上の2枚のポスターは,2002年の6月に院内に掲示してあったポスターである.まず左は,6月の医療事故防止月間に,厚生労働省が参加の部署に掲示するように配ったものだ.一見しただけで,どこぞの幼稚園に丸投げしたとしか考えられないような惨憺たる出来と知れる.
その1
まず,この不気味な生き物が何なのか見当がつかない.なぜ不気味かというと,頭頂部に突起物がある.それを布で隠している.角ではないだろう.角なら誇示するはずだ.布で隠しているとなると,人には見せたくないもののはずだ.人には見せたくない突起だとすると陰茎であろう.頭頂部に陰茎を生やした生き物が医療事故防止と関係あるのだろうか?その不気味な生き物が何やら叫んでいる.目で確認,指差し確認,声だし確認とある.
バカ丸出しである.そもそも確認の回数を増やすことが事故防止になると思ったら大間違いである.横浜市立大学の患者取り違えは,総計8つの確認過程をすべてすり抜けた結果起こった. 確認回数の増減と事故の確率の関係を科学的に検討した論文を私は見たことがない.医療事故では見当たらないが,労働災害ではあるのかもしれない.ご存知の方は是非とも教えてもらいたい規定としての確認の回数が増やせば,確認者は互いに依存するから,個々のチェックが甘くなり,かえって事故の確率が高くなるのではないだろうかと個人的には考えている.
そもそも残業するな,残業手当は出さないと厚生労働省は各部署に指導している.なのに確認の回数を増やせるわけがなかろう.この点もバカ丸出しである. このポスターの勧進元は,厚生労働省健康局国立病院部とある.かくして税金は無駄遣いされているという,動かぬ証拠を自ら示していることになる.我々田舎の国立病院が廊下の電気を消して節約した分が,このような馬鹿げたポスターとして消えていくのである.
その2 右は国家公務員安全週間のポスターであるが,同様に馬鹿げている.”一人よりみんなで確認事故防止”とある.個人で責任をとらず,集団無責任体制を堅持する役所としては,至極当然のスローガンなのかもしれないが,一方で他人の部署には口を出さない縦割り絶対の組織に,みんなで確認するのが無理というものだ.そもそも,人減らし一辺倒の上に,職場に嫌気がさしてどんどん辞めていくのだから,”みんな”というほど,人数はいないのだよ.つまり,このようなきれいな円陣など組めるべくもなく,櫛の歯が抜けるように散り散りばらばらとなって奈落の底に落ちていくという様である.