岡嶋道夫先生

岡嶋道夫先生は,東京医科歯科大学医学部法医学名誉教授である.もちろん碩学である.私は法医学が好きだったこともあって,先生の講義は全て出席した.先生は1924年生まれであるから,今年2000年で定年退官後10年たったことになる.このような状況からあなたは岡嶋先生のどんな姿を想像するだろうか.

”自分が系統だった卒後研修を受けて来なかった、そのような研修プログラムがなかった、このような惨めな気持を後輩に経験させたくないという気持が、現在の仕事の根底にあります。そして調べていくうちに、私の場合はドイツですが、外国の制度が日本と違っていることに気がつきました。”

そう,岡嶋先生の場合,定年退官は新しい学問の出発点だった.医学教育は英語圏(それも合衆国ばかり)の情報しか日本に伝わってこない.そこに自分の役割を見つけた.1995年に翻訳資料集を出版なさったが,情報のより広い普及と情報頒布の経済性,更新の便宜に注目し,1996年から情報収集にインターネットを駆使しはじめ,98年からは翻訳資料を公開なさっている.

この仕事は先生のご専門の法医学とは何の関係もない.当然である.岡嶋先生の頭の中にあるのは,自分がどうやって学問に,そして後輩の教育に貢献し,自分の学んだことを社会に還元できるのかということだけである.専門という邪魔な垣根は存在しないのである.

功成り名成し遂げた76才の碩学が,30代の情熱を持って,昔話と全く無縁でベンチャー学問を立派に運営なさっている姿は美しい.→岡嶋先生のホームページへ

メディカル二条河原へ戻る