治療する際に、エンドポイント、リスク・ベネフィットバランスを明確にする必要があるのならば、治療の大前提となる診断には尚更、エンドポイント、リスク・ベネフィットバランスを明確にする必要がある。
といっても、肺癌でない人に抗がん剤を投与してしまうような、誰にでもわかる事例を議論するつもりはもちろんない。問題となるのは、グレーゾーンが極めて広い診断のカットオフポイントを恣意的に決めてしまう場合である。生活習慣病や精神疾患でしばしば問題となる。
このカットオフポイントの操作で、全国民の半分に対して”病気”のラベルを貼って、医療機関を受診しろ・健康診断を受けろ・薬を飲めと命令することも可能だ。
リテラシーを鍛えるには便利な論点ではある。
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精神疾患診断マニュアルDSM-5作成委員会が2つの診断基準提案を撤回(Biotoday
2012-05-14)
精神疾患診断マニュアル第5版の作成に取り組んでいる医師委員会は裏づけがないとして2つの診断基準提案を撤回しました。
精神疾患リスクが高い患者を”Attenuated psychosis syndrome”と診断することが提案されていましたが、このような基準は不要な治療を招きうると懸念されていました。
また、撤回されたもう1つの診断基準”mixed anxiety depressive disorder”は診断基準が不明瞭であり、単にちょっと神経質なだけの人も診断されてしまう恐れがありました。
自閉症の定義を狭める提案については撤回されていません。
Psychiatrists say diagnosis manual needs overhaul
http://www.reuters.com/article/2012/05/10/us-psychiatry-dsm-idUSBRE8490WQ20120510
DSM-5 Panel Drops Two Controversial Diagnoses
http://firstwatch.jwatch.org/cgi/content/full/2012/509/3
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