神経内科医もたまにはかっこいい

メスもない,手術着もマスクもない,無影灯もない.そのかわりに”ゴム製の金槌”,安全ピン,毛筆,ペンライトなんて,なんやらいかがわしい小説に出てくる小道具を,大事そうにお盆に載せて登場してくる珍妙な医者も,ごくたまにかっこいいことがある.シカゴのメディカルセンターで神経内科の教授をやっている非常に優秀な臨床医,ハロルド・L・クローアンズの本はそのかっこいいところだけを集めたものである.

神経内科医でない人は,この本を読むと,是非とも神経内科医になってみたいと思うのである.この本を読んだうぶな医学生は,ちょうどブルース・リーの映画を見て空手道場に入門するひ弱な少年のように.何も知らないままに神経内科に入局するのである.そして神経内科医は,ひょっとしたら自分もこんなにかっこいいのかも知れないと,小林 旭の映画を見た後のちんぴらやくざみたいに,しばし現実を忘れて,あしたからまた診療に励もうと思うのである.
価格はいずれも2500-3000円.

白揚社.ニュートンはなぜ人間嫌いになったのか.加我牧子 他訳.
白揚社.なぜ記憶が消えるのか.鴻巣友季子訳.
白揚社.生と死とその間.加我牧子 他訳.

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