他人がベッドサイドで排便している大部屋に入院させられるのが日本の医療費抑制政策の象徴だと,しばしば非難される.でも,それで何が悪いのだろうか.私は大部屋でも構わない.他人が隣のベッドサイドで排便していても構わない.一時期のことだ.それよりも早く治してもらって,早く退院させてもらう方がずっと大事だ.
個室でゆっくりするなら,自分の家でそうしたい.どんなに金を払っても,病院は自分の家にはかなわない.個室なら,状態が急変してもなかなか気づいてもらえないが,大部屋ならそんなことはない.だから大部屋の方が医療事故の確率も低くなる.それに,当院では充実したサービスを提供していますと言われて,無理やり個室に入れられて,余計な金をふんだくられてたまるもんか.
蚤虱馬の尿(ばり)する枕もと (注)
芭蕉は旅の空でも,馬が小便する傍で寝た.芭蕉は馬が小便する音が聞こえる環境を風雅と捉える余裕があった.病を得て憂き世を離れる時は,この風雅の道を歩む絶好の機会である.私のような凡夫は,そういう機会を大切にしたい.大部屋のどこが悪い.
やれ個室だのインターネット使い放題だの,ホテル並みの食事サービスだの,そんな子供だましのところばかりに金をかければ,当然手を抜かなけりゃならない部分が出てくる.
剖検率はどうなんだ.常勤の病理医は確保できているのか.医者や看護師の労働環境は確保されているか.あたしみたいな天邪鬼はそういうところを見るがね.お素人さんはそんなところには気づかないだろうから,病理や剖検率なんてどうでもいいってのは,羊頭狗肉もいいとこだ.
こんなことを言っているから,健全経営方針に反対する不穏分子として,どこの病院でも雇ってもらえず,役人をやるしかなくなるんだが.
注:通常は,尿は”しと”と読ませる.尿前の関も”しとまえ”と読む.しかし,地名はいいとしても,句に関しては,”ばり”の方が本来の読み方ではないかとの説に従い,”ばり”とした.尿を”いばり”と読むのは,方言ではなく,ちょっと前までは標準語だった.
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(2005/2/12:日本経済新聞の記事より)
千/の亀田総合病院、全室個室のIT型新病棟を部分開業
千葉県南部の中核医療機関、亀田総合病院を運営する医療法人「鉄蕉会」(亀田俊忠理事長)は12日、新病棟「K―Tower」(鴨川市、亀田信介院長)を部分開業する。病室の情報端末でカルテ情報の閲覧やビデオ鑑賞ができるなど、患者の医療参加や入院生活の快適さに配慮した運営体制が特徴。新たな病院モデルとして、医療関係者らの注目を集めそうだ。
新病棟の延べ床面積は約3万3000平方メートルで、総事業費は約100億円。1階の総合窓口、3階の出産などの周産期センター、4階の女性専用フロアを先行開業させる。5―12階の病室や、一般客も利用できる13階のレストランなどは4月に全面開業する。
新病棟は「リゾートホテルのような心地よさ」(亀田院長)に配慮したのが特徴。太平洋が望める計264室は全室個室で、トイレやシャワーも完備。各階には見舞いに来た家族らと患者が食事できるダイニング室も備える。全面開業後は24時間の食事提供サービスも利用可能。快適な入院環境を整えることで「積極的に治療を受けられ、治療効果の向上も期待できる」(同)としている。
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