拝啓
日医総研 医療安全推進者養成講座担当御中
第三回(今回)医療安全推進者養成講座を受講しております新潟県の池田(受講者番号0310034)と申します.第五教科,リスクマネジメント概論で,明らかな誤りがあったので,指摘させていただきます.
それは,リスクマネジメントの目的が,”組織を損失から守ること”だと,再三主張されていることです.この主張は,教科書24ページ,ビデオフリップ10,そして,演習問題の問5と,あちこちに出てきます.私は我が目を疑いました.これは,医療事故で刑事告訴された病院幹部の主張そのものです.
そこには患者中心主義のかけらも見られません.このような時代錯誤的な主張が,こともあろうに医療安全推進者養成講座の教科書に堂々と記載されていることに驚いております.
この一言だけで,本講座の教育の質が疑われてしまいます.”リスクマネジメントの目的は組織を損失から守ること” この一言だけで,講座全体の意義が失われてしまうぐらい重大な問題です.少なくとも私は,たとえこの講座を修了したとしても,それを誇りに思うことはできません.
このような記述は,患者団体やメディアから攻撃を受けるだけで,日医にとっても,受講者にとっても,百害あって一利無しです.
より適切な形,つまり,守るのは組織でなく患者であることをはっきり主張する教育をお願いいたします.
敬具
池田正行
国立犀潟病院 臨床研究部
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下記がその回答だった.この回答をどう考えるか,それはあなた自身の楽しみに残しておこう.
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本講座の受講、またご質問、ありがとうございます。
お返事が遅くなってしまったことをお詫びし、早速ですが、以下お返事させていただ
きます。
「患者中心主義のかけらも見られない」「時代錯誤的な主張」といった、大変厳しい
お言葉をいただきましたが、私なりの意見を述べさせていただきます。
いただいたご指摘は、この『概論』で解説するリスクマネジメントを、いわゆる日本
の医療の現場で一般的に使われている「事故防止・安全管理の同義語としての読み替
え」ではなくその本来の背景から解説していくことにしようとしたときから、「誤解
を受けることにならないか(Q15-4)」、懸念していたことでした。
であればこそ、ご指摘の24ページは、「医療におけるリスクマネジメント?アメリ
カの発展経緯と実情はどうなっているか?」(第2章)について紹介したものです
が、その24ページならびに25ページのQ15(1?4)を使って、表6にはアンダーラ
インを引きながら、「医療の質の確保」の重要性、また「誤解を受けることにならな
いのか」という問いかけをしながら、「社会に認められる活動になりえるのは医療の
質の確保を前提にしているから」ということを強調させていただきました。
また、「組織における取り組みの方向」(第3章)では、そうしたアメリカのリスク
マネジメントを踏まえたうえで、38ページのQ26でも、それぞれの組織で取り組む
際にはそれぞれの組織でリスクマネジメントの目的を設定すること、そのときにも、
「損失防止だけを目的としているわけではない点を明確にすること」「訴訟を想定し
た保身のテクニックではないことを組織で自己確認することが重要であること」を確
認させていただきました。当然、組織での検討の結果、その目的を「『組織に与える
損失を最小に抑える』はなじまない。『患者(と職員)の安全と安心の確保』とす
る」ことにされてかまわないわけです。大事なことは、「うちの病院における目的」
をそれぞれの組織で検討して決めていくことだと思います。
ご指摘の点については、それなり必要な解説と強調をしておいたつもりですが、まだ
言葉が足りなかったかもしれません。あらためて注意していきたいと思っています。
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