「脳コワさん」支援ガイド
「脳コワさん」支援ガイド(鈴木大介著 医学書院)
『会話がうまくできない、雑踏が歩けない、突然キレる、すぐに疲れる……。病名や受傷経緯は違っていても、結局みんな「脳の情報処理」で苦しんでいる。高次
脳機能障害の人も、発達障害の人も、認知症の人も、うつの人も、脳が「楽」になれば見えている世界が変わる。それが最高の治療であり、ケアであり、リハビ
リだ。疾患ごとの〈違い〉に着目する医学+〈同じ〉困りごとに着目する当事者学=「楽になる」を支える超実践的ガイド!』
自称「定型発達4割・ADHD2割・狭義のアスペルガー症候群2割・ASD1割・分類不明1割」の私が読んでも、共感できることが満載で、夢中になって4時間ほどで読了しました。その後、くも膜下出血の術後だけれど、外来レベルでの神経学的診察では何の異常も認めない知人に渡した所、翌日に「自分の高次機能障害をこれほど明晰に解説してくれるなんて」と感涙にむせぶ返事をくれました。
本書を読んで従来の「失語・失行・失認」なんて、私を含めて医療者の趣味に過ぎなかったことがよくわかりました。そんなこともあって、医療者であろうとかなろうと、定型発達者が読んでも全く共感が湧かないと思います。
ですから、まずは当事者=「脳コワさん」、器質的脳損傷を負っている方はもちろんですが、私の知人のように脳画像で何の異常がなくても、病気・事故の後に「自分は壊れてしまった」と思っている方、そしてその家族の方に広く読んで頂く。
またリハビリテーション関係者の中では、まず言語聴覚士と作業療法士は必読です。といっても義務感で読む必要は全くありません。「逆に自分の仕事はここにある!!」と気づきを与えてくれるはずです。そこから、医師免許を持っていても「不器用な自分」に長年苦しんできた方々は、この本を読むと、高次機能障害を負った人々に対する良質な支援者になれるはずです。その後、高次機能障害のリハビリテーションの動きが生まれ→認知症への介護者の行動変容が起こってくる。そんな世界がやってくるのに10年もかからないと思います。
→二条河原へ戻る