成果主義なんてのは、先々代の総理大臣におつき合いしなくちゃならなかった時代の遺産に過ぎない。
幸い(?)厚生労働省は国の役所だから成果主義は導入されない。純粋な民間会社では、上記の日経ビジネスオンラインの記事にあるようにすでに成果主義から脱却しようとしている。かくて、いまだに労働裁量制(フレックスタイム・コアタイム)なしでタイムカードだけ導入するような独立行政法人だけに、今や化石となった人事評価・成果主義が遺残する。
と、思ったら、世界最高水準の頭脳が集まった米国内科学会でも,成果主義が幅を利かせているらしい.
米国内科学会は米国のヘルスケアシステムと成果主義(能力給制度)に関する論説を発表
2007年11月4日のAnnals of Internal Medicine誌オンライン版で米国内科学会は,米国と12の先進国のヘルスケアを分析し,質の高いヘルスケアシステムを獲得するために応用可能な教訓を特定した,エビデンスに基づいた論説を掲載している.
コメント:ここでいう,成果主義とはpay for performanceのこと.pay for performanceとは,保険のカバーの考え方で,出来高払いや包括払いの対立概念.エビデンスで裏付けされている医療行為(例えば肺炎球菌ワクチンのような予防医療でも)をカバーしようという考え方.一見コストパフォーマンスの点から出来高払いや包括払いよりはよさそうだが,現場はEBMだけで動いているわけではないから,簡単には導入できないことや,出来高払い,あるいは包括払いよりもハッピーになる人が増えるかどうかは全くわからない.
今ごろ成果主義のような時代錯誤が横行しているようじゃ,世界最高水準の頭脳もたかが知れている.あるいは世界最高水準の無駄使いだ.あなたが,この馬鹿げた時代錯誤に巻き込まれないように祈っている.
そもそも,成果主義とは,Win/Winの黄金律(*)に反する,世の中はゼロサムゲームで支配されているという妄想に基づいた仕組みである.こんな妄想をいつまでも有り難がるほど,我々は愚かではない.
*相互依存の現実においては(ということは,稀な独裁主義国家以外の地球上の全ての組織で),Win/Win以外に現実的な方法はない.(第四の習慣 Win/Winを考える スティーブン・R・コビー著.7つの習慣.キングベアー出版 より)
「私の知るかぎりでも、いくつのも企業が成果主義を導入した後、かなり早い時点で失敗したと感じている。華々しく成果主義を導入した先進企業の旧知の人事担当者から、直接その旨漏らされたこともある。なぜなら、成果主義導入後、評価が始まってみると、皆一種独特な違和感に襲われるからなのだ。客観的な手続通りに評価をしてみると一番成果を上げたことになる人間が、実は社内評価のあまり高くない人間だったりするのである。あんなヤツを取り立てるために成果主義を導入したのかと怒る人まで出てくる始末である。」(虚妄の成果主義 日本型年功制復活のススメ 高橋 伸夫 日経BP社)