マネジドケア日本版

以下,私の参加しているメーリングリストへ私が書き込んだものです.

医療改革案に関する先生のお話は,全く別の面から見ていた私の懸念と不幸にして合致します.先日の新聞記事を読んで非常に嫌な予感がしていたのですが,考え過ぎかなと思っていました.しかし,先生のお話で,考えすぎではなかったことがわかりました.

その新聞記事とは,レセプト審査業務を民間業者に開放するという,政府の総合規制改革会議の決定です(2001/7/12)この会議の議長が宮内義彦オリックス会長であり,議長代理が飯田 亮 セコム株式会社取締役最高顧問です.

レセプト審査業務を民間業者に解放すれば,保険者は徹底的に値切る(むちゃくちゃな査定をする)業者の方へ流れる,結果的に日本でもマネジドケアを始めるよってことでしょう.

改革とやらの根底にあるのが,医療費高騰は悪であり,その悪の根元は医者の乱診乱療であるという,大いなる誤解です.その誤解をてこに,合衆国で3000万人とも4000万人とも言われる無保険者(これが”痛み”というやつの正体です.それどころか痛みを感じない死人も出ます)を生み出しているマネジドケアを日本にも導入する気なのではと,私は恐れるのです.

>それよりも何よりも、びっくりしているのが、そのような大改革案が、医師会を無視して、厚生省も無視して、自民党の医系議員も無視して、小泉首相のブレーンだけが話し合って、大鉈を振るおうとしているのがすごく気になります。

それが,今度の改革とやらの大きな特徴でしょう.”医師会”や”官僚”や”族議員”といった”守旧派”の悪人共の意見など聞かない.もし改革を邪魔するのであれば,”痛みを覚悟した”国民が許さないぞという脅しなのです.

上記のレセプト審査業務を民間業者に開放するのは,この秋からと決まったそうです.別の筋からも確認しましたが,やはり厚労省にとっても寝耳に水だったようです.このような重大案件が,医療現場のことなど何も知らない15人ほどの人達の会議であっさり決まってしまうのですから,今後の改革とやらがどんなに恐ろしいことになるやら.

メディアは,”医療改革”に反対する”守旧派”を徹底的に叩いてくるでしょう.それにもひるまず,日本の医療の素晴らしい点を知る人々は,国民の幸せを守るために共同戦線を張れるでしょうか?

注:合衆国の医療保険制度の惨状については,李 啓充著.アメリカ医療の光と影.医学書院をお読みになることを是非ともお薦めする.

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