MRAの有用性に疑問

MRIによる血管造影(MRA)を得意そうに見せる医者がよくいるが、脳卒中でMRAの感度・特異度はどこまで検証されているのだろうか?

肺塞栓症では、技術的に最適な画像を得ることが難しく(不適切な画像の率が施設により11-52%と高率!)、最適な画像を得た場合でも、感度は78%だったという。

Ann Intern Med. 2010 Apr 6;152(7):434-43,
Gadolinium-enhanced magnetic resonance angiography for pulmonary embolism: a multicenter prospective study (PIOPED III).

また、下記は肺がんに対するCTスキャンの偽陽性の問題を指摘している。検査の有用性の議論ではしばしば感度が問題にされるが、特異度も負けず劣らず大きな問題だ。

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肺癌スクリーニング検査における偽陽性の累積陽性率:無作為化試験
Jennifer M. Croswell, Stuart G. Baker, Pamela M. Marcus, Jonathan D. Clapp, and Barnett S. Kramer. Cumulative Incidence of False-Positive Test Results in Lung Cancer Screening: A Randomized Trial
進行中の米国肺スクリーニング試験は肺癌スクリーニング検査の有効性を明らかにすることを目的としている.この試験における予備研究から,2回のCT検査後,偽陽性となる累積陽性率が33%であり,2回の胸部エックス線写真後では15%であることが判明した.偽陽性の結果が出た患者の多くは,スクリーニング検査で指摘された病変が癌ではないことを確認するために侵襲的な検査が必要とされる.医師と患者は肺癌スクリーニング検査としてCTまたは胸部エックス線写真を行う場合には偽陽性の確率が高いことを心に留めておかなければならない.
(翻訳:浦野哲哉)
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CTスキャン過信は禁物 肺の初期がん発見の有用性に疑問
産経Biz 2010.5.5

米電機大手ゼネラル・エレクトリックのCTスキャナー。CTスキャンによる肺がん検査は誤診率がX線検査に比べて2倍以上であることが分かった(ブルームバーグ)【拡大】
4月19日付の医学誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」に掲載された報告によると、肺がん検査におけるCTスキャン(またはCATスキャン。コンピューター断層撮影)診断の誤診率は通常のX線検査に比べて2倍以上の33%だった。調査を行ったのは「米国立衛生研究所」の研究員、ジェニファー・クロスウェル氏が率いる研究チーム。
患者に低線量の放射線を照射するCTスキャンは早期の肺がん発見に効果があるとして、医師、病院、患者グループに支持されてきた。米国では2009年に15万9390人が肺がんで亡くなっており、その数は他のがんによる死亡者数を上回っている。肺がんは初期の段階で発見されないと治療が困難な病気だ。
そのため「誤って陽性と診断されることで、がんではないのに外科手術を受けてしまう可能性がある」とクロスウェル氏は語っている。
喫煙経験のある3190人を対象にした今回の調査の結果、1回だけCTスキャンを受けた患者の偽陽性診断リスクは21%。対してX線検査の場合は9%。2回CTスキャンを受けた場合のリスクは33%。一方、X線は15%だった。
偽陽性と診断された患者が継続処置を受けた割合はCTスキャンが7%、X線検査が4%だった。一般的な継続処置は気管支鏡検査で、内視鏡をのどから挿入して肺の組織サンプルを採取する。
米国がん協会と米国肺協会は、肺がんを発症するリスクが高く自覚症状がない患者に対してCTスキャンやX線検査で診断を行うことを勧めていない。
08年、サンフランシスコの患者会「ボニー・J・アダリオ・肺がん財団」はアトランタ、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコの各地で「CATスキャンを要望する」キャンペーンに資金を提供。肺がんに対する認識が高まるよう、バス、トラム、地下鉄に広告を出した。例えばこんなメッセージだ。「CTスキャンは肺のマンモグラムのようなもの」
過去にいくつかの調査報告書が「CTスキャンは肺がん発見に有用」だとほのめかしているが、初期のCTスキャン診断によって肺がんの死亡者が減ったという厳密な臨床試験結果は一つも報告されていない。米国立がん研究所は現在、5万3000人の喫煙経験者を対象にした大規模臨床試験を実施中。CTスキャンとX線検査のどちらがスクリーニング検査として効果があるのか検証中で、結論が出るのは2、3年後の予定となっている。

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