もやもやの美味しさ

(プロペンシティスコアを使った論文についてやりとりをしたメールから)

と いうのは,もやもやしている時は,思考停止していないからです.もやもやして,あーでもないこーでもないと思った過程を経ないと,「これは」というものは 掴めません.一目惚れは思考停止の結果に過ぎません.男女の出会いはもちろんのこと,臨床でも,基礎研究でも,大切なことほど後になって解るものです.

私 に生物統計を最初に教えてくれた佐久間 昭先生に,マウスのデータを持って最初に相談に行った時のことです,いきなり,「君はどうしたいんだ?」と訊かれ ました.私がきょとんとしていると「有意差を出したいのか?出したくないのか?」,なおも私がぽかーんとしていると,「感度の高い方法を使えば有意差が出 せる,感度の低い方法を使えば有意差が出ない.統計は所詮道具なんだから,目的によって使い分けるんだ」

プロペンシティスコアも,道具の一つに過ぎません.道具が適切に使われているかどうかは目的を見ればわかります.学問のため,患者の利益のために使われているのか,それとも薬の売り上げや研究費や肩書き,職位獲得のために使われているのかを見ればわかります.

頑健なエビデンスを提供するという宣伝文句がついてまわるメタアナリシスだって,所詮はpubilication biasの集大成に過ぎないのに,それを違った薬でやっちまうような見え透いたイカサマで売り上げを伸ばすことができるのですから.

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