医療ジャーナリズムとは?
これだけの質の記事が書ける奴がいるか? ただそれだけの問題だ。日経のFTの記事同様、日本の新聞の最大の利点は、まともな海外の記事が日本語で読めることになってしまっている。最も日経のFTの記事は借り物のようだがね。
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【アメリカ】アメリカの落日 収入格差と悲惨な現実 ニューヨーク・タイムズ・ニュースサービス 2015年5月24日
アメリカは落日なのか……
生まれたばかりの女の子の平均寿命を比べてみると、アメリカの場合は35年前の時点で、先進工業国34カ国(現在の経済協力開発機構=OECD)のなかで13番目に長かった。それが今では29番目に落ち込んでしまった。
アメリカの幼児死亡率は、1980年ではドイツ(当時の西ドイツ)とほぼ同じだった。しかし現在のアメリカの幼児死亡率は、ドイツと比べて2倍も高い。
「死亡率、生存率、寿命。ほとんどすべての分野において、アメリカの地位は高所得の国々の中では最低ないし最低ランクに近い」。これは、全米研究評議会(NRC)と米国医学研究所(IOM)による保健問題報告書の指摘だ。
ここで示されたさまざまな統計数字で最も衝撃的なのは、単にアメリカの保健状態が悪いということではない。アメリカの保健状態は、健康管理や医療技術の点
で劣っている国々と比較しても不健全だという事実がショッキングなのだ。アメリカの地位が、かくも急速に落ち込んでしまったことに当惑せざるを得ない。
急な失墜の主な原因を、アメリカの医師や病院に押し付けるわけにはいかない。
アメリカは、10代の出産率が先進国で最も高く、フランスより7倍も高率だ。子ども4人のうち1人は父母のどちらかがいないが、この比率も先進国のトップである。子どもの貧困率は20%で、OECD加盟34カ国のうち下から6番目に悪い。
成人についてみてみると、1千人中の7人は刑務所に入っている。他の裕福な民主主義諸国と比べると5倍以上の投獄率だし、アメリカの40年前よりも3倍以上になった。
アメリカの保健医療システムは、さまざまな面において世界で最も進んでいる。しかし、どんなにすばらしい医療技術でも問題を処理できない。
シカゴ大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)、南カリフォルニア大学のエコノミストたちが最新の調査報告書で指摘しているように、アメリカの幼児死亡率が高い問題は、多くが「いき過ぎた格差」に起因する。
白人で大学教育を受け、結婚している女性のもとに生まれた子どもは、欧州の恵まれた女性が産んだ子どもと同じくらい生存率が高い。しかし一方、非白人で、未婚かつ経済的に貧しい女性の子どもは、幼くして死亡する比率が高い。
30年前ないし40年前のアメリカは、世界で最も繁栄していた国だった。最強の軍事力を誇り、人類が知り得る最も進んだ技術力を持っていた。今日において
も、豊かさ、強さ、創造性では世界一の地位を保っている。ところが、保健や福利、繁栄を人々が分かち合う度合いといった分野では、アメリカの地位はすっか
り後退してしまった。
どうして、そうなってしまったのか? どうしたら抜け出せるか?
その問題は、アメリカ大統領選に向けて展開される政治論争の中心にすえられるべき課題である。
アメリカのケースと他の国々の場合をどう比較するかという点に注目することで、問題の所在に光を当てられる。ここ40年かそれ以上の間に、多くの先進諸国
では収益を労働者に分配するパワーがそがれてきた。とはいえ、ミドルクラス(中産階層)の不振や集団保健の急速な状況悪化をグローバル化や技術革新のせい
にするのは安易に過ぎよう。先進国の多くで仕事が失われたり、賃金の伸びが滞ったりしてきた。
では、アメリカのケースは何が違ったのかといえば、それは対応の仕方にあった。アメリカの場合は、社会の中間から下半分の人たちに対する公的支援があまりにも貧弱だった。
公共政策シンクタンク「AEI(アメリカ・エンタープライズ・インスティチュート)」のチャールズ・マレーのような保守派論客の言説に従えば、アメリカは1930年代の「ニューディール(New
Deal)」政策と60年代の「偉大な社会(Great
Society)」政策の時代を通じて大きな福祉国家を目指したことがアメリカ人の勤勉さを弱め、道義心を衰えさせたということになる。
アメリカが20世紀に築き上げたミドルクラスはグローバル化の進展で打撃を受けた。セーフティーネット(社会的な安全網)は、ボロ布のように擦り切れてしまった。
それは連帯の失敗である。そもそもアメリカの制度は、集団的な解決策への反感を背景につくられている。そうした社会と、賃金をほどほどの水準にとどめ置いてでも全員の雇用を守るという経済的な要請は両立し得ないのだ。
とすれば、この信条に見合った解決策はあるのか?
この場合、リベラル派にも保守派にも共通する標準的な処方箋(せん)は、まず教育の問題を提示するのが典型的だ。教育を通じて、ハイテクのニーズに即した技能を身に付けること、高校卒業レベルでは難しいほど急速に変化する労働市場の求めにこたえていくこと。
誰もが大学卒の資格を取得できたとしても、社会の頂点を目指す富裕層の勢いを抑え込むことは難しいだろう。しかしそれでも、社会の下半分で苦闘している人たちの収入や福利を向上させる強力な後押しにはなるだろう。
だが、この処方箋は、現代のアメリカに埋め込まれた社会的な現実からすれば、十分ではない。今日のアメリカ社会においては、教育は格差を縮めるどころか、
むしろ格差を広げる方向に作用している。スタンフォード大学のシャーン・リアドンによると、富裕層の子弟と貧困家庭の子どもの学業成績のギャップは、過去
50年間、確実に広がってきた。
左派の側からは、寛大な社会保障制度の構築を求める声が出ている。もっとも、この点ではヨーロッパの社会民主主
義国家の多くが予算上の制約に縛られているのだが。マサチューセッツ選出の上院議員エリザベス・ウォーレン(民主党)は「ソーシャル・セキュリティー
(SS=公的年金制度)」を拡充し、富裕層にも収入に応じた税を課し、給与税のギャップを埋めるよう訴えている。その政策は望ましいかもしれない。
アメリカが抱える最大の問題は人口の高齢化などではなく、政府に対する先天的な不信感にあるが、その状況は当面、変わらないだろう。上下両院の共和党は、
大統領選のキャンペーン開始をにらんで、オバマ政権が導入した国民皆保険制度「オバマケア(Obamacare)」の骨抜きを図ろうとしている。そうなれ
ば無保険の国民が増える。共和党はまた、中位および下位の収入層向け基金の削減に向けても動いている。
悪いことだけでなく、希望もある。アメリ
カが向き合わなくてはならない挑戦は単に公平さの問題ではない。膨らんだ投獄率、平均寿命の低さ、家庭崩壊、大学卒業率の低迷といった問題が国の未来を脅
かしている。だが逆境にこそ希望の光を見いだすべき理由がある。アメリカの傷んだ政治システムも、究極的には機能不全の未来の到来を阻止するよう仕向けら
れるだろう。
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