下記は週刊ダイヤモンド 2005/6/18号の記事である.PMDAに関する記事としては,近年にない上出来である.ポイントは,元職員のコメント以下の部分である.この記事が製薬協の戦略の一環とすれば,なかなか筋がよろしい.もっとも,この程度では,”主要ポスト”とやらに座っている人々はびくともしない.彼らは,いいガス抜きができたぐらいにしか思っていないだろう.この線で攻めるのはいいとして,もっと徹底的にやらないと,奥の院の掃除は夢のまた夢だ.
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人材不足で審査が進まない新薬審査機関の深刻な実態
「総合機構による新薬の承認審査が少しも速くならない。期待はずれだ」(大手製薬会社社長)その声は、製薬業界を代表する声だろう。
総合機構とはその正式名称を、医薬品医療機器総合機構という。企業が製造・販売を申請した新薬や医療機器を、安全性や有効性の面で判断する審査機関だ。二〇〇四年四月、従来、三つに分散していた審査関連業務機関を統合し、設立された。統合の主たる目的は、審査業務の効率化、つまり審査の迅速化、審査期間の短縮である。ところが、その肝心の審査が滞つたままなのだ。たとえば、二〇〇四年度末時点で、総合機構の設立前から申請されていた新薬一四〇品目のうち、いまだ八七品目が審査中というお粗末な状況だ。
なぜ、審査が進まないのか。その理由は明らかだ。そもそも必要な人員が集まっていないのである。総合機構のスタート時の予定人員数は三一四人。これに対し、実際に集まった人員は二五六人にすぎない。総合機構では、ホームページなどで職員募集に努めるが、現在でも、「退職者もいて、予定人員数に対し、一割以上未達」(閑係者)という惨状である。深刻なのは、最も重要な臨床試験データを評価する医師、統計や薬理の専門家が不足している点だ。
最も,こうした専門家はそもそも絶対数が少なく,大手製薬会社をはじめ,民間企業でも引く手あまたの人材である。採用難の理由を同機構関係者に闘うと、真っ先に挙がるのは、民間企業や病院に比べて低い賃金。加えて、同機構と利害関係にある製薬会社など民間企業出身者への配属先の制限ルールも障害になっているという.だが、元職員はそれらを、「本質的な問題ではない」と言い切る。
事実、同じ審査機関である米食品医薬品局(FDA)の審査官職は、そのステータスの高さから人手不足とはまったく無縁だ。
内部からは給与面よりもむしろ、「主要ポストは厚生労働省出身者が占める」,「組織が硬直的」といった声が聞こえてくる。なによりも職場を魅力的なものにする努力が不可欠だ。 本誌・山本猛嗣
週刊ダイヤモンド 2005/6/18号
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