理士、鈴木克己さんは「経営者自身が『自分と同じ苦労を身内にさせられない』と、第三者の買い手を探すケースもある」と話す。医師への融資審査も厳しくなり、買い手側も一から開業するよりリスクが小さい。
 診療所をうまく継承するために、鈴木さんは売り手と買い手の医師が半年から1年ぐらいの間、共に診察に当たることを勧める。経営者の考え方や診療所の地域での役割が受け継がれ、患者も新体制に早く慣れるという。

▽手引書作成へ
 鈴木さんは「医療機関は“社会的公器”だ。売り手には、譲渡後に周辺の医師や患者から『なぜあんなところに売ったのか』と言われたくないとの気持ちが強い」という。「地域医療を守る観点から、医師会が仲介の労を執ってもいいのではないか」と提案した。
 堤さんらは「きちんとした統計がなく、若い医師の意識も把握されていない。早急に調べるべきだ」と指摘。日本医師会の小玉弘之常任理事は「継承が滞れば医療圏の衰退、崩壊につながりかねない。医師の偏在が強い地方ほど深刻で、学校医の確保や予防接種などにも影響が出かねない」と憂慮する。日医総研では、医業継承の段取りや注意点、事例をまとめた手引書の作成を検討中だ。
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