長寿日本一の秘密

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人口減少社会への対応 村上智彦医師に聞く
中日新聞   2013年7月18日
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2013071802000003.html

 国の借金が一千兆円に達しても、財政を圧迫する社会保障関係費(主に医療、介護、年金)の見直し議論は遅々として進まない。参 院選投開票を前に、財政破綻した北海道夕張市の医療再生に尽力した、NPO法人「ささえる医療研究所」代表で、医師の村 上智彦さん(52)に人口減少社会への“処方箋”を聞いた。
 −「夕張は日本の縮図」と主張されていますが。
 実は、夕張は都市が衰退したモデルで、人口減少社会となった日本の先例になると思います。昔、炭鉱で栄えて人口が十数 万人にもなり、一時は札幌よりもまちの規模は大きかった。公共インフラ、生活サービス、福祉も手厚かった。お金持ちも多 く、昭和三十年ごろのピアノの売り上げは日本一。それが徐々に負担より受益の多い生活が当たり前になり、財政 が悪化したのに、生き方を変えられなかった結果が破綻です。公共事業の失敗は、原因の一部にすぎません。
 国でも、税収四十兆円に対して九十兆円の予算を組み、つけを将来に先送りしている。高齢社会の選挙は、負担より受益の 多い人が国の代表を決めるからそうなるんです。だから、金融資産の大部分が六十五歳以上の高齢者に集中する。そう言うと 「年寄りは早く死ねと言うのか」と怒られますが、自分の子どもや孫の世代のことを考えなくてもいいんでしょうか?
これに早く気付き、医療や福祉などのサービスを大切に使ってほしいです。
 −夕張は医療崩壊でどうなりましたか。
 死亡率は上がらず、むしろ下がりました。これが事実。
一部の人が自覚し、生 活習慣に気を付けて病気の予防に努めたからです。夕張を引き合いに出さなくても、長 野県が良い例。同県民が長寿日本一で健康寿命も長いのは、医 療が充実しているからじゃない。意識が高いからです。身近で医療が受けられないのは 確かに困りますが、それが不幸かというと、必ずしもそうではないと思います。
 病院は本来、高齢者の不安解消のために使うものではないし、
実際に病院で死の不安 は解消できません。むしろ、地域の人々のつながりの充実が必要なのであって、そ れは他人から与えられるものではなく、お金で簡単に買えるものでもない。夕張や長野 のように、自分たちで汗をかいて努力してつくるものです。
 −安易に国や政治に求めてはいけない?
 政治に「施し」を求めてはいけない。はい上がろうとする人への援助はいいが、単なる施しは堕落につながり、努 力する芽や才能をつぶしてしまう。特に人口減少社会だから、高度成長時代のようにやろうとしても無理。何でも引き受ける 政治家を選ぶ傾向があるが、それでは結果的にショックや悲劇を招く。
 今、「変わらないリスク」が非常に大きくなっているのでは。これからは「変わるリスク」をとり、自立を応援してくれる 政治を求める地域が、生き残るのだと思います。既得権を守るのではなく、現場で頑張っている人が活動しやすい社会の仕組 みをつくるのが、政治の役割のはずです。
 (林勝)
 <村上智彦(むらかみ・ともひこ)>
1961年、北海道生まれ。北海道薬科大、金沢医科大医学部卒業。予防医学、地域包括ケアが専門。2006年から、財政 破綻で医療崩壊した夕張市で、地域医療の再生に取り組む。09年、地域医療に貢献した人に贈られる若月賞を受賞。「医 療にたかるな」(新潮新書)を今春出版した。
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